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第二百三十九話 無駄だったな

コポコポと可愛らしい音が耳を通り、目の前に私好みの紅茶が置かれる。部屋にいるのはクレイグとエスター、それからリンク。あと、子供達の代表としてディウネにも来てもらった。

私の屋敷で過ごす間、この四人の顔さえ覚えておけばまぁ不自由はないだろう。そもそも不自由させた時点で父様から「ちゃんとしなさい」なんていう注意がされるだろうし。みんなには、私の面目を守ってもらう意味でも頑張ってもらわないといけない。


「…って、ディウネ。なんでそんな緊張してるの」

「え!?あ、す、すいません!私なんかが代表だなんておこがましいと思っちゃって…!」


すでに涙目…イザベラに睨まれたら本気で泣きそうだな。

さすがに良いとこのお嬢様なら年下相手にそんな大人気ない真似するとは思わないけど…。


「そういえばディウネって何歳なの?」

「じ、十四です…たぶん…」

「十四?同い年!?」

「は、はい…」


まじかー、身長もそこまでないから年下だと思ってた………まぁ、私の知ってる同年代が同い年とは思えないほどの成長を遂げてるフィーちゃんだからな…。同年代への認識がズレてるっていうか、そもそも私精神的には大人だし。


「…そっか。その年であんな大勢の子供達守ってたんだね」

「あ、それは、違くて…」

「?」


てっきり一番年上っぽいディウネが子供達のリーダーなんだと思ってたけど…。まぁ確かに、初めて会った時もリーダーって感じはしなかったか。

だけどまだ自分で判断ができない子供達が一つの場所に集まって大人しくしていたとは思えない。力で抑えつけるとは言っても、この世界には魔術があるのだ。大人でも子供に敵わないという事実がまかり通ってしまう。何より無自覚だったとはいえ魔法が使える子供達、誰かまとめる人がいたはずだけど…。


「もう一人、同い年の子が…」


コンコンッ──


ディウネの言葉を遮るように扉がノックされる。次に聞こえてきたのはライアンの許可を求める声で、私はクレイグに扉を開けるよう指示を出した。


「ディウネ、その話は今度聞かせてね」

「あ、はい!」


慌てて頷く姿がなんと可愛い事か。魔法使いになるためにクレイグに扱かれてるって聞いたけど、虐めすぎないよう言っておかないとだな。別に私のために戦ってほしいわけじゃないんだから。


「第二皇女殿下、イージスナイトカレッジのインターンシップ生をお連れしました」

「私の前で堅苦しくしなくて良いよ、ライアン。ここには注意するような人もいないし」

「そう、ですか?では、私の学友をお連れしました!第二皇女殿下!」


イケメン聖騎士のような顔がコロッと変わる。さながら子犬の如しだな。そんなに友達が好きか、そうかそうか。微笑ましいばかりだね。


「生徒を迎え入れている以上こちらから挨拶するのが礼儀なのですが、まだ挨拶に不慣れな子がいるんです。できれば生徒の皆様からご挨拶願えますか?」


にこり、できる限り愛想のいい笑みで言う。まぁこの場で一番上の地位にいるのが私だから、相手に先に挨拶をしてもらうのも間違ってはいないんだけど。でも、ライアンが大切にしている友達をわざわざ不快にさせるような事はしたくない。

返答を待っていれば、最初に前に出たのはイザベラだった。


「第二皇女殿下にご挨拶申し上げます。メレディス王国に属しますマルティネス公爵の娘、イザベラ・マルティネスでございます」


メレディス…確か海の都だったっけ。ゲームでも出てきた名前だ。


「お初にお目にかかります。クラルの末の姫、ソフィア・クラル・ドナーと申します。以後お見知りおきを」


クラルは小国で…正直、印象ない。ソフィアの印象も、騎士学校というよりは貴族の子息令嬢が通う貴族学校の方にいそうな感じだ。


「あ、マシューと申します!平民出身なため何かと不慣れな事があるかと思いますが、よろしくお願いします!」


あ、可愛い…。確かデーヴィドのおもちゃになってた…もとい、ライアンと一緒に私を騙そうとしてくれた偽学園長だったか。見るからに素直そうな子だな。そしてそのふっくらボディが素晴らしい。脂ぎっていない可愛らしいふくよかボディを見るに魔術系を専門にしてる騎士なのかな?

挨拶を終えて睨み続けてくる女子勢に比べるとマシューの存在がどれほど癒しになるか…。今度そのふくよかボディに貢献するためにお菓子をあげよう。ちょっと緊張している姿も小動物並みの可愛さがある。


「……これが特別かよ」


と、マシューに癒されているところで邪魔が入った。私の知ってる人間にこんな刺々しい声を発する人は、今この場にはいない。つまり、まだ自己紹介を終えてない人がこの声の主というわけだ。


「イザベラと似たようなもんじゃねぇか。よほどの実力者でもないのに、何が特別だよ」


ライアンが目を見開いた後に慌てて「何言ってるんだ、ロック!」と声の主を咎める。だが、反抗期の息子さながらの目つきの悪さで睨みつけられては応戦しないわけにはいかないだろう。こっちだって、結構気が立ってるんだ。


「………口の利き方がなってない方がいらっしゃいますね」


フラグが立たないよう黙ってサラちゃんの頭を撫でてたけど、無駄だったな。

お読みくださりありがとうございました。

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