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第百六十五話 バッキバキに折ってやろう!!

とりあえずフード深く被りすぎの勘違い男なんてどうでも良いから、サーレの事を落ち着かせなきゃいけないな…。


「…お客様、もしよろしければお泊まりになって行きますか?もう夕暮れですし、おもてなしをさせていただきますよ」

「!それはありがたい…!」


名前を明かしてもいないのに招かれた事で勘違いを加速させてしまっている男は放っておいて、さっさとクレイグにサーレを別室へ移す様に指示を出す。サーレは怯えた様な目でこちらを見てきたけど、ここで話をするわけにもいかないから沈黙を貫かせてもらった。


───









とりあえず名乗ってはいないので、訪ねてきた男の事はフード男と呼ぼうと決めた。あ、もちろん心の中でね。そもそも名前を呼ぶ事すら今は億劫だから。


「サーレ、入っても良い?」


努めて優しい声で問い掛ければ、おずおずと開かれる扉に苦笑いが溢れる。フード男をできるだけせっまい部屋に押し込んで、サーレの部屋にはできるだけ心を落ち着かせる事のできる香を焚かせておいたのは正解だったかな。扉から覗いた顔には涙の痕が出来ていたけど、どこか冷静さを取り戻している様にも見えた。


「…聞きたい事があるんです」

「うん。なんでも話すよ」


声から戸惑いが伝わってきて、今も混乱しているんだろうなとわかる。できるだけ刺激しない様に、部屋に招き入れてくれるらしいサーレの案内に従った。


「リンク君はどこにいるんですか…?」


椅子に座るまでもなくかけられた言葉に、「今は部屋にいるんじゃないかな」と答える。それだけでリンクがこの屋敷にいると理解したのだろう。サーレは俯いてしまった。


「な、んで…」

「…サーレ、なんて言われてここまで来たの?男爵とはいえ、貴族の令嬢が馬車もなく護衛すらいない状況でカタルシアまで来れるわけないよね?」


護衛という点においてはフード男がいるから事足りているかもしれないけど、伯爵家と懇意にしている貴族家の令嬢が一人の連れもなく、馬車に乗ってくるわけでもないのは不自然な事だ。

何も言わないサーレを見て、少し嫌な予想が生まれる。

なんて唆されたのかは知らないが、もしかして…。


「誰にも言わず着いてきたの…?」

「!」


どうやら当たりらしく、サーレの手が拳を作った。

………これは、ダメだろぉ…。

いや、リンクを家出させた私が言える立場じゃないけど、なんの問題も抱えていないサーレがいきなり消えたらそりゃもう大事だ。


「り、リンク君が、無理矢理連れて行かれたって、聞いて…」


ポロリ、サーレの口から溢れでた言葉を聞いて、私は目を見開いた。


「でも、おかしいとは思ったんです。リンク君が消えた日、私の部屋の窓に、確かにリンク君の字で「いってきます」って手紙があって!…だけど、連れて行ったのが姫殿下って聞いて、それで、わけわかんなくなって…」


サーレの話を整理すると、フード男から「リンクはカタルシアの姫に連れて行かれた」という話を聞いて仲良くしていた私に裏切られたかもしれない事実に気づいてしまい、思わずリンクからもらったペンダントを胸にフード男の手を取っていたという事らしい。


「ヒロインかよっ!!」

「!?」

「あ、ごめん、なんでもないからそんな驚かないで」


いや、だって本物のヒロインであるリリアが最近ちょっとイっちゃってる事が判明したばっかだよ?なのに何!このヒロイン要素満載の展開は!

物語にするなら、悪役に利用されながらも友を信じる心を忘れられず思い人を追いかけて、今は勇気を振り絞って信じきれない友に真偽を確かめてるところかな?


「もうサーレがヒロインで良いと思う…」

「ひ、姫殿下…?」

「首傾げる姿も可愛い!!」

「!?」


あ、しまった、本音が…。

最近疲れ溜まっているのか時々化けの皮が剥がれそうになる時がある。この件が終わったら休めると良いな、もうね、あれだ、一日中寝ていたい。


「まぁ、そんな事は置いといて。サーレ、あの人が言ってる事は嘘だからね」

「え!?」


驚く声とは裏腹に、サーレの表情が少し明るくなる。

一応フード男は昔から知っている人だし、フード男の方を信じてもおかしくはないのに可愛い事この上ないなぁ…!


「連れ去ったっていうのはあながち嘘じゃないけど、でもそれはリンクの意思を尊重した結果だよ。だから、サーレに手紙も書かせた」

「!…やっぱり、リンク君からだったんだ…」


文字でリンクからの手紙だと判断できるなんてさすが幼馴染って感じだな。

たぶんフード男がサーレを連れてきたのは、単純に仲良くしている私への餌として、あとはリンクを連れて帰るための道具にするためってところか。そんな事で可愛いサーレを利用しようなんて虫唾が走るね。あ、ダメだ、なんか全てが気に入らなくなってきた。

すでにサーレが纏う空気が一変していて、少しはサーレの気持ちを落ち着かせる事が出来た事に気づく。そのおかげで私も苛立ちを抑える事ができたけど、少し冷えた頭の中で一つ決意した。


フード男の騎士の精神バッキバキに折ってやろう!!

お読みくださりありがとうございました。

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