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第百四十三話 まだ問題事があるのは確定なのね

途中から視点なしです。

夜、クレイグを私の部屋へ通して話を聞けば、いくつかの問題を提示された。


一つは、リンクの事。


リンク自身に全く問題がなくても、その周りに問題があるらしいのだ。

まず、朝早くに父様から連絡が入ったようで、リディア伯爵がリンクを探すために強行突破しようとしているらしい。フィニーティスの王様の足止めが効いているのか突破されるのはもう少し先になると言うが、足止めにも限界があるだろう。

他国の騎士団長相手にどこまでできるかわからないけど、リンクには伸び伸びと魔道具士として頑張ってもらいたいからなぁ…。跡継ぎになるために残ったリアンはリディア夫人がサポートしてくれているらしいし、リディア伯爵を黙らせれば大体の事は上手くいくだろう。突破されたら私も頑張らねばいかんか…。


次の問題は…。


「こちらですね」


珍しく疲れた様子のクレイグに手渡された書類には、リリアの行動の一つ一つが記されている。リリアと姉様が遭遇してから、どうにもリリアを放っておくのが不安になった。夢の事もあるし、リリアの動向をクレイグに注意深くチェックしてもらうようにしたのだ。だけど、それ以前の問題として…。


「まだ帰らないの?」


リリアとルカリオがカタルシアへやって来てからもう一週間以上は過ぎている。ルカリオ自身は満足しているらしいのだが、どうやらリリアが帰りたくないと駄々を捏ねているらしかった。フィニーティスの時は少し特殊だったから滞在期間が長かったけど、普通他国に一週間以上滞在する事は珍しいはずなんだけど…。


「アルバの国王陛下は好きにすれば良いとおっしゃっているようでして、ルカリオ様も強く出る事ができていないようです」

「父様は?」

「ルカリオ様と皇太子殿下の友好が深まっているためか何も…」


父様の目的は兄様とルカリオを仲良くさせる事だから、何も言っていないのはおかしくはないか…。ただ、あのエミリーが文句を言っていないとは思えないけど。

リリアをカタルシアへ長居させるとその分姉様や兄様と遭遇する確率が高くなる。私的にはさっさと帰って欲しいんだけど、どうにかならないものかな。


「…少し、アルバで調べ物をしております。そのついでと言ってはなんですが、王太子殿下の方を刺激してみますか?」


その調べ物が何か、それを聞くと笑顔ではぐらかされそうなので黙って頷く。私のために動いてくれているという事だけはなんとなくわかるからね。

アルベルトが動いてくれれば、妹と言う立場のリリアも従わざるを得ないだろう。国王のアーロンだってアルベルトの動きにはアンテナを張っているだろうし、アルベルトの気持ちを汲んで少しでもリリアの待遇を良くするようになれば…なんて淡い期待を持ったりもする。まぁ、そんな事は何パーセントにも満たない確率だろうけど。


「リリアが帰るまでは、姉様と兄様に近づけさせないようにしないとね…。それで、他には?」


問題は二つだけでお腹いっぱいだったりするんだけど、クレイグの顔を伺ってみるに他にもありそうな予感がする。だが、私の予感に反して、クレイグは静かに笑って見せた。


「全て調べ終えましたらご報告させていただきます」


………まだ問題事があるのは確定なのね…。


───












「魔術師が紛れ込んでいる」


一瞬にして自分と父二人きりの空間に、殺伐とした空気が流れた。呼び出しは久々だったが、何かあったのだろうか。


「最近私の周りを嗅ぎ回っている輩がいてな。それも相当な腕の魔術師だ」

「すぐに王城にいる魔術師を集めますか?」

「そんな事をしても無駄だ。それに、動きがおかしい。私を調べているようで違う何かを探っているようにも見える。お前も注意しておきなさい、良いな?」


国王として民を背負っている父の勘は良く当たる。いつも商才と謳われるそれは、自分に向けられる感情すら察する事ができるものだ。

素直に頷き、用件が済んだと判断して部屋を出ようとすれば、「待て」と呼び止められた。


「アレが駄々を捏ねているらしくてな。サリンジャー家の跡取りはまだ帰ってこないそうだ」


それは、いつの間にか聞き慣れてしまった名称だった。自分の娘であるはずなのに名前すら呼ばない父の姿を見たくなくて、振り返りもせずに「はい」と答える。こんな場所に居させる事すら心苦しくてルカリオに妹を頼んだが、正解だったな、と一つ息を吐いた。

部屋を出ると一気に力が抜けそうになったがなんとか持ち堪え、まだ公務の資料に目を通し切れていなかったはずだ、と自分の部屋へ急ぐ。

バタン、小さな力で押したドアが閉まる音を聞き届け、資料が積まれている机の椅子に腰掛けた。


「帰って来たくないのかもしれないな…」


こんな息の詰まる場所、自分だって居たくはない。虐げられているリリアならば尚更だろう。守ってやる事すらできない自分が不甲斐なく、溜息が溢れそうになった時だった。


ヒラリ──


目の前に、一枚の紙切れが舞った。

お読みくださりありがとうございました。

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