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第百十六話 それしかできない現状が憎い

今日の自分に任せた昨日の自分を早くも恨む事になったのは、今この時。目の前の父様の言葉を聞いた瞬間だった。


「アルバの姫がアステアに会いたいと言っていてな。案内を頼めるか?」


なぜだ…。まぁ、確かに面識はあるから、知り合いに案内してもらいたいという思いを理解できないわけじゃないけど。


「断った場合はどうなりますか…」

「年の近いカリアーナかクロードだな」


その二人は絶対ダメ!!

姉様はまだ関わりがないから一千歩譲って良いとして、兄様はダメだ。ヒロインと攻略対象だよ?ダメに決まってんでしょ。しかも確認したところによればやっぱり一緒にくる公爵家の子息はルカリオだった。

攻略対象二人とヒロイン……うん、綺麗な三角関係だね。


「……やります…」


ぼそっと今までにないくらいの小声で答えれば、父様は首を傾げて、父様の隣にいるエミリーも首を傾げていたけど、私が落ち込んだ風に項垂れると「ザマァみろ」とでも言いたげな表情で笑っていた。顔面に水をかけてやりたくなった。


───













リリアとルカリオを迎える上で一番にしなければいけない事は、リンクを隠す事だった。父様と話した時に、フィニーティスの王様には事情を話し、あちらの判断でリディア伯爵に話が回るかもしれないという事は聞いた。まぁ、今のところ平和なので、まだリディア伯爵は何も知らないのか、動けずにいるのか…。どちらにしろ、他国の王族や貴族に知られて良いような話ではない。

一応リンクは修行中の従者という事にして、リリアとルカリオの前に出るのはクレイグ、エスターの二人だけにしようという事でまとまった。ヨルはアルバから連れて来たので、できるだけ角が立たないように出てこないようお願いした。


「アステア様、王女殿下の事はまだ…」

「わかってる。わかり次第って言ったのは私だからね」


未だにリリアの選んだ攻略対象が判明していないため、焦っているのは事実だ。何より今までずっと私の欲しい情報を教えてくれていたクレイグが「何もわかっていない」と言う事が、焦りを倍増させる原因にもなっている。

あまりしたくないけど、リリアに付きっきりになれば少しは情報が手に入るかな。それなら兄様に近づけないように仕向ける事もできるだろう。

それに、ルカリオの事も気になる。本当になんでカタルシアに来る事になったんだ?関係なんてないはずなのに…。

攻略対象の中でもメインはアルベルトで、アルベルトルートにはよくルカリオが登場していた。というかアルベルトのライバル的な立ち位置にいたのがルカリオだ。

簡単に説明すると、ライバル兼親友というやつで、アルベルトとリリアの心が離れた時にはアルベルトを叱咤するような場面もある。ちなみにアルベルトルートでもリリアに恋心を寄せるが、兄弟の絆に恋心まで含まれてしまった二人の間に入る事ができず、応援する事に徹している。


「ルカリオか…」


可能性的にリリアの相手はアルベルトじゃないかと思ってたんだけど、まぁ攻略対象なら誰だって可能性はある。引き出せるだけの情報は引き出したいけど、最優先事項は何事もなくアルバへ帰ってもらう事。流石に自分の国で面倒ごとは起こしたくない。


「クレイグ、みんなどんな感じ?」

「ヨル様とリンク様は共に自室へ戻られております。エスターの準備は常に。記憶している限りでは、もうすぐ予定時刻になるかと」


私が聞きたい事を全て教えてくれたクレイグに感謝して、皇城の応接間へ急ぐ。遅れていなければ、リリア達はすでにカタルシアの城下町の辺りについているだろう。私の方から出迎えるのも良いが、「姫自ら案内役をする」というのは悪くはないが良くもない話だ。しかもカタルシアは世界トップクラスの軍事国家。少しでも甘いと思われると父様の顔に泥を塗る事になる。

まぁ、正直面倒だから応接間で待っていたいだけなんだけど。


「アステア様のお好きなお茶ですよ!」


応接間につけば笑顔でエスターが迎えてくれて、甘さ控えめのお菓子に合う美味しいお茶を淹れてくれた。確か前に美味しいと言ったお茶か。エスターの健気な姿に癒されてから、お菓子を口に含む。

控えめとはいえ甘いお菓子はほどよく脳を柔らかくさせてくれて、少し落ち着く事ができた。

焦る気持ちを深呼吸なんてシンプルな方法で押さえ込み、目を瞑る。少しすればクレイグが「到着されたようです」と教えてくれた。


「頑張りますかぁ…」


最近よく頑張ろうとか頑張るとか言ってるせいで口癖になりそうな言葉だけど、それしかできない現状が憎い。私は一つ背伸びをして、こちらに向かっているだろうリリアとルカリオを迎える体勢を整えた。

お読みくださりありがとうございました。

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