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第百四話 …………納得?

初めて会った時は庭にいた時に声をかけられただけだし、その後も同じタイミングで公の場に出た事はない。そう思うと多少緊張してきそうなものだが、なぜか私の体は至って平常。もっと言えばリラックスモードだった。


「…アステア第二皇女か」


声をかけた瞬間には驚いたような顔をするクリフィードだが、私がニッコリと微笑むと呆れたように溜息を溢し、うんざりとしながらも対応してくれた。


「ご挨拶と言ってもあまり話す事はないのだけど」

「そうだな。なら何か用なのか?」


物凄いローテンションで話してるけど、どうやらクリフィードは周りの貴族がうざったらしいのか私との会話を続けようとしているらしい。ヨルのためにも挨拶だけに済ませようかと思ったが、この場で話せるならさっさと終わらせてしまった方が早いだろう。


「この前から話していた件、上手くいきそうなのでまた協力していただけないかと思って」

「あぁ、二人の……まぁ、協力くらいなら」


真顔を貫いてはいるが、極度の女嫌いであるクリフィードがこれだけ女性と話すなど今まで一度たりともなかった事態。周りの貴族達は目を見開いて驚いて見せた。そのおかげでヨルに視線が行きにくくなってるのは有難いな。


「では、そろそろ失礼しますね」


兄様や姉様ばりに外面を顔に貼り付ける。顔の筋肉が痛くなってくる前に立ち去ろうと思って一歩下がれば、私が早く帰りたがっていると察したらしいクリフィードは返事をしようとした。けれどそれを遮ったのは、私が今この瞬間最も会いたくないランキング1位に君臨する男だった。


「カタルシアの第二皇女姫殿下ではないですか!!こんなところにいらっしゃったのですね!!」


耳鳴りがするレベルでデカデカしい声を張り上げ登場したリディア伯爵コノヤロウ。耳がいてぇじゃねぇか!!

私を見て一瞬目を見開いたのはリディア伯爵の一歩後ろを歩いていたリディア夫人。あぁ、大丈夫。そんな顔をしなくても夫人には一ミリも怒ってないから。そんな申し訳なさそうな顔をしなくて良いんだよ。


「お久しぶりです、リディア伯爵。もう会う事もないと思っていました」


わかりやすく棘を含ませた言い方をしてやれば、なぜか私を見るクリフィードの目の色が一瞬変わった。


「そんな事を言わないでいただきたい!寂しいではないですか!!姫殿下にはリアンを任せたいと思っているのに!!」

「あなたっ!」


焦ったようにリディア夫人が言葉を制止する。けれどリディア伯爵はそれに嫌そうな顔をするだけで、何か言葉を返すような事はしなかった。

リディア夫人がなんで焦ってるかもわかってないんじゃない?こんな人が多い場所で、帰ってきたとは言え家出した長子の名前を出して、挙句の果てには他国の姫に任せるぅ?………非常識にもほどがあるね。


「相変わらずお声と図体が大きいのですね。リディア伯爵は」

「そうですかな?まぁこのくらいでないと戦場では声が届きませんからなぁ!!」


マジでその大声をなんとかしてくれ。クリフィードが「何すんだよ!!」とか怒鳴ってる時もうるさいけど、比にならないくらい私の心が苛ついてるから。


「リディア伯爵、それで何の御用ですか?」

「ん?あぁ、先ほどリアンと話したと聞きました!まだお心は決まっておられないのかと思いまして!」

「…申し訳ありません、少し意味が分からないのですが」

「姫殿下がリアンを騎士にする決意です!きっとすぐに決めてくださるだろうと思っていたのですが、一向に音沙汰がないので心配で心配で…」


後ろの夫人見てみろよ、口あんぐり開けて信じられないって顔してるぞ。公の、しかも王太子の即位式のパーティー。そんな晴れの舞台で友好国であるカタルシアの姫相手にこんな話をする馬鹿だったなんて想像もしていなかった。いや、馬鹿な話をされるんじゃないかって心配はしてたけど。

ヤバイ、もうすぐ拳が飛びそうだ。


「先生、久しぶり」


殴りたい衝動を抑えている私の拳が一瞬緩む。声をした方を見れば、クリフィードが笑顔でリディア伯爵に話しかけていた。


「おぉ!クリフィード殿下!遠目で何度も見ていましたが大きくなられましたな!」

「こうやって話すのは久しぶりだったよな?先生はいつになっても変わってなくて安心したよ」


二人が一言二言交わしただけで、夫人の顔は安堵に変わり、周りの貴族達が自然と距離を取った。え、あれ?なにこれ。


「久しぶりに話ができる機会なんだ。あっちで話そう、先生」

「!!…あー…それはですな…」

「ダメか?」


クリフィードが控えめに聞けば、仕方ないとばかりにリディア伯爵は「良いですよ!」と頷いて見せた。それからクリフィードはさっさとリディア伯爵とリディア夫人を連れて他の場所へ移動しようとし、その時、私の事をギロッと睨む。

その瞬間、私の頭がフル回転してありとあらゆるクリフィード関連の記憶が呼び起こされた。


──先生に何かしようってなら容赦しないからな!──


……あー…………納得?

お読みくださりありがとうございました。

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