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第百三話 初めてかも…?

両王子共に真っ白な正装を着こなして、違う点と言えば胸元につけている勲章の数くらいか。クリフィードもいくつかつけてはいるが、戦場に出て武勲を上げているブラッドフォードと比べると些か寂しい気がしてしまう。

けど、本当に違いと言えばそこだけだ。いつも不機嫌そうなクリフィードは持ち前の甘いマスクを真面目でお堅いものにして、ブラッドフォードは姉様が惚れてしまうくらい男前な顔をいつになく感情を読み取らせない表情にしている。言ってしまえば、どっちも真顔。物凄く真顔。もうちょい愛想よくできないのかね、まぁ国の一大行事だから仕方ないかもしれないけどさ。

私は呆れ気味に溜息を溢してしまうが、周りの緊張感によっていとも容易くかき消される。ブラッドフォードとクリフィードが、同じタイミングで跪いた。

王様は微笑すると玉座から立ち上がり、しっかりとした足取りで両王子の前まで歩いていく。その間二人は顔を上げる事などせず、俯いている視線の先に王の足先が映るのをただジッと待っていた。


「ブラッドフォード・フィニーティス・フェルン」


名前を呼ばれたのは、もちろん姉様の想い人。


ブラッドフォードが面を上げ、その瞬間、フィニーティスの歴史的瞬間に立ち会っている貴族達の肩から一瞬力が抜ける。…それが安堵のせいなのか、失望のせいなのかは知らないけど。


「我が国の指針となり、我が国の柱となり、我が国の王となる子。誉高く生き、けれど傲る事なかれ。選ばれた者としての運命を受け入れ、その器に見合った国を造りなさい。今この時よりお前は王太子だ。ブラッドフォード」

「王太子の座承ります、国王陛下。国王陛下のお言葉を忘れる事なく精進する所存です」


さすが乙女ゲームの世界。姉様を掻っ攫うであろう憎き野郎と、いつものほほんとしている王様でさえこんな時は凄くかっこよく見えてくる。セリフ的にはファンタジー感満載だけど、すんなり耳に入ってくるのが不思議だ。

今この瞬間に王太子の座に即位したブラッドフォードを、王様が立ち上がらせる。まるで自分と対等に扱っているようで、跪いているクリフィードとの格差が顕著に現れた。


「これよりこの身を王太子殿下の盾とし剣とし、この命を全て捧げる事を最上の喜びとし、足りない我が身を国の礎とします事を誓わせていただきます。我が国の王太子の誕生に、神々の祝福があらん事を」


長ったらしいクリフィードのセリフも終わり、最後に王様が一言。


「我が国の歴史が新たに生まれた瞬間だ。盛大に祝おう」


その瞬間玉座の間は拍手喝采の嵐となり、私は安堵の表情を浮かべる姉様の真似事のように手を叩いたのだった。


───








玉座の間で即位式を終え会場に戻れば、また空気が一変する。玉座の間のピリついた空気なんて忘れ去られ、即位した王太子の紹介も、王様の有難いお言葉も、全てが円滑に円満に、物凄い温かな雰囲気の中で行われた。


「本音が顔に出過ぎだぜ、姫さん」


いやいやヨルさん、だってここまで一変したら怖いって。第二王子派の貴族達めっちゃ無機質すぎる笑顔なのに全体的にはとっても暖かい雰囲気ってマジ怖いから!!怖いとしか言えないよ!?

思わず「引くわぁ…」と呟けば、ヨルは気を遣ってくれたのか私を会場の隅の方へ移動させてくれた。気遣いできる男はモテるらしいですぜ、ヨルさん。


「モテ男は違いますねぇ」

「貶されてるような気がするんだが?」

「褒めてますよ」


ニッコリ微笑んで言ってやり、それから会場を見渡す。ブラッドフォードと王様は国民の前で挨拶をするための準備があるので早々に会場から姿を消し、代わりに王妃様とクリフィードが貴族達の相手をしている。

時々クリフィードが嫌そうな顔を隠そうと頑張っているところを見ると、第二王子派の連中に何か言われているのだろう。望んでもいないのにワラワラ集まって来た挙句に文句でも言っているなら、第二王子派はクズの集まりだな。まぁ、そんな集まりだからサーレみたいな可愛い女の子を捨て駒みたいに扱えるんだろうけど。

王妃様の方には姉様が挨拶に行っているし、クリフィードには私が挨拶しておいた方が良いか?私も姉様もカタルシアに帰っちゃうから、最後にブラッドフォードと姉様を二人っきりにもしてあげたいし……。クリフィードの協力あった方が楽そうだしな、うん。


「ヨル、あっち行きましょう」

「……マジでか」


物珍しく、あるいは忌み嫌っている事を隠そうともしない視線を不躾に送ってくる貴族達が蠢く場所を指差され、ヨルの顔が思いっきり顰められる。すまん、さっさと終わらせるからね。

私はヨルの腕を引っ張る形で、クリフィードの元まで歩いた。


「クリフィード第二王子。ご挨拶よろしいでしょうか」


そういえば、こうやって公式の場所で挨拶するのは初めてかも…?

お読みくださりありがとうございました。

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