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第百一話 全く気にしない!気にしてやらない!

リンクの言葉を頭の中で繰り返し、口が驚きによって小さく開いてしまう。おまけみたいについてきた「えっ」という声はリンクに聞こえてしまっただろうか。


「今…魔道具士にって…言いました…?」


様子見しておこうと思って来たらこれだよ。え、あれ、まだ引き抜きに行ってから二日くらいしか経ってないような気がするんだけど!?その間に覚悟決めちゃったわけ!?


「貴女の元でなら、できるんですよね」


私の動揺なんて露知らず、リンクが真面目な顔で聞いてきた。まぁ、私のところに来ればある程度の事は自由にさせてあげられるのは確かだけど…。


「別に私は貴方に専属になってほしいと言っているんじゃないですよ?ただ、カタルシアに来れば魔道具が作れるってだけの話で…」


リンクが恩を仇で返すような人間ではないと、なんとなくわかっている。だから私のところに縛るつもりはない。カタルシアに来て魔道具を作ってさえいれば、遅かれ早かれ父様とか兄様あたりがリンクの事を見つけ出して引っ張り上げてくれるだろう。リディア伯爵と違って父様達は見る目あるからね!それが回り回って私や姉様の利益になるんだ。最初は専属も良いかなって考えてたけど、フィニーティスに来て疲れる事ばかりだったから、少し距離をおきたい気持ちが芽生え始めてるんだよね…。


「俺を見つけてくれたのは第二皇女姫殿下です。断られるならば諦めますが、もし許していただけるなら専属としてお側に仕えさせていただきたい」


この兄弟こういうところそっくりだな!!いや、親子か?別に、私に仕えてもらいたいとかはないんだよなぁ!!まぁ顔が良いから断る気もないけど!!


「わかりました。貴方の意思を尊重しましょう。……それにしても、あの伯爵がよく許可されましたね」

「!!」


あんれぇ?その驚いたお顔は何かなぁ?


「父には…まだ、言っていません…」


やっぱり?リディア伯爵がいるフィニーティスには極力関わりたくないっていうのが本音だけど、ブラッドフォードと姉様の結婚を目指す以上、良い印象を残して関係を維持しなくちゃいけない。そう考えると私色々とやり過ぎた感あるけども、まぁそこは王様気にしてないみたいだから良いの、うん。

問題はリディア伯爵からどうやってリンクを取り上げるか…。面と向かって言ってもリアンを私の騎士にするために土下座まで披露した野郎だから、たぶん言葉を聞き入れてもらえる事はないだろう。


「どうしましょうか…」


本気で困ってしまい、それがそのまま声に現れる。私の様子を見てリンクも申し訳そうな顔をして、それから「そうですね…」と提案もないのに返事をした。ホント、どうしようか。


「姫さんが悩むなんて珍しいなァ」

「えっ」

「簡単な事だろうがよ。殴り込みに行った時の勢いはどこ行ったんだ?」


大丈夫か〜?と聞いてくるヨルの顔を確認する。すると予想通りニヤニヤとした笑い顔が見えたので、私は「あの時とはキレ具合が違うので」と答えてやった。


「そう拗ねんなって。要はこの坊ちゃんの親父に息子離れさせれば良いんだろ?」


その問いに、まぁ間違っていないな、と思ってコクンと頷けば、ヨルは笑みを浮かべた口元を私の耳元へ寄せた。それから小声で紡がれた言葉は、まぁ至極簡単な事。あの伯爵が一度招いた事を繰り返してやろうという提案だった。

……確かに、それならリディア伯爵の驚いた顔が見られそうだな…。


「俺の賭けに乗るか?」

「…まぁ、その賭けなら乗ってみるのも悪くないですけどね」


ニッと笑って見せれば、同じようにヨルが笑う。お互い悪役みたいな笑顔だろうに、その笑顔を浮かべている事さえ面白く思ってしまった。


「って、事で!リンク!まず最初の大仕事だよ!」

「え?あ、はい?」


もう私のところに来るのを決めたなら敬語も何もいらないだろう。ヨルから視線を外し、私はリンクに向かって言ってやった。


「荷物まとめて来い!」


───










「リアンのいない間にさっさと話は決まりました」


真顔で言ってやれば、目の前のリアンはぽかんと口を開いて、その後に「そうなんですか…?」と何が何だかわからないような顔を披露してくれた。


「リンクの引き抜きには大成功したので、私はできるだけ早くカタルシアに帰る。あとはリアン、貴方の頑張り次第だよ」


リンクと一緒に会場に戻ってきた私の隙を見て挨拶しにきたリアンは、いきなりこんな事を言われて困惑した表情を隠しきれていない。けど私は物凄い上機嫌なので全く気にしない!気にしてやらない!


「んじゃ!リアンの頑張りに期待してるから!」


ニコー!と笑って言い逃げすれば、私の後ろ姿を見送ったリアンが動けずにいるのがわかった。それがまた面白くて、私は笑顔で姉様の元へ戻る。


「…気持ちなら負けないんだけどなぁ……あ、それがダメなのか」


そんな呟きが上機嫌の私の耳に入る事なんて、当然なかったのだった。

お読みくださりありがとうございました。

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