後悔先に立たず
日本一長い滑り台を滑りながらこの話を考え執筆しました。
毎年更新予定です。
「滑るッ…!」
それが俺が最期に発した意味のある言葉だった。
前に想い人の女性と一緒に富士山に登った時のことが忘れられず、俺はまた麓に来ていた。
今回は一人だが頂上からの景色を見ればあの日のことを思い出すことができるだろうと思った。
それに一人といっても俺はネットで配信者をしていて大勢の視聴者がいるので寂しさは全くない。
登り始めた俺の足取りは軽い。あっという間に頂上付近にたどり着いた俺の胸は高鳴っていく。早くあの景色が見たい、そう思う俺の足はさらに早くなった。
装備は万全で危うさは全くない。雪の道もアイゼンを付けているおかげで滑らずに進める。
もうすぐ頂上だと思ったその瞬間、突風が吹いた。体勢を崩しまずいと思った時にはもう遅かった。転倒の際にピッケルを手放してしまった俺は何かに掴まることもできず落ちていった。岩肌に身を切り刻まれ手足が千切れていく。薄れていく意識の中で最期に目の前に一際大きな岩が見えた。
俺の人生はそこで終わった。
気が付いて目を開けるとそこにはとびきりかわいい女の子がいた。
「目が醒めましたか?」
という女の子は俺のような陰の者には眩しくてまじまじと見ることもできないほど可憐でワイ好みの顔やった。というかなんか全身が光ってる気がする。
「どうしましたか?」
どうしましたじゃないやろと思うもとりあえずしどろもどろになりながら話をすると、ワイは死んだということが告げられた。
「はぇ~」
「これからあなたは他の世界へ転生することになります。そのためにはまずポイントを割り振っていただきます。ポイントはあなたが生前善い行いをした分だけ貯まっています。」
「何ポイントあるんや?」
「1000ポイントありますよ、こんなに多い人は久々です。20ポイントくらいが平均的な数値ですから。」
「なんでそんなにあるんや?」
「あなたは死に際にある配信をしていました。その配信には多大なエンターテイメント性があるとして数々の動画サイトに転載され、多くの人を楽しませました。私を含め天界の者たちはそれを大きく評価し、今回のあなたのポイントを決定いたしました。」
ワイの生前は人気配信者やったんやろかなんて思いつつポイントを割り振った。
「これでよろしいですか?」
ワイは大きく頷くとともに二人で新しい世界への旅に思いを馳せる。
「はぁ、まさか私を自分と同じ異世界に連れて行くことに全てのポイントを使うなんて思いませんでした。」
「お前と一緒ならどんな世界でも楽しく生きていける、ワイはそう思ったんや。」
「…」
こうしてワイら二人は異世界に足を踏み入れた。一体今度はどんな人生になるのか、それはワイにもこの天使にもわからない。