ー第5話ー
「あの虫は私の天敵だな。まさか、ここまで追い詰められるとは」
狐とジャッカルのキメラ・フォッカルやカミキリムシは、その後もステータスを確認しようとしたり、アイテムを整理しようとするなどトビラの注意がそれるタイミングで奇襲をしかけてきた。おかげでじりじりと体力を減らされてしまった。
「あそこからセーフエリアになるのか。危なかったけどゴールね」
ペトロニウスは数枚のフォッカルの毛皮や尾を背中にかけている状態でトビラの後ろをついてきている。
フィールドではじっくりとステータスを確認できなかったが、召喚獣は攻撃力がほとんどなく、自分自身の防御力もひくい。また単独行動は嫌がるようで、ペトロニウスだけでマップを偵察してくる事もできない。
現時点では背中に直接荷物をのせて荷運びが出来ること、支援魔法を使える事がわかった。支援魔法は2種類あり、素早さを短時間だが上昇させる魔法と、リジェネによる回復魔法を使ってもらっている。ただペトロニウスのMPは多くなく3回も支援すると魔力がきれてしまうようだ。その後の戦闘では、ほとんど逃げ回っているだけとなってしまった。
最後にニンジンも好物のようで、近くに敵がいない場面で食べていた。
そんな訳でチート的な能力を持っていて「スゴイ」とはならなかったが、トビラとしては十分に役に立ってくれたし、助けられている。また召喚可能時間も十分に間に合った。
そして今、マップに流れる幅3メートルほどの小川にかかる橋まできた。
ここにはボスはおらず、橋をわたるとセーフエリアになっている。その辺の情報は運営も公式HPで明言しており、トビラも覚えていた。だが、出て来るモンスターは初期フィールドなんて、どのゲームもたいしたことないと確認してなかった事もあり、思いの外痛い目にあってしまった。
回復アイテムは持ってこなかったためHPは3割ほどしか残っていない。が、生きてたどり着けば関係ない。ネコ大陸ではセーフエリアに付けばHP・MPは全快するシステムになっている。
「!」
橋を渡っていくとマップが切り替わったようで、突然、ザワザワと人の声が聞こえだす。周囲の景色はシームレスにきりかわり、ロード画面などもなかったためにトビラは余計におどろいていた。
馬はリアルでは臆病な生き物だが、ゲーム的に処理されているのか、人がたくさんいるからといって暴れる様子はなかった。
「ふぅ、ちょっと休憩にしますか」
トビラは橋のたもとの横でペトロニウスのスキルをじっくり見たり、今後の方針を考えようと川原に腰掛ける。
と、そのタイミングで
「・・・ん?夏辺野トビラじゃないか!昨日ぶりだな!」
と挨拶してきたのは一緒に積み下ろし作業をした蒸気パン・クウであった。
「あぁ。昨日の。偶然だな」
ちょっと意識して男言葉を使いつつトビラも挨拶を返す。
「お前さん、変なの連れてるな?ロバ?子馬?職業は馬賊だったのか?」
と蒸気パン・クウに質問される。
「いや、私はサモナーだ。召喚獣がポニーのペトロニウスだ」
紹介すると、
「そうか、召喚獣なのか。ずいぶんと可愛らしいのを引き当てたな」
トビラにとってカワイイは微妙な評価だが、
「ありがとう。でも、頼りになるんだよ」
と返すだけで抑える。スキルなどの使い勝手の良さを自慢して、自分の幸運を見せつけたい気持ちもある。あんまり喋ると男らしさが足りない気がしているのである。
「うん、アイテムの持ち運びが出来るのは羨ましいな。その背中にかかっているのはドロップアイテムだろう。昨日はソロでここまで来たんだが、ドロップアイテムはかなり捨てないといけなくてな。今日は野良パーティ組んだよ」
「そうなのか?パーティの連中は放っておいてよいのか?」
見たところ蒸気パン・クウは一人で行動していたので、ここで話し込んでよいのか聞いてみる。トビラとしては野良パーティの募集はどうしたのか、情報交換できる時間があればと聞いてみる。
「あぁ、パーティって言っても2人だけでな。大きめのバックパックでアイテム運ぶのと、戦闘できる俺って構成だ」
そう2人が話し込んでいるところに男が1人近づいてくる。
その男が
「ぶほ。ちっこい!なんだ、これ!なに、これ!?かわゆいなァ」
と大笑いする。
ちなみに最後のかわいいは語尾があがっていて完全にバカにしている。
リアルの身長が低めのトビラは自分に言われているわけではないが、ブチ切れそうである。褒め言葉のカワイイでも嬉しくない、むしろイラッとすることもある。
今は馬鹿にされて火がつきそうなほど頭に血が登っている。ロボットアバターも顔が赤くなる処理はするらしい。
「私は先に進む。またな」
と言い捨てて、返事も聞かずトビラは歩き始める。
背が低い事などで不快な思いすることは大人になってからもたまにあるし、子供のころはしょっちゅうであった。だからトビラは言い争うことなく、無視して先に進むことにする。
「あ!ちょっと」
蒸気パン・クウが慌てるが、トビラは足を止めることなく行ってしまう。セーフエリアはそう大きくない広場であったため止めることができなかった。
そのまま次のエリアへと進入する。次のエリアも森であったが、より木々の間隔が広く一本一本が太い。また針葉樹が多いのか、地面に落ち葉が少ない。
「チッ!色々聞いてから先に進むつもりだったのに!なんなんだ、あいつはぁ!」
マップの切り替わりでゲームの仕様上、トビラとペトロニウスしかいなくなる。誰もいなくなって突然の静寂を打ち消すトビラの自分なりに男らしいと思う叫びをあげる。
話はそれるがトビラは1人のときでもネナベプレイをやめるつもりはない。切り替えが出来ていないときもあるが、男の外見と声色で女性の言葉遣いは本人が気持ち悪いと思っているようである。
ひとしきりブツブツ言いながら歩いて行く。のほほんとついて来ているペトロニウスのたてがみをワシャワシャして、気を落ち着ける。
と、ペトロニウスが突然にいななく。耳が縦にピンとたっている。トビラはこれらのサインの正確な意味は分かっていないが、カミキリムシに奇襲されてきた経験上、召喚獣の視線の先を追う。ちなみに目線より耳の向きのほうが正確だが、そこまでは理解していない。
そこには予想通りモンスターがいた。大きさは頭から尻尾までは1メートル近くあるが、背は低く40センチほどの貂であった、ただし足は8本ある。現実に存在する動物の貂はイタチの仲間でかなり小型の動物だが、ネコ大陸では大型化してモンスターとなっているようだ。柄は灰褐色で、頭部にかけてのみ淡い黄色ぽい色をしており、顔も愛嬌がある。
名をタコアシテンという。
「なんだ?狐?狐のモンスターなら足じゃなく尾を増やせばよいのに」
トビラは都会っ子全開の感想を口にしているが、これはマイナーな動物をもとにモンスターのデザインする方も悪いかもしれない。
相手の情報がないため、むりな急襲は狙わずに落ち着いて両手で槍を構えて、穂先をタコアシテンに向ける。そしてジリジリとすり足で間合いを詰める。
今までの相手はどれもただ適当に武器を振り回してるだけで瞬殺できる敵ではなかった。今度のモンスターはこちらを見たまま止まっているが、何をされても対応するつもりで落ち着いて、槍の届く範囲へと近づいていく。
「ペトロニウス、他にも敵がいたら教えてね」
と目はモンスターからそらさずに声をかける。
もう少しで槍の射程にはいると言うところでタコアシテンは顔を歪めて
「シャァ」
威嚇してくるが、かまわず槍をかまえて突撃する。
何をされるか分からないなら、こちらから先制した方がよいとの判断だが、向こうも落ち着いたもので、後方に器用に下がってよける。
そこで小さな火の玉が貂の頭上に浮かぶ。
それすら無視して、更に鋭く踏み込み、攻撃をしかけようとしたところで、システム猫が
「フレンドから通信だよ!」
と声を上げる。ちなみにシステム猫は戦闘中は基本、どこかに消えるというか、ゲームとしてプレイヤーに意識されない所で大人しくしているという設定になっている。
が、通話機能が使用されたため、タコアシテンの横に唐突に現れて声をかけたわけである。
トビラは想定外の事態にガクッと踏み込みをはずし、槍が止まる。
ゲームとしての安全機能か、火の玉も目標を見失ったように上空に2メートルほどあがったあと、ペトロニウスに向かっていく。
「やば」
とトビラが振り向くが、火の玉の速度は思ったより遅く、ペトロニウスはかわしている。
「フレンドから通信だよ!通話モードにするかい?」
と再びシステム猫に声をかけられる。同時に電話マークのはいった仮想ウィンドウが現れる。
「とりあえず留守電ぽくしといて!」
とトビラは返事を返す。留守電機能があるか知らなかったが、システム猫はうまく対応したようである。
ゲームの機能としてモンスターは驚くのかは、分からないがタコアシテンも攻撃してよいのか戸惑っていた雰囲気をなくし、トビラの方をみて再度、威嚇の声をあげる。
その後、被弾一回で無事にタコアシテンを倒すことが出来た。
先程の戦闘中にフレンドコールをかけてきた相手、蒸気パン・クウに折り返しのコールをかけていた。
「おお、夏辺野トビラか、色々と間が悪くてすまんな」
と開口一番謝られる。どういう風にシステムが処理したか分かっていないがトビラが戦闘中であったのは承知しているようだ。
「そういうこともある。しょうがないだろ」
とトビラも返す。変な男にバカにされたのも含めて蒸気パン・クウを責めてもしょうがないと思っている。
「うむ。できれば直接謝りたいから、パーティ加入してトビラがいるフィールドに行っても大丈夫か?」
「(そんなこと気にしなくて)よいけど」
「すまんな。ではパーティ申請出すから」
「え。ちょ」
トビラとしてはペトロニウスが笑われた事は怒っているが外見で判断されることには慣れてもいる。わざわざ謝りに来てもらう必要はないと思ったが、通話は終了していた。今から折り返して気にするなって言うのも、どうかと思い、届いたパーティ申請を受理する。
システム猫を通して蒸気パン・クウからのパーティ申請および、フィールド共有の申請を受理する。同じフィールドに来たからと言って、同じ場所に即座に現れるわけではない。
「来る時は何もいなかったのに」
目的を持ってフィールドを歩くと、目的に関係のないモンスターがあらわれる。不思議な法則もあったものであるがトビラとペトロニウスの前にニワトリ型のモンスターが立ちはだかる。色は黒に近い灰色で、体高は70センチくらいあって現実の鶏よりだいぶ大きい。
トビラはパーティ通信で
「ちょっと敵が出てきたからカタす」
一言断りを入れると、鶏と正対する。
「おぉ了解。こっちが向かうよ」
と返事もあったが、あまりトビラは聞こえてなかったようだ。
「ケェぇ」
鶏は翼を広げて威嚇の姿勢をとる。目に見えない衝撃波がトビラをおそう。ズササと音をたてて後退させられる。
「いっつぅ。風の魔法?見えないのは厄介ね」
半身の姿勢で槍を構え直す。鶏に正面には向き合わず、横向きになることで面積を減らす。
「クァぁ」
と鳴き声をあげるが、そこにペトロニウスのバフがとんでくる。
速度が上昇したトビラは一気に間合いをつめていく。
慌てた鶏が再び衝撃波を放つが、トビラは余裕でかわして一撃をいれる。
「ガっ」
鶏はうめいて下がる。
「さっきから鳴き声だけはカラスみたいなやつね」
そう言いながらもトビラは内心で焦っていた。相手の羽毛が邪魔して、傷が浅いのかイマイチの手応えである。思ったより防御力が高いのかもしれない。
鶏は「カっ」短く叫びジャンプして爪を振り下ろしてくる。
槍を両手で持っていたのが幸いしたのか、器用さが高かったのが良かったのか、柄の部分で受け止めることが出来た。
しかし相手の体重ののった攻撃に押し負けて、尻餅をついてしまう。
そのままクチバシで突いてくるのも柄で弾くのが精一杯である。
(くるしいな、反撃のタイミングがない)
防戦一方になってしまっているトビラと攻撃手段のないペトロニウス。更にまともに立ち会ってもトビラの攻撃力では大きなダメージにならない。
タンクやヒーラーは人気がない職である、ゲームの中で最も人気がある職業はアタッカー、攻撃力の高い職業である。そのわかりやすい理由がこれである。タンクやヒーラーは攻撃力が低いので戦闘に長い時間がかかる。防戦しながら反撃の機会を待つのはストレスがたまる。
高火力のアタッカーなら先手必勝で一撃で勝つ、反撃で大ダメージをもらっても生き残れれば、それすら派手になる。プレイヤーの脳内ではどんな派手な必殺技やエフェクトより強く印象にのこる。
話はだいぶそれてしまったが、トビラたちが鶏に苦戦しているところに駆けてくる蒸気パン・クウ。
立ち上がったトビラが振り向くと鶏にむけて大きな両手剣をふり上げられている。あとは振り下ろせば大打撃になるだろう。おもわずビックリして固まるトビラに蛮声が襲う。
「かぁかってこいやっ!」
鶏にふりあげた凶悪な力を秘めた両手剣を、今にもふりおさんとしている蒸気パン・クウの姿があった。
「どうした!おらぁ!」
と叫んでいる蒸気パン・クウに鶏が向き直る。が、まだ攻撃しない蒸気パン・クウ。
翼をひろげて魔法をつかう体勢になるが、まだ大剣は振り下ろされない。
「どうしたぁ!かかってこ・・ゲフゥ!!!」
衝撃波をくらって吹っ飛んでいく。
「な、なにやってんの?」
トビラは追撃をさせないように槍で鶏を牽制攻撃をくわえていく。
「むむ。も、問題ないっ!」
蒸気パン・クウから返事がかえってくる。そのまま鶏にかけてくると今度こそ袈裟斬りに両手剣をふるう。
「どりゃぁ!」
「クェぇ・・・」
致命的な攻撃になったのかひときわ大きな赤い砂が舞い上がるような効果があがる。それで鶏は倒され、ドロップアイテムに姿をかえる。
トビラの攻撃では有効打を与えられなかった鶏を一撃で倒した蒸気パン・クウであったが衝撃波のダメージも大きかったようで回復アイテムを使用している。
「とりあえず助かったよ。意外と苦戦しれしまった」
とトビラが礼をのべる。
「気にするな。とりあえずセーフエリア手前まで戻ろう。そこなら敵がほとんど出てこない気がする」
蒸気パン・クウ、夏辺野トビラ、ペトロニウスで連れ立って歩きだす。
ところで鶏のドロップはメス野鶏の尾羽根とある。蒸気パン・クウが拾おうとしなかったのでトビラが取得した。
「ラストアタックは私じゃないから、これはやるよ」と渡そうとすると、
「さきに会敵したんだし、お前が持っていてもよいぞ」断る蒸気パン・クウ。
「私はほとんどダメージ出せてないから」と更に押し付けるように渡そうとすると
「分かった。代わりに、召喚獣、ポニーだったか?のことを教えてくれよ」と言ってようやくメス野鶏の尾羽根を受け取る。
「うーん。いいけど、たいした情報はないよ。まだレベルもあがってないし」
トビラは教えられる事があるのか、すこし不安ではある。
「いいんだ。俺はけっこー長時間ログインしてて、昨日から色んなやつと話したがサモナーはトビラだけだからな。レア職業はβで全体に不遇だったせいだろうが」と蒸気パン・クウが言う。
ネコ大陸は25の職業がある。公式には『弱い』職はない。が、不人気な職業はある、そしてランダムで当たりづらいとされるレアな仕事ほど、使いづらいとして不人気であった。レアな職業は強い能力もあるのだが、反面おおきな弱点もある。
特化型の職業は愛好家は一定数いるし、得意分野では強いので不遇ではない。が、様々な敵が色々と状況を変えて出てくるネコ大陸では、得意分野でしか活躍できないより器用貧乏な方が有利な場面が多かった。とはいえ、これはベータ版での話であり、本格的に攻略をしている人たち、攻略組とか検証班という人たちの間ではレア職業は「これから」が出番がおおくなると噂されていた。
何はともあれ色々と未知数な職業より安定してる、堅実である職業のほうが人気が高かった。
「もともと馬に乗って、騎士というか、騎馬というか、乗馬プレイできるキャラ構成にしようと思っていたんだ。で、ランダム職業でサモナーだったから・・・」
一通りキャラクリエイトからトビラは説明しはじめる。
トビラとしては「少数派」の職業を選んだ理由というか、言い訳もあって長々と説明をしていた。
「ふぅむ。ロマンだな。わかるぜ。俺もロマンある職業にしたからな」
と蒸気パン・クウが感想を述べる。
「まぁ、ロマンといえばロマン?でもサモナーは実用性もあるから。ところで貴方の職業はなんなの?」
「よくぞ、聞いてくれた。俺はハイランダーだ!」
「あぁ!あの、、、狂戦士スタイルの」
ハイランダーは一部に熱狂的な支持者がいるが、不人気職業の一つである。高い攻撃力があるので、マニアには人気はある。あるのだが、その攻撃力を出すための条件がキツイ。大前提として装備制限として武器や防具は一部のものしか使えない。育成していくタイプによって大きく3つに分かれるが、カウンター攻撃を中心としたスキル構成になるので必ず攻撃をうけるタイプや、HPが減ると攻撃力が上がるタイプ、味方を攻撃に巻き込むタイプがあり、それぞれに特化することも組み合わせることもできる。
しかしどれをとっても味方に迷惑になる。カウンタータイプはタンクの仕事の邪魔になる上に、近接武器しか装備できないのでノックバック付きの遠距離攻撃されれば何もできない。HPが減ると攻撃力上昇するタイプは回復役にとって仕事の煩雑さが増す。最後のタイプは最も少数派ながら多くのプレイヤーにトラウマになっている。
ベータ版のときに味方3人と敵ボスをまとめて切り倒したハイランダーを写した動画は各種サイトで再生回数上位に食い込み、ネコ大陸の宣伝に一役買った。
味方からの攻撃にはダメージはないが、攻撃された衝撃は感じる。仮想現実とは言え味方に剣を向けられるのも怖い。
ルール的にPKがないゲームなので人に攻撃する戦闘スタイルを苦手とする人が多いのでハイランダーはパーティに入れたくない職業ナンバーワンである。
そういった戦闘スタイルから狂戦士、地雷戦士、人斬りなどと呼ばれる有名職業である。
一緒に遊ぶ仲間が『そういった』スタイルを許容してくれないとやりづらい職業である。
蒸気パン・クウはトビラに狂戦士と評され
「うむ!相手と正面から殴り合い、全力で燃え尽きるような戦いができる!ハイランダーこそロマンの塊のような職業だと思ってな。職業選択でハイランダーがあたって嬉しかった!
・
・
・
とはいえ、パーティ募集は苦労するがな」
そういった話をしていたらフィールドの出口が見えてきた。無事にその後も戦闘がなかったのは運が良かったようだ。
「ロマンはわかるが、野鶏にぶっとばされていたのは、どういう理由?」
そういった仕様なんだろうとは予想をしながらもトビラは確認もあって尋ねてみる。
「うむ、高火力はロマンなんだが通常の攻撃は役に立たないんだよ。俺はカウンターアタックのスキルを選んだが、通常攻撃では攻撃の速度が遅くて当たらないんだよ。ほとんどスキルでしかマトモに戦闘ができない。けどスキルの発動条件で被弾しないといけなくてな。スキルとしての挑発はないが、さっきみたいに目立つことをするのでもヘイト取れること多いから、どうしてもああいう戦闘スタイルになる」
大声戦闘スタイルは攻撃をもらうための工夫らしい。単独行動ならともかくカウンターアタックの悲しい仕様である。
「正確に言うと復讐の一撃っていう、攻撃してきた相手への命中率と攻撃力をますスキルだから、カウンターっていうよりリベンジって感じなるのかな。まぁ後手にまわる戦闘方法だからなぁ。不人気らしいぜ」
先手必勝という言葉があるが、戦闘の主導権をにぎるのは先手である事が多い。その意味で後手に回るスタイルは人気がでないだろう。
ダメージが発生しないといけないので、相手の攻撃を見切ってかわし痛烈な一撃をいれる『蝶のように舞い蜂のように刺す』スタイルにもなれない。ダメージをくらう必要がある、そのわりには重装甲は装備制限があって装備できないため反撃をするまえに倒されてしまう可能性もある。使い勝手が悪いといわれる理由である。
「なるほどね」
「よし、今度は教えてくれ。召喚獣はどういう事ができるんだ?」
そう聞かれてトビラはペトロニウスの能力について教えていく。主に騎乗はできないが補助能力について話す。
とくにステータス画面を、まだ見ていないことを。
「うむうむ。それは凄いな。って、なんで見てないんだよ!」
「・・・しょうがないじゃないか。フィールドで召喚おわって、やっとセーフエリアついたら、からまれんたんだから」
蒸気パン・クゥはちょっと気まずい顔しつつも
「む、そうであっても遅すぎ、、いや、まあ、悪かった。
それはそれとして小型馬でも、そいつは馬だろう。一つ情報をやるから、ちょっとした取引しないか?」
口喧嘩になりかけたのを回避しつつ、蒸気パン・クゥはわざわざ追いかけて来てまで話したかった本題に入る。
「情報しだいだけど?」
「俺が求めてるのは簡単な事だ。ある程度、長時間の探索になるときにお前さんとペトロニウスの力を貸してほしいんだ」
蒸気パン・クウは無意識であったがトビラを動かすのに最適な言葉を選んだ。力をかしてくれと頼まれたらトビラはだいたいオーケーする。ちょろい。
「あぁ。そのくらいならお安い御用だが、長期の探索に役立つような力が召喚獣にあるのか?」
と答えつつトビラはニコニコしている、『力を貸してくれ』と頼まれるのはトビラがゲームでなりたい自分の姿だからである。ニコニコ顔のトビラを不審に思いつつ蒸気パン・クウは質問に答える。
「う、うむ。ある程度、長期間マップを探索しようとすると通常のゲームでも回復役と盾役は必要になる。が、このゲームだと現状、アイテムボックス役とでも言うか、アイテムを運ぶ役割を誰かにふらないとキツイ。だが、召喚獣にそれを割り振れるなら揉めないし、現状は馬賊とかの騎乗キャラだと自分が馬に乗るから荷物を持たせられないから」
実はゲーム開始当初から、これだけアイテムボックスが現実のカバンみたいに容量がすくないこと、またアイテムの重量が重くなると行動制限もかかる仕様のため荷運び役、ポーターとも言われる役回りがネコ大陸ではうまれている。
だが、戦闘力を必要とせず特殊な技能も必要としない荷運び役は揉め事の種になっていた。ポーターがいないと不便だが、ポーターは高いレベルを必要としないので冒険で得たお金やアイテムを均等割したくないと考えるプレイヤーは多い。
そういった火種にならない召喚獣にポーターを任せる事ができる、そう考えて蒸気パン・クゥは長時間の探索にトビラとペトロニウスを誘ったらしい。
「なるほどね。戦闘力じゃないのは残念だけど、さっきのヤツみたいに失礼なやつがいないならパーティに参加するよ」
「あぁ、それは安心してくれ。
っていうには実績がないが、こっちも一緒に冒険しないと性格が分からんからな、すまんな。何人か良い奴は見つかっているんだがな」
トビラは、それもそうかと思うし、悪いのは名前も聞いてない人なので納得している。
「長期の探索とやらに今すぐ行くわけではないだろうし、ぼちぼち探してくれればいいよ」
「そうさせてもらう。
トビラに教える情報のもう一つは馬に関することなんだ。俺は昨日はファンデーションから東に進んだだが、そっちに行くと騎士や馬賊が騎乗馬を手に入れるための牧場マップがあるんだよ。そこに行くと騎乗馬だけじゃなく野生の馬に関しても色々とレクチャーが聞けるらしい。ペトロニウスに関しても色々と情報が判明するんじゃないか?」
「そ、そんな所があったんだ!?それは行っておきたい」
「しかし、そこに行くとプレイ時間で何時間もかかるだろ?俺としても他のメンバーを探すことができる。そこでヒーラー役と魔法アタッカー、偵察役を探したい。今のところ、ここの小川のセーフティエリアが一番人が多いからな、ここでパーティ組めそうな人を探すよ」
そうしてトビラと蒸気パン・クゥはお互いにある程度、プレイできる時間のことやパーティプレイのルールについて簡単に確認しておく。長期探索プレイはネコ大陸のゲームとして一つの目玉コンテンツゆえお互いにそれに挑むこと自体は嫌でないが、トビラはトラブル防止に確認しておいた。
こうしてトビラは馬についての情報をえたが、パーティプレイはできるのか、どんな人が集まるのか、順当に牧場にたどりつけるのか?トビラたちの明日はどっちだ?!
5話もだいたい1万文字です。
誤字脱字は万が一、一万字に一個以下にしたいので、あれば教えてください。
駄文でお目々汚しになるかもしれませんが、お読み頂き感謝します。
年内最後の投稿になります。
うっかり最後の完結投稿にならないように書きたいと思いますが、
書き続けるのって大変ですね。
それでは良いお年を。