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ー第3話ー

 船の廊下を歩いているとシステム猫のエドガーが声をかけてくる。


「トビラ。ここから先、メニューや設定変更、ログアウト処理するときは僕のことを呼んでほしい。戦闘中とか呼びかけに答えられないときもあるけどね」

 と黒猫エドガーに声をかけられる。つまりゲームとして必要な処理を行うための装置が旅についてくるネコと言う設定なのである。


「呼ぶときの名前はエドガー固定なんですか?」

 とトビラが聞く。

「呼び名や外見は変更可能だよ?変更するかい?」

 と、黒猫エドガーに問い返される。一瞬、考えるが

「外見は茶トラの、ピートって名前にする。よろしくね、、よろしくな」

 そう言われれて、黒猫がまたたきすると茶トラ猫になっている。

「よろしく!トビラ、僕は他の人には見えないけど、プレイヤーは皆、僕らシステム補助のペットがいるよ」


 船の甲板にでると

「ようこそ冒険者諸君!私、王女ライジーアと共に、この謎の大陸についてきたくれたこと、心より感謝します!」

 と声が聞こえ、トビラはライジーア王女の方を見ると

「ん?」

 ライジーア王女の姿、その頭上にGM・ライジーアの名前が見える。


「このように相手の名前が分からないと、相手がプレイヤーなのか、GM、NPCなのかすら区別つきません。まずは色々な人に話しかけて下さい。この新大陸ではどのような事があるか予測つきません。貴方がたの冒険の安全性を高めるには情報収集が重要になってきます」

 と、補足するようにライジーア王女が言葉を続ける。

 プレイヤーの名前などはゲーム由来のストーカーなどあってから、各会社が行っている対策の一つなので、珍しいものではない。


 GMとはゲームマスターの略で、この時代のゲーム内では、お客さんであるプレイヤーが円滑にゲームを楽しめるようにする人たちのことである。遊園地でいえば、行列の整理をしたり、写真をとってあげたり、簡単な清掃をしながらウロウロしているスタッフの事である。一流の遊園地では、その夢の世界観をスタッフが壊さないようにする。


 ネコ大陸では冒険者と共にやってきた王国のキャラはGM権限をもち、なおかつゲーム内で暮らす王国民のロールプレイもこなすスタッフである。

 こうしたGMたちの話は、TIPS、つまり2次元ゲームの時にあったロード中の画面などにでてくるちょっとしたコツ、小技などの提供もしてくれるようだ。


 多くのプレイヤーは、女王に言われて周りの多くの人間達にマーカーも何もないのを確かめるように周囲を確認していた。

 一応、それに合わせるようにトビラも周りを見ていたが、意味は全然違った。

 トビラは人がたくさんいても視界が広いので、いつも感じる閉塞感がなく嬉しいのである。メチャクチャにやにやしながら周りを見渡していた。


 さて、周りを見渡した所で気づく人も出てきたが、到着した場所は湾になっていて浅瀬の砂浜が続いている。そこに乗り上げるような形で船があり、徐々に引いていく潮目に流されないように錨やロープで停泊している。


 船の前方の方から陸地に降りられるようだ。前方にいる初期装備ではないGMのような数名と言葉を交わした人たちが船からハシゴを下っていくのが見える。

「あ、落ちた!」

 ハシゴから落下した人が水深10センチくらいの浅瀬でバタバタしてるのが見える。

(背が高いと風景が見えていいなぁ)


 後方をみると今乗っている大型の船から小型のボートをおろす準備している人達がいる。またボートに載せるのだろうか樽を船倉から運んでくる人たちもいる。


「私はランポウという者です。王女の配下の一人です。この船は、このまま陸地に引き上げて開拓探検団の当座の宿・拠点として利用されます。そのための上陸作業および拠点建設を手伝っていただけると報酬として職業やスキルに合わせた武器を支給します。もちろん一刻も早く探検を開始されたいと言うなら引き止めはしません」


 ランポウが名乗ると相手がGMだと分かる。


 トビラは喜々として

「やる!やる!上陸は何から手伝えばよいんだい?」

 と他のプレイヤーに先駆けて大声で答えていた。

 というのもトビラは『手伝って』とランポウが言っていたので『頼りになるキャラ』として手を挙げたのだ。


 ランポウから指示を受けて本船からボートをおろし始めるトビラたち

「まず本船の荷物をなるべくボートで運んで船自体を軽くします。ここにいる人達はボートにおろすのを担当して下さい。あ!それと水夫の人がいたらボートの船頭などをお願いします。スキル補正のある作業だと熟練度がたまりますよ」

 そう言われて神官、僧侶の職業はバフをかけたり、シーフと狩人・カウボーイなどが荷物をキレイに紐でくくっていく、戦士系の職業が重いものを運んでいく。

 ネコ大陸ではスキルのレベル上げにはスキルポイントの割り振りの他に、熟練度が必要になる。熟練度は0〜100で100にならないとスキルポイントが余っていてもレベル上げできない。


「オーケー!紐は船に上げて!次の荷物をおろして!」

 最初は力がいる作業を手伝いはじめたトビラだがスタミナがきれると『器用強化』を発揮してボートで紐でくくられた荷物の受け取り役を始めた。紐を早く解けるし、ボートでオールを漕ぐタイミングもあったから向いていたようだ。


「オーライ!そのまま砂浜に一旦のりあげま〜す」

 水夫の指示で本船から30メートルほど横にボートを移動させる。距離は短いがギリギリまで荷物を載せているためなのか、水夫を始め皆のレベルが低いせいなのか、意外と時間がかかる。

 そうしてボートが船に着くと作業中は見かけなかったネコのピートがやってきて、

「クエストのクリア条件を達成したよ!」

 と声をかけてきた。

 一瞬びっくりして声をあげそうになったが

「うぉ、もう達成か」

 と隣にいた戦士風の男性が声をあげる。トビラからは分からなかったが、彼のシステムペットもクエスト達成をお知らせしたようだ。


 そこに大声でクエストクリアで報酬受け取りたい人はこちらへー!と案内しているGMがいる。どうやら一足先に上陸していたようだ。大型のテントがあり、報酬の配布を行っているようだ。


「よし!俺は先に行って一狩り行ってくるぜ」と先程の戦士風の男はオールを放り出して行ってしまう。ちなみにまだボートには荷物は積んだままで、このボートを空にして本船で次の荷物を運ばないといけない。


「えぇ!これどうするのよ」

 とトビラは思わず素の言葉遣いになるが、ほとんどのプレイヤーが我も我もと報酬受取に行ってしまう。トビラのボヤキは誰にも聞こえなかったようだ。


 結局、残ったのは3人だけであるが、頑張ってボートを空にしていく。

 その後、別に手伝いに来たプレイヤーもおり、荷物は順調に減っていく。

 減っていくが、ボートが空になる頃には、やはりクエスト達成になってしまいプレイヤーは報酬受取にいなくなってしまう。


 と、空になったボートの前で3人のプレイヤーが残る。

「私達だけで本船まで戻れるの、か。これ」

 とトビラが言う。

「ま!空船だし、いけるだろ」

 ともう一人の気の良さそうな男性が答える。

「私は水夫のスキル熟練度あげになるからやるよ〜。たぶん本船にはキャラクリ時間かけた人たちがいるから行けば何とかなるよ」

 と水夫で船頭役をやっていた男性も答える。


「頼まれた仕事を放り出すとか、ダメな連中ね」

 オールを漕ぎながらトビラが怒る。ロールプレイもあるが本人の性格としても許せないらしい。ロールプレイとはゲームのキャラになりきった言動をすることを指す。ロープレなどと略すと意味が違ってしまうため要注意である。


「なるべく早く先に進みたいという気持ちも分かるけど〜」

 と水夫が答える。

「ネコ大陸はアクションがウリだからな。新型のロボットアバターで遊びたいんだろう」

 もう一人の男性がうがった見方をする。


 実はネコ大陸はロボットアバター初のVRゲームである。そしてロボットアバターは旧来のピュアアバターに比べて外見だけでなく変更できることがある。身体能力の大幅な向上だ。ピュアアバターもゲーム的なアシストで現実では出来ない行動も取れるが、自分の身体データをもとにする時、人間の体の構造という制約は存在する。簡単に言うと関節はきまった方向にしか曲がらない。そして元となる脳に負荷をかけない動きになる。しかしロボットアバターは、脳は車の運転をしているのに似ていると『理解』する。だから、より変幻自在な動きが可能である。

 逆に開発としては文字通りどんな動きでも可能であらゆる関節があらゆる方向にまがる人体に、ゲームとしてどこまで制限かけるかで開発が難航した。

 ともかく今までのゲームよりアバターの派手なアクションが可能になっている。だから、派手なアクションを楽しみにしているプレイヤーからすると、ドンドン先に行きたいのだ。


「でも、本当にだれもいなくなったら、このボートどうしたんだろう」

 とトビラが疑問を口に出すと

「どうしたんでしょうかね〜。GMさんが運ぶんでしょうか」

 水夫が適当な予想を返し

「まぁ、じっくりキャラメイクしてる奴も多いだろうし、ログイン自体遅くなったやつもいるだろうから、何とかなるんじゃないか」

 と気の良さそうな男性も適当だ。


「しかし、お前さん、変わった見方をするな。俺は蒸気パン・クウ(ジョウキパンク)っていうんだが、名前はなんていうんだ?」

「私は夏辺野トビラ(カベノトビラ)。水夫さんは?」

「アース&シーって言います〜」


 ちなみに全員、心のなかでお互いに変わった名前だなと思っている。

 3人が自己紹介したことでプレイヤーであることが分かる名札のようなアイコンが胸元にうっすらと見える。

「私はやりかけの仕事を放り出したくないし。ログアウト時間がくるまで頑張る」

「あ、僕は熟練度がきりよく上がったら、抜けますよ」

「俺はリアルフレンドが来たら抜けるぜ」


 3人に共通するのは変わった名前だけでなくマイペースであることだったらしい。

「最後までがんばるのは私だけ?」


 こうして、なんだかんだでトビラはその日、一日ゲームを進めたり、召喚獣をみることなく、船での作業で一日を過ごすのであった。ともあれ3人でフレンド登録を交わしてお互いに時間があれば、また一緒に遊ぼうと約束する。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜2日目〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 夏辺野トビラ(カベノトビラ)はサモナーである。召喚獣はまだない。


 昨日はスタート地点で荷物の積み下ろしをしていただけで終わってしまった。


 トビラはサモナーというレア職業に当たったこと、身長の高さに浮かれてしまい舞い上がってしまいゲームの目標を見失ってしまった事を反省して、とりあえず今日は召喚術を使ってみること、レベルアップを目標にしようと決意した。

 背は高くなって視野は開けたが、精神的には見えないことが増えたようである。


 トビラはログインすると、砂浜に降り立った。システムネコのピートがやってきて、

「こんにちわ、夏辺野トビラ。アランポゥ大陸にようこそ。ここは開拓者たちの拠点・第一ファンデーションだよ。今日も楽しいゲームを」

と挨拶をしてくる。


 ちなみにプレイヤー間では基礎化粧品みたいな地名からファンデとかオシロイとか呼ばれることもある。陸地に乗り上げた船を解体し、新大陸の冒険の基礎拠点にするという事でファンデーション(きばん)との命名だが、ファンタジーらしさが薄くプレイヤー達の評判は今ひとつである。

 今は、まだ船が着いた地点の仮設住宅みたいな村だが、ゲームの進行とともにじょじょに発展していく。


 さておき前回、ログアウトしたところに戻ってきたのだが、トビラがログアウトした後も作業しつづけた人、交代にゲームにログインしてきた人々により拠点は柵や小屋などが立ち始めてきた。

 少しづつ拠点らしくなってきている。


 ちなみにシステムネコはヘルプの役割もある。

「ピート、聞きたいんだけど召喚獣って、ここでも呼べるの?」

「召喚は不可能だよ。召喚した後で町やセーフティエリアに同行は可能だよ」


 召喚が直接的な被害になることはないが、基本ゲームの仕様としてアクティブスキルの使用は制限されている。クエストの一部などの例外はある。初日の荷降ろし作業などでも一部のスキルは行使可能であった。


 トビラは、今日の予定を組み直す。まずはクエスト報酬を受け取りに行く、フィールドに出る、召喚して軽く戦闘を行う。その戦闘の結果次第で予定を再度、組みたてなおすことにする。


 ちゃんと予定を考えることで昨日より冷静に行動できているとトビラは内心で自画自賛している。目標は頼りにされること、そのためにやることなすことクレバー(かしこく)でいようと思っているのである。


 そこで昨日、報酬を配っていたGMのところに行く。サービス2日目とは言え、キャラを作り直したり、今日が初ログインの人も多く2〜30人の人がいる。

「クエストクリアの報酬を受け取りたい人はこちらへー!」とGMが叫んでいる。


 トビラが、そのGMの周り人の山に近づくとシステムネコ・ピートが

「クエストクリア報酬を受け取るかい?」

 と聞いてくる。

「えぇ、どうすればよいの?」と問い返すと

「NPCの場合はプレイヤーから注目されると分かるから、多少距離があっても話しかければ、アクションが返ってくるよ」

「なにそれレーダーでも積んでるの?」と突っ込むがピートは質問だと判断しなかったのか素知らぬ顔だ。


 報酬をもらおうと列にならび、自分の順番で話しかける。

「ファンデーションの住人でアイザックといいます。冒険者の方にファンデーションが村としてのクエストを発行した場合の報酬は私から受け取れます。よろしくお願いします」

 アイザックはNPCなので名前のアイコンと共にNPC表記がつく。


「こ、こちらこそ、よろしくアイザックさん。私は夏辺野トビラ」


「それで、報酬の受け取りで大丈夫でしょうか?」

「えぇ。拠点開発クエスト報酬をもらいにきました」

「トビラさんはクエスト成功と規定以上のお手伝いをしていただいたのでエクストラ報酬があります。武器と防具を一種類づつお渡しできます」

「防具も!」


 すべてのクエストにおいて成功条件はあるが、条件達成のみで通常の報酬しか得られる。モンスターの討伐クエストで依頼数以上の討伐したり、護衛クエストで無傷での依頼達成などで得られる報酬にエクストラ報酬がある。ただエクストラ報酬はシステムとして条件が表記されないため、条件が分かりにくい。そのためサービス開始2日目では詳細な条件不明のクエストが多く、攻略サイトの編集者を悩ましている。エクストラ報酬が得られるというのはトビラも当然しらなかったので喜んでいる。


 さらにネコ大陸は装備品はやや高めの値段に設定されている。初期に装備2つはかなり美味しい報酬である。さらに言えばネコ大陸ではプレイヤーは生産活動ができない。


「じゃあ、1つは短槍で。防具は、そうだな、どうするか」

「槍を使うのでしたら、ブーツか、革鎧がよいでしょう。ブーツでしたら速度に補正がかかるので間合いを取りやすくなります。革鎧も動きを阻害せず防御力上がりますから」

「速度と防御で言うと、まずは防御力優先にしておこう」

 トビラの理想はタンク役だし、騎乗できたら移動力に補正かけても意味ないと判断して革鎧にする。


装備選択

夏辺野トビラ

武器1:冒険者の短槍

頭部 :

胴体 :冒険者の革鎧

腕部 :

脚部 :麻布のズボン

靴等 :布製靴

アクセ:

バッグ:

所持金:1000ゴルド


「ありがとうございます」

 律儀にトビラがお礼をいうと

「いえいえ、こちらこそ。街の発展にお手伝いいただくと商店の品揃えが良くなったりもします。お互いに協力していきましょう。また、これまでの皆様のご助力で北門に門番を配属できました。門番は様々な職業へのアドバイスが可能です。色々と聞いてみて下さい」

 とアイザックさんが教えてくれる。

「そうか、聞いてみるよ。それでは、また」

「良い冒険を!」


 村といえるくらいには建物が建ってきたとはいえ、まだまだ狭いファンデーションである北門にはすぐに到着する。

 ちなみに門といっても柵がなく人がたくさん通っているから門だと分かるが、建物として門や扉があるわけではない。


 また報酬受取は大勢の人がいたが門番とおぼしき2人のところには人だかりもない。と言うか誰も質問していない。皆、素通りしていく。どうもゲームを早く進めたい人は無視するし、色々とNPC達と話す人も、門番の外見に気後れしてるのか、あまり話しかける人がいないようである。


 プレイヤーが一部のクエスト、拠点開発やファンデーションの人材を増やすようなクエストを達成していくと、様々な恩恵が与えられる。

 この門番は普通に冒険しているだけでは中々、気づかないようなヒントをくれる。外見が怖いのが良くないようだ。


 背は高くないががっしりした男性2名が柵の手前にいる。一応、見張りの役割もあるためか、外を見ている。話しかけづらい雰囲気もあって、だれも声をかけないのかもしれない。ただ、立ってるだけなのに筋肉がムキムキとかメリメリとか擬音を発しているようなマッチョマンである。


「すみません」

「冒険者の方ですな。外を探検されますか?」

「いえ、アイザックさんに門番の方にアドバイスをもらうとよいと言われてきました。私はサモナーの夏辺野トビラと言います」

「これはご丁寧に。あっしは門番のアッシ、向こうの相棒はモッフと言います。トビラ殿はサモナーということですが、もう召喚術は試されましたか?」

「いえ?まだですけど」

 トビラは門番からのアドバイスということで地理情報やモンスターの情報、ここで戦闘するとよいとか、ここではどういう敵がでてくるとか、そういった情報がもらえるのかと漠然と想像していたため、召喚術の話になるとは思っておらず、ちょっと困惑気味に答える。


「ふむ。サモナーは召喚中はMPを使います。召喚獣に食事を与えると一定時間、術者のMPの減少が止まります。回復アイテム以外も買っていかれると良いでしょう」

「召喚獣によって食事は違うものをあげる必要があるの?」

「ウルフタイプは肉食ですな。ピクシータイプは花の蜜などで、騎馬タイプは草食です」

「そうなんだ。ありがとう。ちょっと村の中でアイテムを探してみるよ」


 予定はまたしても変更になったが、初期資金で買える馬が食べそうなアイテムを探しに行くことにする。

昨日の段階ではNPCが営業している店舗などなかったが、ファンデーションが発展してきたため買い物に行くことにする。

 トビラは昨日の行動は無駄にならなかったなぁと内心で喜んでいる。


 さて、消費アイテムを販売している店舗にくる。

 店舗といってもテントの前に野菜・果物などを置いているだけで、まだまだ仮設のお店で露天とかフリーマーケットのようだ。

 露店の前にくると

「おにいさん、何か買っていくかい?おすすめはHP回復できるリンゴとMP回復できるバナナだよ。インベントリを圧迫しないポーションもあるけど高額だからオススメしないよ」

 と店員に声をかけられる。

「う〜ん。ニンジンはある?」

「おっと、あるにはあるが、ニンジンはスピードにバフがプラス3かけられるだけだよ、いいのかい?」

「とりあえず、それでいいよ。1本頂戴」

 消費アイテムでは体力魔力回復効果のあるものが売れている。そこを心配した店員に確認されるが、リアルの馬の好物は知らないためトビラはニンジンのみを買っていくことにする。


「ほいよ。スピドニンジン1本、100ゴルド」

 そう言われて、ニンジンを受け取るとシステム猫ピートが

「100ゴルド渡したよ」

 と言ってくる。支払いなどは自動で行われる仕組みになっているようだ。


「お買上げ、ありがとう。ご贔屓に」

 そう店員に声をかけられて

「また買い物するときには、どうすればよいの?移動してるかもしれないよね?」

 とトビラが聞く。回復アイテムは必要になるし、召喚獣用のアイテムは今後も必要だ。召喚と戦闘の実験が終わったら戻ってくるつもりだが、トビラがウロウロしてる間にも、村の工事は続いている。店を探して迷うことになりそうだと思って聞いてみる。


「おぉ、その時はシステム猫くんに聞いてみてくれ。俺の名前はポール・フレンチ。ポール・フレンチはどこにいるか、って聞けば分かるぞ。ちなみにGMやNPCは皆、検索機能がオンになってるから、それで分かる。プレイヤーはそいつの設定次第だな」

「へぇ、そうか。ありがとう。俺の名前は夏辺野トビラ(かべのとびら)だ。また、来るよ」


 結局、トビラは右手に短槍、左手にニンジンをもって、もと来た道を引き返す。

「ピート、アイザックさんはどっちにいる?」

「今、トビラと同じエリアにいるね。トビラから見て、左に150メートルくらいのところにいるよ」

試しに聞いてみるとトビラにとって分かりやすく教えてくれた。トビラから西とか、北とか、方角で言われたら、わかんないのよね〜と思っていたのである。


「ピート、このニンジンはどうやってインベントリにしまうんだ?」

「トビラはカバン類を持っていないから、インベントリ機能が開放されていないね」


「・・・え!あぁ!?そういえばそうだったけど」


「うん。マジで」

 システム猫ピートは気軽に答える。

 しょうがなくカバンになるものを買っていくことにする。またしても予定変更かと内心、残念に思っていたが門番2人組が見えてきたくらいの所でカバンを売っている露店を発見する。

 そこで500ゴルドのウェストポーチを買っていく。ピートに頼んでインベントリを開くと5カケル10マスの荷物が入れるようになっている。物によっては複数マスとるようだ。


「こういう絶対に必要になるものは初期装備につけてほしいよね」

 思わずブツブツ言いながら出口に向かうトビラであった。ゲームの予習で習ったことを忘れていたことは棚上げする。


 門番2人に目礼をして最初のフィールドへと一歩ふみだす。

「あれだけたくさんの人がいたのに、外へでたら誰もいなくなるのはゲームとはいえ違和感かんじるわねー」

 人がいなくなって気が緩んだのかトビラの中身の夏子の素の独り言が漏れる。


 ネコ大陸では拠点となる村やセーフエリアはプレイヤーたちに共通のサーバーとなる、モンスターとの戦闘が行われる場所は各パーティだけのマップになる。つまり今、トビラがいるエリアにはトビラしかプレイヤーはいない。

 後からトビラと同じマップに入るにはフレンド登録してるプレイヤーのみパーティリーダーの許可を得て入場可能となる。それもパーティ人数の上限である6人が限度になっている。

 こういったゲームの仕組みをMORPGとかMOと呼ぶ。


 こうしてトビラはファンデーションから出た瞬間にソロプレイヤーとして、南のフィールドである森と平地エリアに来たわけである。


 右手に槍を、左手にニンジンを握りしめて、召喚術を行使することにしたのはファンデーションをでた森の中を100メートルほど進んだ場所、すこし木々がとぎれてぽっかりとした広場、いわゆるギャップである。


「ピート、召喚術はどうやって使うの?」

「基本は頭に思い浮かべれば使えるよ。慣れない時はスキル使用をはっきりと口にだせば大丈夫」

「わかった。ありがとう」


 使用方法の確認がすむと、なんとなく林間地の真ん中にまで進み出る。そしてポーチに入れておいた。ニンジンを取り出す。

 片手に槍を強く握りしめて、前方にニンジンを掲げる。

 だれも見ていないから、何かそれっぽい呪文でも唱えようかとも思ったが恥ずかしいのでやめる。やっていれば黒歴史になっていただろうな、と思いながら『補助騎獣召喚スキルを使用する』と心のなかで宣言する。


 ピートが「召喚獣未決定につき、召喚される種族がランダムセレクトされるよ」


 すると前方に六芒星と円陣と不思議な文様が組み合わさった青白い光が浮かび上がる。


 そして周囲から黄色ぽい光の粒子が集まってくる。


 魔法陣の上でひときわ強い白い光がかがやくと、


 そこにはトビラが望んでいた馬型の召喚獣があらわれていた。

 色は明るく尻尾やたてがみは真っ白い。

 体毛はブロンドのような金色に近い色をしている。

 そして、存在を誇示するかのように高く細い声でいななく。


「っやったぁ、、、? なんか小さくない?」


「おめでとう、トビラ。シェトランドポニーの召喚に成功したよ」

 とシステムネコのピートが告げる。

「え?えっと!? ポニー?」


 トビラが召喚したのは体高60センチほどの小馬(ポニー)であった。トビラの身長は180センチあるので、太ももくらいしかない。頭を精一杯のばしてもお腹くらいだろう。

「乗れるの?」

「むりだろうね」

 ピートが質問に答える。

「・・・チェンジで」


 はたしてトビラの騎乗プレイはどうなるのか?!?

 たよりになるキャラになれるのか?!

3話は約1万文字、誤字は1万文字に1字目標なので、あれば教えてください。

また詳しく説明しますが、体色が金色、鬣などが白い馬を「月毛」と呼ぶそうです。


ここまでお読み頂き感謝します。


次は設定集になります。読み飛ばして大丈夫です。

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VRMMOで弓削師というのもかいてます。よろしくお願いします
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