#4 ウエストエンドへ
名前 一ノ瀬 龍太郎
年齢 20歳
ジョブ 無職
スキル 名刺交換(無効)
剣士 Lv 7
白魔法 Lv 2
黒魔法 Lv 3
居合抜き Lv 1
パーティ エリー(仮)
友好度 大
装備
【睦月】
【片桐さんの籠手】
【片桐さんのレザーアーマ&レザーマント】
【片桐さんのブーツ】
追加加護
武器耐久性 特 ミスリル
スキル 居合抜き
籠手との相乗効果 大
翌朝、村長に再度お礼をして村を発った。
村長は馬を一頭用意してくれた。
いたれり尽せりだ。
俺は乗馬が出来ないがエリーは得意のようだ。
エルフだしそこらへんはお手の物なのだろう。
初の乗馬はお尻が痛かったがおかげで夜中に着く予定のウエストエンドには15時には着けた。
ウエストエンドの城壁は高さが5メートル以上ある堅牢な作りだ。上には見張り用にある程度の間隔を置いて幅2メートルほどのスペースがある。
城門は南北2ヶ所だ。
俺たちは南門から街に入った。
初めて街に入るにはお金を払わないといけないらしい。いわゆる通行税だ。
1人あたり銀貨1枚
村長から旅の資金にと、銀貨20枚もらっていたのでそこから捻出した。
「街から出入りする時には必ず使うので忘れないように、クエスト中の破損等の特別な事由がない限り、再発行にはまた銀貨1枚ですのでよく覚えておいて下さい。
では、ようこそ、ウエストエンドへ。」
門番から通行手形をもらい城門をくぐる。
因みに…
銅貨100枚で銀貨1枚
銀貨100枚で金貨1枚
金貨100枚で白金貨1枚
らしいがエリーは白金貨など、見た事と言っていた。
ウエストエンドの良いランクの宿が1泊銀貨1枚らしい。
駆けだし冒険者達の安い宿はだいたい3泊できる。
そうなると物価が分からんが…ざっくり
銅貨1枚で100円
銀貨1枚で1万円
金貨1枚で100万
じゃ…白金貨は1億?
そりゃ見た事ないわな。
貴族とか王族の資産の為にある様な通貨なんだろう。
それにしても通貨税が1万円とは、なかなか物価が高いのかな?
収入が安定するまで安い宿を探して、長期宿泊で値段交渉してみるか。
片桐さんの手紙の通り、ウエストエンドの街は中世ヨーロッパの街並みだ。
500年経っているらしいがおそらく変化がないみたいだな。
本当に石畳みでレンガ造りの家が多い。
きっと地震は少ないのだろう。
何よりエリーとはここでお別れだな。
見ず知らずの俺をここまで連れてきてくれて本当に感謝だよ。
また街であったらご飯くらい一緒に行けるといいけど。
「あのさ、エリー」
「うん?どうした?」
「ここまでありがとうね。ここまで来たら後は大丈夫。自分でギルドを探してみるよ。」
「あぁ、その事なんだけど。冒険者としてやっていくのに1人で大丈夫?しばらくの間でも私と組んでみない?」
意外だった。てっきりここでお別れだと思ってたから。
「嬉しいけど…いいのかい?足手まといになるんじゃ?」
「元々パーティを組んでた時期もあったんだけど、私は人見知りで上手く馴染めなくて。
それにリュウとは上手くやっていけそうかなって。1人だとクエストも色々制限があったりでさ。
実はちょっと前から相方を探していたんだ。」
「そういう事なら、こちらよろしくお願いします、エリー。」
「私こそよろしくお願いします、リュウ。
じゃ、まずはギルドへ行ってリュウの登録からだね。」
そう言って2人でギルドへ向かう事になった。
道中、リュウは内心ホッとしていた。
とりあえずエリーがいる間に文字を学んで、1人で暮らせるくらいにはならないと。片桐さんの手紙の感じだとコツさえ掴めば読む事に困る事はなさそうだ。
書く事と物価と相場も早めに抑えておかないとな。
「さぁ、着いたわよ。ここがウエストエンドのギルド。まずは一階の窓口で新規受付ね。」
着いた所は4階建ての大きなレンガの建物だった。ちょっとした市役所みたいだ。
ギルドってこんなにデカイのか。
「こっちよ。あ!サンドラさん!ちょうど良かった。隣の彼が新規の冒険者なんだけど登録お願い。」
サンドラと呼ばれたのはエリーと同じエルフの女性だったが肌がエリーと違い褐色だった。ダークエルフってやつなのかな?何よりエリーとは違う俗にいう
【イイ女・大人のお姉さん】
の雰囲気を醸し出している。
「あら、エリー。久しぶり、ルードの森のクエストはどうだった?それに貴方が新規を連れてくるなんて珍しいわね?はじめまして、坊や。サンドラよ。」
「はじめまして、リュウです。イチノセ・リュウです、ルードの森でエリーさんに助けてもらったのが縁でここまで連れてきてもらいました。しばらくの間、エリーとコンビを組みます。」
「へぇ?エリーがコンビを
?珍しい事続きね。分かったわ、こっちよ。3番窓口までいらっしゃい、受付するわ。」
そうして銀行の窓口のようなブースまでついて行く。
「まずはこのメモリーボールに右手をかざして。」
サンドラさんは丸い水晶玉みたいなモノを出した。そこに右手をかざすと玉が淡く光り出した。
「頭の中で名前を念じて。」
「はい。」
そうすると光りがゴールドに強く輝いた。
「なるほど…ゴールドときたかい。一匹狼のエリーとペアを組むといい、坊やは特別ね。」
特別?まぁ【迷い人】だからか?
「あの…俺は実はいつの間にかルードの森の奥にいたんです。エリーには迷い人って言われてて。それにゴールドだと何かマズイんですか?」
「まぁ、【迷い人】だったの!迷い人に会ったのはこの300年で初めてよ。確かに特別ね、なるほど。
けど自分の事を無闇に迷い人って公言しないようにね。下手に奴隷商に目をつけられて誘拐されても困るわ。」
「誘拐ですか?そんなに変わった存在なんですね…俺。見つけて保護してくれたのがエリーで本当に良かった。」
「そうね、エリーに感謝しなさいよ。とりあえず出身や身分は変えておいた方がいいわね。エリーと同じエルフの里の出身でヒトとダークエルフのハーフって事にしておきましょう。そうすれば、エリーとペアを組んでも怪しまれないだろうし。」
ここはサンドラさんの言う通りにした方が良さそうだ。
「はい、恐縮です。そしてゴールドって何ですか?みんな金色に光るものじゃないんですか?」
「そうね、パーソナルカラーについても簡単に説明しておくわ。全部で10色あるの、虹の7色と銀・金・黒
よ。
黒は伝承に出てくる英雄カエサルが纏った色で彼以外は現れていないの。
なので現状は金色が最上位の色・つまり貴方のカラーは最上位って事ね。」
「潜在的ものが最上位ってことですか?」
「理解が早くて助かるわ。ざっくり言うとそうゆう事。貴方は無職だけど既に剣士と白・黒魔法を使えるわね。」
「無職….本当は違うんだけど。まぁ、そうです。」
「本来、無職は何もスキルを使えないの。それなのに既に固有スキルを3つも持ってるし、追加スキルも1つもってるのね。」
そうゆう事ね。プータローのクセに始めから色々使えたら確かに特別だな。軽いチートだわ。
「はい。譲り受けたこの武器に追加スキルがありました。」
「【居合抜き】なんて本来は剣士の上位職・剣聖の固有スキルなのよ。仮に武器に追加スキルが付与されてもそれを無職で扱えるなんて事は通常ないの。」
だんだん、無職無職って言われると腹が立ってきた、ちゃんとサラリーマンって言う職業なんだけどな。
「とりあえず何でも良いのでジョブを下さい。あまり無職って連呼されると…」
「ゴメンなさい。気を悪くさせてしまったわね、謝るわ。あまりに貴重種だったから。
そうね、剣も魔法も使えるから…とりあえず魔法剣士を名乗ってもらっていい?潜在的なモノは剣聖クラスだけど、駆けだしで剣聖を名乗ってね…魔法剣士も中級職だけど。まぁ、いいわ。」
「そんなにざっくりでいいですか?」
なんだか不安になるが、そもそも身元不明者を詐称して登録してくれるから文句は言えないか。
「未確定な事だらけだし、何か分かったらすぐきてね。そのつど修正していきましょう。
本当は修正もNGだけど、この事はエリー以外に話してはダメよ。私も内緒にしておくわ。
今日から貴方は、ヒトとエルフのハーフ魔法剣士のリュウです。
そしてこのウエストエンドギルドの新人、Gランクよおめでとう。」
「ありがとうございます。何か有ったらエリーとサンドラさんを訪ねますね。」
登録をすませ、ギルドを出た。
ホッとしたのか一気にお腹が減ってきた。
「エリー、なんだか一気に色々あって腹減ったよ。とりあえずお昼にしよう。村長さんからもらった銀貨はまだあるから何か、お腹がいっぱいになる肉料理が食べたい。」
「そうね、確かに小腹すいてきたかも。私がよく行く料理屋兼宿屋の肉料理はおいしいわよ。気軽に行けるところだから、そこにしましょうか。」
「うん。任せるよ」
「じゃ、こっちよ。メイン通りからちょっとダウンタウンよりなの。治安はいいから大丈夫よ。」
メイン通りから歩いて10分くらい、街並みも下町っぽい住宅街が多くなってきた。
メイン通りには大きい武器・防具屋や服・アクセサリー屋が多かったが、
こっちは小さい八百屋・魚屋?みたいな生活感溢れるお店が多い。
さらに少し歩くと宿街になった。
「ここよ、「渡り鳥亭」私も昔、ここによくお世話になったわ。女将さーん!こんにちは〜」
エリーが大声で扉を開けて入っていく。
ついて入っていくと店の中はまだ17時ちょっと過ぎなのにとても混んでいた。どうやら繁盛してるお店なんだろう。
奥から大声で恰幅の良い女性が出てきた。
おそらく女将さんなんだろ。
「あらーエリー!久しぶりだね。元気でやってるのかい!ちょっと混んでるけど、カウンターの席においで。ちょっとあんたたち、せっかくエリーが帰ってきたんだ。早く席を詰めなさいよ!全くここのヤロー共は気が利かないんだね!ホラどいた!
」
「女将さんったら変わらないわ。おじさまたちゴメンなさいね。ほら、リュウこっちよ。」
「あぁ。すみません失礼します。」
そういってカウンターの席に着く。
エリーに料理の注文を任せ、まず先にきた飲み物で乾杯する。見た目は赤ワインのようだが。
「まずはギルド登録お疲れ、乾杯」
「乾杯」
まずはGランクか。
ランクはGから順にAまであり、Aランクはクエストクリア数によってA・AA・AAAの3つ。
その上にSランクがあり最高ランクだ。
頂点のSランクまでは果てし無く遠いな。
エリーは現在Cランク このウエストエンドでも中堅クラスだ。顔も腕もいいし、途中で何度も他パーティから勧誘があったらしい。
本来Gランクの俺とは組む道理もないが、ここはエリーに甘えて、まずはしっかりクエストをクリアしてレベルとランクを上げていこう。
「なぁ、エリー」
「うん?何リュウ?もしかして葡萄酒飲めなかった?エールの方がよかった?」
「あ、いや美味しいよ。そうじゃなくて明日から早速クエストを受けてみたいけどいいかい?最初はどんなのがオススメだい?」
「そうねぇ、まずは街道沿いのザコキャラの片付けからじゃない? キラービーとかワーラットとか?」
まぁそんな所だよな。
「分かった。明日の朝にギルドで探してみるよ。
それとさ…しばらくの宿をどうしようかな?ここは宿屋も併設してるんだよね?値段は高いのかな?」
「ここは安くて美味しい朝ご飯が付いてるからオススメだよ。私も駆けだしの頃はよくお世話になったわ。」
「そっか、じゃここにするよ。女将さんに後でお願いしてみる。」
「それともウチにくる?」
「え?いいの?」
「あまり広くはないけど、部屋が1つ余ってるし?」
エリーと一緒に住めて宿代も浮かせられて、いい事づくしだけど、さすがに甘え過ぎな気がする。
「うん、嬉しいけど、まずは何日かここにお世話になってみるよ。」
「そう?遠慮しなくていいのに。まぁ分かったわ。明日の朝に迎えにくるわ。」
やりとりが終わったら女将さんが割って入ってきた。
「おやおや、すっかり仲がいいんだね。はい、おまたせ、たっぷり食べていきな。」
リクエスト通りに美味しそうな肉料理が並んでいる。
「女将さん、部屋が空いていたら何日か泊めてもらってもいいですか?シーツは自分で交換するので、4〜5日で銀貨3枚でどうですか?」
「もちろんだよ!銀貨3枚とはちょっと多いくらいだ。特別に洗濯物もサービスしてあげるよ!カゴを用意しておくから朝にカゴに入れておけばクエストに行ってる間に洗ってあげるよ。」
「ありがとうございます、これで宿の心配がなくなったから腹一杯食べられる、いただきま〜す!」
これは、美味しい!ちょうど男が好きな少し味付けが濃い目で食事が進む。これは朝ご飯も期待できそうだ。
こうして、ウエストエンドに辿り着いて冒険者の登録を済ませ無事に宿も確保して今夜はベッドでぐっすり眠れたリュウであった。