#2 エリーと野宿
エリーが魔法で火をおこして焚き火を挟んで向かい合う。これは簡単な生活魔法の1つらしい。
焚き火で何かの動物の肉を焼いてくれている。
先ほどの泉で飲み水は確保しておいたので、これで飢えることはない。
パチパチと木が燃える音と肉がジューッと焼けていく音。
エリーがその間に色々と教えてくれた。
幸いな事に聞くだけなら言葉を理解できたし、言語体系も大きく違うことはないようだ。一部の種族は独自の言葉を話すようだが、数は極めて少ないらしい。
この世界は人とエルフと魔族とドワーフが主な種類で多少のイザコザはあるが今は比較的に互いの仲は良好な事。
それぞれ、同じ種族で国を形成している所もあれば混在して国を成している所とバラバラのようだ。
この森はルードの森と言う名で大陸の西の端にある大きな森のようだ。
主にエルフと魔族がメインの国ウエストエンドに属するようだ。
ウエストエンドは大陸の中でも大きな国のようでお城を囲むように城下町があり城壁もあるようだ。商業が活発で中央への物流の要所として栄えていて、冒険者ギルドもあるらしい。
魔法はあるわ、エルフはいるわ、魔族にドワーフ…。
もうよくあるラノベの転移モノの世界だな。
前に職場の後輩が話してたのをなんとなく聞いて知ってはいたが。
たしか主人公は転移するときに神様的な存在から、なんかの特殊能力、チート?をもらえるのが多いんだっけ?
けど俺は着の身着のままだし、何にももらってないんだよな、もしかして他にも誰か転移しててそいつが主人公キャラなのか?俺は外れクジのヤツか?
エリーはこのウエストエンドのギルドから依頼を受けてこのルードの森に来ていたのだった。
「まぁクエストも無事片付けたし、あとは帰るだけだったんだけどね。あのキラーマンティスさえいなければ。」
「キラーマンティス?」
「あぁ、あの大カマキリよ。最近この森に急に増えてギルドも討伐クエストを出しているんだけどCランクのモンスターだしそれなりに手強いのよ。」
あの化け物カマキリ、キラーマンティスっていうのか
…。それにCランクって?
全く何から何まで分からない事だらけだな。
元の世界に戻りたいけど、帰る手段を見つけない限りはどうやら難しそうか…。
とにかく今はこのエリーについていって、近所の村かウエストエンドの城下町まで連れていってもらわないと。
色々考えているとお腹が空いてきた。
どうやらエリーが捕まえてきたのは野ウサギのようだった。味は鶏肉にやや近いが臭いはケモノ臭がする。
元の世界ならジビエ料理とかいうのだろうが、そんな事言ってられない。
野ウサギの肉を食べたあとは交代で火の番と周りの見張りをしながら朝を迎えた。
幸運な事にモンスターの襲撃はなかった。
翌日
「おはよ、今日は森を抜けて近くの村まで行こうか。
そこで一泊して次の朝にウエストエンドまで帰りましょ。」
「え?俺をウエストエンドの街まで連れていってくれるの?」
「もちろんよ、村には何もないし。
とりあえず仕事を見つけるなら私みたくギルドに登録するといいわ。まずはウエストエンドまでね。」
森を抜けるのには朝から歩いて5時間くらいかかった。
なぜ時間が分かったかというと身につけていた腕時計がきちんと動いてくれていたからだ。
ソーラー電池だからバッテリーの心配はないけど、いつまで持つやら。
エリーは腕時計を見たことがないらしくとても不思議そうに見ていた。
腕時計も見たことないとは…。
一晩たって起きたら夢でした!
とはいかず、いよいよ剣と魔法のラノベの世界確定だな。
森を出る頃には13時をまわっていた。本当に大きな森のようだ。エリーがいなかったら確実に森で死んでたな。
少し時間がかかったのは、3度モンスターに遭遇していたからだ。
たしかにこのペースではさらに先にある、ウエストエンドの街には今日中に着きそうもない。
エリーから借りた武器のおかげで、3度とも自分1人で片付けられた。
もっとも昨日の化け物カマキリじゃなく小さい野良狼ばかりだ。
学生時代は剣道とサッカーをやっていたし社会人になってもランニングで最低限体力は維持できていたようだ。
剣道のおかげで使った事もないショートソードだったが、意外と使いこなせていた。
これにはエリーも驚いたようで
「リュウは剣士のスキルがあるのね。なかなかイイ腕だわ。」
と言っていた。
ちなみに龍太郎は長くて言いにくいようで、リュウと呼ばれるようになったので、こっちではリュウで通す事にした。
元々アダ名がリュウだったので違和感はない。
何処かで苗字が必要な場合だけフルネームで名乗るが普段はリュウでいい。
森を出る頃には戦闘のせいで少し体力も増えているような気がした。
ステータスって唱えたら、半透明のウインドとか出てくるのかな?と内心冗談半分で唱えたらみたら…ホントに出た
。ブンッっと小さい音のあとに
手のひらにタブレットくらいのサイズで浮かびあがった。
名前 一ノ瀬 龍太郎
年齢 20歳
ジョブ 無職
スキル 名刺交換(無効)
剣士 Lv 7
白魔法 Lv 1
黒魔法 Lv 1
パーティ エリー(仮)
友好度 大
15歳も若返っているのは嬉しいが無職って無職じゃねぇよ!
スキルの名刺交換も(無効)って元の世界では大事な必要なスキルなの!
そのかわり、剣士とレベル1とはいえ白と黒魔法が使えるようだ。
割とバランス型なのかもしれない。
それともこの世界の人からからすると当たり前なのかもしれない。
試しに白魔法を、回復ってケ●ルじゃまずいか…。
うん?ステータスにキュアってあるな。これか?
キュア!!
すると龍太郎の体が淡く輝いて体力が回復した。
おー!すげぇ!回復したよ。
じゃ黒魔法は火炎!
指先から炎が出た。
これでザコキャラも焚き火も一発で起こせるな。
そのほか冷気雷の3つ使えるようだ。
キュアとフレイムを使うとちょっと疲れが出た。
これがRPGで言うところのMP消費というやつだろう。
そのかわり、
キュアとフレイムの白・黒魔法のレベルが1から2へ上がった。念のためブリザードとサンダーも一発ずつ唱えてレベル3がになった。
低レベルだと最初はすぐ上がるのかな?そのくらいにしか思ってなかったがエリーに聞くとそんな事はないようだ。
どうやらレベルが上がりやすいのと、白と黒魔法を両方使えるのは珍しいようだ。
やはりバランス型のようだ。
ちなみにエリーのジョブは狩人だ。
彼女は黒魔法を、使えないらしい。いくら勉強しても白魔法のキュアがレベル1どまりだ。
魔法だけなら早くもエリーよりできるみたく、羨ましがられた。