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 息を切らして大学の敷地内を先倉さざなみが駆けてくる。その恋人である支川航太は、彼女の様子を不思議に思う。

「どうしたんだ? そんなに慌てて……」

「ま、まだ知らないの?! 私のところまで情報が回ってきたのが、ついさっきだからこっちも知らなかったんだけどさ……!」

「七見と、上高地くんが自殺したって――心中自殺だって!!」

 悲壮な顔で言う七見だったが、航太の顔色はイマイチ動かなかった。驚愕や悲壮感はとても感じられない。どこかウンザリとした表情になった。

「流石にそれは酷過ぎだな……病気もそこまで来ると行き過ぎだろ」

「えぇ?! 何言ってるの? だから、二人とも死んだって――」

 ふう、と航太は溜息を吐く。

「なあ、自殺したっていうけれど、葬式はいつなんだよ?」

「それはまだ日取りが決まってな、」

「で、自殺した日付は?」

「一昨日……」

「俺、昨日、浩平と会ったぞ。それに、アイツは昔から虚言癖というか、現実と妄想の区別が付かないところがあってさ」

「え……意味がわからない。何でそんな嘘を吐くの?」

「え?」


「それは航くんが思い込んでいるだけで、ホントは何が起こっているのか、把握できていないだけなんじゃないの? 私の親友と、私の親友の恋人を、根拠もなく疑わないで」


「……………………」

 浩平と七見のおかげで、信頼を今ここで失いつつある航太は、かなり胸が痛んだようだが、それから数十秒後、「根拠ならあるよ」と言った。

 航太は、さざなみの背後をただ指差す。

 恐る恐る、さざなみがそちらを振り返るとそこには――




 ――間の抜けた顔で通学する、上高地浩平の姿があった。

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