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「――なんてことなの」

 上池白樺は、その電話を受けてからその場に崩折れた。

 彼女は上高地浩平の母親の姉、浩平から見ると伯母の間柄になる女性である。

 現在、白樺は上池雄大という名前の男性と結婚しており、上高地家に婿を迎えた妹とは苗字が変わっている。

 最近、上高地家自体と疎遠になっていたとはいえ、その甥と姪に関するニュースはあまりにもショッキングだった。ショッキング過ぎて、何かの間違いであればいいと思うくらいだ。嘘か誤報か何かであってくれたらいいのに……。

 自殺した。妹の娘と息子、上高地七見と上高地浩平が心中自殺した…………。

(私は、一体どうしたらいいんだろう……)

 あの姉弟の死に際して、どんな感情を抱けばいいんだろう。

 あの二人は、ずっとおかしかったけれど、それでも――死んでしまうとは。なんてことだ。そうなってしまうほどに、あの二人の病気は進んでしまったのだろうか。あんな姉弟で好き合うような、異常性は。

 もっと実質的な、葬式の準備とかそういったコトを考えるべきなのは当然、白樺も分かっている。

 しかし、全然、気持ちがそういった事務的な方面に動かない。

 全ての感情がごちゃ混ぜになったように、混乱していた。

 それにしても。

 それにしても、私の妹の上高地荊棘かみこうち・いばらはあんな声だったっけ?

 それすらもわからないくらいに、私は薄情なのかしら……人間としての感情に欠けているのかしら?

 そんな風に白樺は、自分の人間性についてすら悩み始めた。

 白樺は悩みも暇も多い、専業主婦の四十代だった。

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