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第五話 第三者からすればラッキーな光景かもしれないが、関わった者からすればアンラッキーな状況だからな

酒を飲んで妙なテンションで書いた結果がこれである(;´・ω・)




 しばらくして、通り過ぎた川辺へと到着する。


 ここは特に用が無かったから通り過ぎたけど、また戻ってくることになろうとは


 左には俺の身長の倍近くの高さのある落差があって、川の水がその落差から流れ落ちて小さな滝を作っており、その下では大きな滝壺が出来て溢れた水が川となっている。


「水は綺麗、だな」


 近くまで来て汚れていないかを確認してから、腰の弾帯に提げている水筒を手にして蓋を開け、川に水筒を浸けて水を少し入れ、一口飲む。


「冷たいし、うまいな」


 特に問題は無いな


 呟いてから水筒を再度川に浸けて水を満タンに入れて蓋をし、弾帯に提げて立ち上がる


「……」


 ふと鼻にツンと来る臭いがして、俺は迷彩服3型の袖を鼻に近づける。


「……気にすると、結構臭うな」


 そういや汗だくになっても、ずぶ濡れになっても、泥まみれになっても、最初に私服から着替えてから一度も替えてないな。そりゃ臭うわな


 別に気にすることはないかもしれないが、さすがにここまで臭うとなると……



 ――――――――――――――――――――――――――――――――



「ふぃ~」


 俺は岸に近い滝壺に浸かり、深くゆっくりと息を吐き出す。


「これで温かったら最高なんだけどな」


 一応野外入浴セットはあるのでそれ使えばいいじゃんと思うだろうが、地形的に設置が出来ないんだよ。設置できる場所があっても距離が開くから水溜めに往復するのはゴメンだ。


 両手で水を掬って顔を洗い、身体に付いた汚れを落としていく。


「……」


 ふと自分の身体が目に入り、転生前よりも筋肉が付いているように見えた。


(やっぱり外見は前世通り鍛えれば筋肉質、怠れば肥満体になるのかねぇ)


 前世とは全く違う身体なので未知数だが、少なくとも外見の変化は同じと考えても良い、のか?


(まぁ、それは追々確かめれば良いか)


 まだまだ分からない事だらけだ。時間を掛けて一つ一つ確かめればいい



 少しして水場から上がって俺は召喚したタオルで身体を拭き、新しい下着に迷彩服3型を身に纏って装備品を付けていく。


「ふぅ、すっきりした」


 呟きながら背伸びをして浅く息を吐く。


 なんだかさっきより楽になった気がする。


「さてと、また同じ道へと戻りますか」


 二脚を立てて置いている89式小銃を手にして二脚を畳み、スリングに腕を通して右肩に背負い、踵を返して歩き出す。




「っ!」


 足を踏み出した直後に俺の脳裏に何かが過ぎり、俺は本能に従って前へと飛び出し、茂みに隠れる。


「……」


 俺はすぐに背負っている89式小銃を手にして銃口を茂みの隙間から向こう側に向け、ホロサイトを起動させて覗き込む。

 


 すると俺の居る場所から対岸の茂みから葉っぱ同志の擦れる音がして、グリップから手を離して右側のセレクターを(単射)に向けてグリップを握り直す。


(ここに来て、まだ来るか)


 せっかくスッキリとしたって言うのに


 内心で文句を呟きつつ、音が段々近づいて来てトリガーガードに掛けていた指をトリガーに近付け、いつでも撃てるようにする。



「……っ!」


 そして茂みから何かが出てきて俺はトリガーに指をかけようとしたが、とっさに引っ込める。


 茂みから出てきたのは度々襲い掛かってきたゴブリン等の魔物ではなく、……一人の少女だった。


(あっぶねぇ!)


 俺は呼吸を整えつつ気持ちを落ち着かせ、とっさに89式小銃の銃口を明後日の方向に向ける。


 一歩間違えたら異世界で初めて出会った人間を殺しかねなかった。


(いかんな。このままだと、やらかしかねぇ)


 俺は最悪の事態を想像して血の気が引く。


「……」


 気持ちを落ち着かせてから茂みの隙間から向こう側を見ると、川には先ほど茂みから出てきた少女が川に近付いてその場にしゃがんで両手を水で洗っている。


 空を覆う木々の隙間から差し込む日の光に反射している銀髪を背中に掛かるぐらいの長さまで伸ばしており、サファイアの様な透き通った蒼い瞳をしている美少女で、スタイルはかなり良く、どこかは言わんが服の下から自己主張の激しい部位が目を引く。

 傍に置いている篭手や胸当てと言った防具や鞘に納まった剣がある辺り騎士であるようだ。


(どこかの組織に所属している騎士みたいだな)


 少女の胸当てにはどこかの騎士団に所属している事を示すシンボルマークが描かれている。


 騎士団に所属していると言う事はどこかに拠点を設けているはずだから、どうにか少女と接触して付いて行く事が出来れば森をおさらばして町に行く事ができる。


 だが、少しちょっとした問題が……


(さて、どうしたもんかねぇ)


 今動くと確実にこちらの存在がばれるだろう。まぁ別に隠れる理由が無いのでばれても良いんだが、余計な誤解を持たれてしまうのは何か嫌だな。


(それに、どうにかして会話へと持ち込めないものか)


 ようやくこの世界で初めて人間と会えたのだ。出来れば話をして町に案内してもらいたい。


 と言っても突然現れるとなると警戒されるのはまず確実だろう。そこからどう会話に持ち込むか。




「っ!?」


 どうするかと考えて前を見て、目の前で起こっている状況に俺は思わず下を向く。


「……」


 しかし顔を下げた俺だが、顔を上げたい衝動に駆られて細かく震えている。


 ここで顔を上げちゃいけないのは分かっている。分かっているのだが、男の本能がそれを押し退けようとする。


「……」


 遂に誘惑に負けて、恐らく赤くなっているであろう顔を上げて茂みの向こうを見ると、そこでは身に纏っていた衣服を脱いで水浴びをしている少女の姿があった。


(何でよりによってここで水浴びなんかしてんの!?)


 いよいよ出ることはおろか、ばれるわけに行かなくなった。


(さっさと離れてりゃ良かった)


 まぁ第三者から見ればラッキーな光景だろうが、当事者から見ればラッキーであってアンラッキーな状況だ


 ここで見つかったら変態か犯罪者の烙印を押され、色んな意味でオワタな状態になるのは確実だ。そんな事になれば話をする以前の大問題だ


 と思いつつ、すぐに移動しなかったことに後悔しながらも水浴びをしている少女を見ている俺が居る……


 いや、俺もこっそり覗いているのは悪いと思っているけど、視線を外そうにも外せないんだ。


 考えて見てくれ。目の前には一糸纏わぬスタイル抜群の美少女が水浴びをしているんだぞ?しかも木々の隙間から差し込む日の光が水面や少女の綺麗な身体に付着した水滴に反射して宝石の様に輝いているだぞ?

 こんな幻想的で美しい光景を目の前にして、紳士的に視線を逸らそうと思ってもそれを実行できる男はアッチ系じゃ無い限り無理だろ。


 って、何言ってんだよ俺は……


(ヤバイ。色んな意味でヤバイ)


 まぁ紳士諸君にはどういう意味が含んでいるかは察してくれ……



(……でも)


 見ちゃいけないのに、俺は少女から目を離せなかった。


(綺麗だ……)


 銀髪は水に濡れて光沢を放ち、誰もが美少女と答えるぐらいに整った顔立ちをし、出ているところは出て引っ込んでいる所は引っ込んでいると言うバランスの取れたスタイルを持つ美少女が水浴びをしている。ある意味芸術的な光景だ。


 現実ではなく絵画なら、見惚れてずっと見ていたかも知れない。

 まぁ現実だから相当やばいんだけど……


 一応言っておくが、下心があってじゃないぞ?


(あぁもう……マジで何やってんだよ) 


 何とも言えない気持ちになって俺は顔を下げる。



 ガサガサッ



「っ!?」

「っ!?誰!?」


 少し時間が経ったその時、大きく茂みが揺れて俺は驚き、同時に少女も驚き、声を上げる。


(あぁ、終わった……)


 俺は顔を下げたまま絶望に包まれる。


 このまま見つかって変態と言う烙印を押された犯罪者と言う扱いなんだろうな。まぁ、いくら弁明しても覗いて居た事に変わりは無い。


(あぁ、俺の二度目の人生はこんな形で終わるのか。なんか死ぬより嫌だな)


 今後起きるであろう事が脳裏に過ぎり、気持ちがどんどん沈んでいく。


 すると俺の耳に金属の物を引き抜くような音が届く。


(し、死んだ振り、死んだ振り)


 悪足掻きと言わんばかりに俺はその姿勢のまま固まり、内心で念仏の様に唱える。


(す、少なくとも迷彩柄で至近距離じゃない限りばれないはずだ。このまま動かなければばれないかもしれない!)


 祈っても無駄なだけかもしれないが、それでも人間と言うのは祈ってしまうものだ。

 って、何で俺こんなに逃れようとしているんだか……




 すると何かが上を通り過ぎ、木の上を登っていく。


「……?」


 その後に猿の様な短い泣き声が上の方からする。


「……猿?」


 すると向こうで少女の声がして、水を踏む足音が途絶える。


「……」


 気配を消したつもりで俺は息を殺して固まり、目を強く瞑る。



 それから何分経ったか分からないが、滝の流れ落ちる音以外に聞こえる音は無かった。


「……」


 俺はゆっくりと顔を上げて茂みの隙間から前方を覗くも、そこには何もいなかった。



 状況の変化が無いか少し待ってみたが、何も変化は起きる事はなかった。


「……は、はぁぁぁ」


 緊張が解けてか無意識の内にゆっくり深く息を吐き、寝返りをして仰向けになる。


(あ、危なかった)


 顔に手を当てながら安堵の息を吐く。


 良かった。何とか最悪な展開を回避できた。


「……ありがとうよ」


 もうとっくにどこかに行ったであろう猿、なのかどうか分からないが先ほどの生き物に礼を言う。


 身体を半身起こしてため息を付き、ある事に気付く。


「全身びっしょりだな」


 さっきまで冷や汗を掻きまくったせいか、まるで水を被ったみたいに戦闘服の前面が濡れている。


「せっかく変えたばかりだっていうのに」


 まぁ、これでもしばらくは持つだろうが。


「はぁ、もうあんな経験はこりごりだ」


 今度あったら冗談抜きで胃に穴が開きかねない。


 そう呟きつつ立ち上がろうと膝に手を置く。




「っ!?」

「きゃっ!」


 突然背中から何かにぶつけられ、同時に短い悲鳴が聞こえると俺は前へと放り出される。


「いっ!?」


 そのまま前のめりに倒れて顔面を強打する。


「い、いってぇ……」


 鼻を押さえながら俺はすぐに起き上がる。


「一体なん――――」


 が、視界に映ったものを見て俺は言葉を失う。



「ぅ……」


 目の前には物凄い体勢で倒れている、さっきの少女がいた。


 どういう体勢かって言うと……年頃の女の子がするにはとても恥ずかしい状態だと言っておこう。

 あと彼女の名誉的に言っておくが、一応見えてはいない。が、ちょっとでも動けば見えそう……


(え……な、なんで、戻ってきたの?)


 彼女の体勢よりもなぜ彼女がこっちに向かってきたかが分からなかった。


(ま、まさか……)


 もしかして、ばれて、た?


「……」


 マズイ状況に頭の中がこんがらがって固まっていると、少女がとっさに起き上がる。その際見えたとは言わんぞ


「……」


 少女は周りを見渡し後ろを振り返ると「あっ」と声を漏らして俺を見つける。


「……」


 さっきまでの体勢を思い出してか少女は顔を赤くして睨み付ける。


「……」


 俺は頭の中が真っ白になって、固まるしかなかった。






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