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第四話 トレーニングモード




「はぁぁぁぁ……」


 深いため息を付いて岩に腰掛け、テッパチの顎紐を解いて外して傍に置き、テッパチで押さえつけられ汗でのっぺりとした髪を掻き解く。


「まさかここまで全然人に会わないとか、本当に参るなぁ」


 呟きながら水筒を手にして蓋を開け、入っている水を口いっぱいに含んで飲み込む。


 転生して一週間近くが過ぎているが、今も尚森の中をずっと彷徨い続けている。


「しかもこんなに森が広いとはな。ロシアも驚きの広さじゃね?」


 まぁどのくらい広いのかは分からんが、少なくとも日本にあったどの森林よりも広いのは確実だと思う。


 そしてここまで広いとなると、色々と大変だった。


 まず魔物に多く出くわすわで小銃や拳銃、新しく出した汎用機関銃、対戦車兵器を使って何とか乗り切った。こんな時に乗り物があったらどれだけ楽だったか。まぁ現時点のレベルじゃまだ使えないので無い物を強請ってもしょうがない。

 まぁ襲い掛かってくる魔物を大量に倒したお陰でレベルは一気に15まで上がり、戦闘スキルにも磨きが掛かって特別ポイントも1260ptと溜まったので決して無駄と言うわけじゃない、はず


 それに追い討ちを掛けるかのように水のカーテンの如くの土砂降りに遭ったり、それによって出来た泥沼に足を取られて倒れたりと、中々森を進む事が出来なかった。

 その上、勘頼りで出鱈目にあっちこっち歩いたのであんまり進んだ気がしない。正直にコンパス使って方位を確認しながら進めば良かった。


 しかもそんな苦労があった間に人はおろか、コミュニケーションの取れる生物にすら出会えず、どれも獰猛な魔物ばかりだった。


「こんなに人に会えないものなのか?」


 まぁ森の中だから少ないかもしれないけどさ、村や集落ぐらいあってもよくない?

 本当に人間に会えないまま二度目の人生が終わりそう……


 俺はボソッと呟きながらメニュー画面を開き、武器項目からお目当てのやつを探す。


 小銃の項目から俺は『64式7.62mm小銃』を選択する。


 日本が戦後になって初めて設計開発した国産自動小銃で、通常より炸薬が少ない弱装弾仕様の7.62×51mmNATO弾を用いる。後継の89式小銃が採用されてからも未だに一部部隊では現役を勤める結構息の長い小銃である。


 俺がなぜ64式小銃を選んだのはセミオート式の狙撃銃として使うからだ。


 対人狙撃銃ことM24はボルトアクションで精度は文句ないだろう。だが、排莢と装填を手動で行うボルトアクションは余程慣れてない限り連射が効かないので大勢を相手にするには向いていない。セミオート式狙撃銃なら日本を含む各国の特殊部隊御用達のPSG1がいいだろうが、セミオート限定な上に重いと軍用向きじゃないので色々と不便だ。なら海上自衛隊特別警備隊で使われている軍用PSG1ことMSG90がいいんだろうが、さっきも言ったがセミオート限定では色々と不便なので今回は見送る。

 まぁセミオート狙撃銃が必要というより、どちらかと言えばマークスマンライフルが必要だな。


 しかし64式小銃はそのままだと色々と問題があるので使いづらいだろう。なので、魔改造を施す。


 改造内容だが、スコープマウントを追加して対人狙撃銃ことM24のやつと同じ高倍率のスコープを乗せてサプレッサーを着脱できるように消炎制退器を含めて銃身先端を加工し、二脚は何段階にも調整が出来るように変更して銃床に頬当てを取り付けると言った、いくつかを『64式狙撃銃』とほぼ同じ仕様にする。次に脱落防止を含めた各所パーツの強度を上げて高精度バレルへと変えて射撃精度を上げる。後は内部のパーツの強度と耐熱性を上げる。まぁこんな所か

 続けて弾薬だが、弱装弾から通常仕様の7.62×51mmNATO弾へと変更した。出来れば狙撃に最適な弾薬にしたかったけど、さすがに機構的に無理があるので諦めた。


 あとついでに今後使うであろうM24にもポイントと交換したカスタムパーツを加えた改造を行う。

 まずインナーボックスマガジンからデタッチャブルボックスマガジンに変更し、弾薬も7.62×51mmNATO弾から狙撃に最適な.338ラプア・マグナム弾に変更し、それに伴い内部機構の変更とパーツの強度、耐熱性を向上させた。


「まぁこんなものだろう」


 俺は改造を行った両銃を確認して、腕時計の時間を確認しながら俺はその二つの銃の試験の為にトレーニングモードを起動する。


 すると俺の視界が真っ白に包まれる。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「……」


 俺が目を覚ますと、真っ白な空間に射撃場の様な場所があった。


 トレーニングモードは訓練内容によって空間内のレイアウトが異なり、射撃訓練や銃の試験ならこのように射撃場の様なレイアウトが現れる。


 俺の目の前にある台には改造された64式狙撃銃とM24(カスタム)がバイポッドを立てられて置かれており、俺は64式狙撃銃の方を手にする。


 7.62×51mmNATO弾が収められている20発入りマガジンを手にして64式狙撃銃の本体下部にある挿入口にマガジンの前端を引っ掛けながら挿し込み、本体上部にあるコッキングハンドルを引いて薬室に初弾を送り込む。


「……」


 64式狙撃銃のグリップを持ち、スコープ前後のレンズの蓋を開けて覗き込み、見やすくするようにスコープの調整を行う。


 ある程度見やすくなったところで頬当てに頬を当ててスコープを覗き、レティクルに的を捉える。


「……」


 呼吸をなるべく小さくゆっくりとして振動を抑え込み、トリガーガードに置いている指をトリガーに掛ける。


「……」


 狙いが定まり、ゆっくりとトリガーを引き絞る。



 ―ッ!!



 銃声と共に7.62×51mmNATO弾がマズルフラッシュの後に銃口から放たれ、5.56mm弾よりも強い衝撃がストックを通して俺の右肩に伝わる。


 スコープ越しに見る視線の先では、的の中央より右にずれて弾が撃ち抜かれ、その直後に排出された空薬莢が響き良い高い音を立てて床に落ちる。


(少しずれたか)


 スコープを覗きながら倍率とレティクルを調整し、再度狙いを付けてトリガーを引き、先ほどより的の中央に寄るが僅かにずれる。


「……」


 その後もスコープを調整しては射撃を行い、スコープの調整を行うと同時に狙撃の腕を鍛える。



 スコープの調整も終わったので64式狙撃銃を離れた場所に買ポッドを展開して置き、空になったマガジンを引き抜いてコッキングハンドルを引いて薬室に弾が残ってないのを確認して安全装置を掛けてスコープのレンズの蓋を閉じ、次にM24(カスタム)を手にする。


 ボルトハンドルを上に上げて溝から外し、後ろに引っ張ってから.338ラプア・マグナム弾が20発入りのマガジンを挿し込み、ボルトを押し込んでボルトハンドルを下ろして溝に嵌める。


「……」


 スコープ自体は64式狙撃銃と同じだが、銃自体の癖は大きく違うので、ある程度64式狙撃銃のスコープとほぼ同じ調整にしてそこからM24(カスタム)向けの微調整を施せばいい。


 スコープのレンズを覆う蓋を外して安全装置を外し、射撃を行うまではトリガープルの軽いトリガーに指を近づけず、トリガーガードに指を掛けておく。


「……」


 狙いを定め、トリガーに指を近付け、少しの力で引く。



 ―ッ!!



 銃声と共に7.62×51mmNATO弾よりも強力な.338ラプア・マグナム弾が放たれ、的の中央より左に少しずれて命中する。


「やっぱりボルトアクションとセミオートとじゃ癖が違うか」


 当たり前だが、こんなにも違うとは……


 内心で呟きながらボルトハンドルを上げて後ろに引っ張り、空薬莢を排出して床に落ちて甲高い音が響くのを聞きながらボルトを押し込み、ボルトハンドルを溝に嵌める。


「……」


 スコープの倍率とレティクルの調整をして再度覗き込み、狙いを定めてトリガーを引き、銃声と共に放たれた弾は先ほどより中央寄りに命中するも、ど真ん中とまではいかなかった。



 その後は微調整を繰り返しては射撃を行い、更に狙撃の腕を上げていく。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 それからどのくらい時間が経過しただろうか。


 一応この空間内でもどのくらいの時間が経過しているかはメニュー画面を見れば分かるのだが、それを確認しないまま俺は訓練に明け暮れている。


 89式小銃用照準補助具ことドットサイトから取り替えたEOTech551と呼ばれるホロサイトの照準を合わせて89式小銃のトリガーを間隔を空けて引き、放たれた弾は的に穴を空けていくと最後の一発が放たれてボルトが最後まで後退して止まる。


 空になったマガジンをマガジンキャッチャーを押して落とし、台に置いているマガジンを手にして挿入口に挿し込み、ホールドオープンしたボルトのロックを外して射撃を再開する。


 ある程度撃ったら89式小銃を手放してスリングに吊るし、右太股にあるレッグホルスターよりUSPを抜き出して射撃を行う。


 トリガーを連続して引いては弾が放たれ続け、的を蜂の巣にして18発目が放たれるとスライドが一番後ろまで下がって固定される。


 マガジンキャッチャーを押して空になったマガジンを排出し、素早くハンドガン用のマガジンポーチからマガジンを取り出してグリップに挿し込み、スライドの後ろを持って引っ張り、ロックを外してスライドを戻すと再度射撃を行う。


 マガジン4つ分の射撃を行った後新しいマガジンを差し込んで素早く安全装置を掛けてレッグホルスターに戻し、スリングで吊るしていた89式小銃を手にしてマガジンキャッチャーを押してマガジンを落とし、新しいマガジンを差し込んで射撃を再開する。




 ただひたすらに89式小銃やUSPを持って射撃を続け、気付けば足元にはマガジンや空薬莢が転がり山を作っていた。


「……さ、さすがに、疲れた」


 俺は89式小銃をバイポッドを展開して台に置き、少し離れた場所に座り込み、両手にしているグローブを外して仰向けに倒れる。


「……」


 メニュー画面を開いて時間を確認すると、いつのまにか八ヶ月近く経過しようとしている。


(もうそんなに撃っていたのかよ)


 ほぼ休憩なしで八ヶ月間撃ち続けていたのかよ。現実なら確実に死んでいるな。


 ちなみに序盤は64式狙撃銃とM24(カスタム)による狙撃をありとあらゆる状況と天候で行い、狙撃の腕を上げた。


 中盤はナイフやある武器、89式小銃に銃剣を取り付けてデコイ相手に格闘戦法をひたすら学び、実践した。


 終盤は先ほどやっていた89式小銃とUSPによってひたすら射撃を行った。


(やはり、このトレーニングモードは歯止めが効き辛い)


 現実なら疲労を感じて止められるが、この空間内じゃ疲労を感じにくく止めるタイミングが分からなくなる。


 それなのに疲労は現実でもある程度現れるので、計画を練って考えてやらないと後々つらい目に遭うな。


「はぁ……」


 深いため息を付き、メニュー画面からトレーニングモードを終了させると、辺りが真っ白に包まれる。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「ん……」


 一瞬の間に真っ白だった空間が、さっきまでの森林の景色へと戻っていた。

 同時にずっしりと身体に重りが乗ったかのように疲労が襲い掛かる。


(この瞬間は慣れんな)


 内心で呟きながら腕時計を確認すると、トレーニングモード開始前から時間は対して変化は無く、秒針が少し進んでいるぐらいだ。


(ホント○神と○の部屋だな)


 正確にはちょっと違うけど、似たようなもんだよな


 苦笑いを浮かべながらメニュー画面を閉じ、傍に置いた水筒を口にする。



「ん?」


 しかし水筒を傾けても水は少ししか口に入ってこなかった。


 水を飲み込んで水筒の口を下にして何度も上下に振るうも数滴しか落ちてこなかった。


「もう無くなったのか」


 水の綺麗な川で補充したばかりなのに。まぁ最近水を飲む機会が多かったけど


「近くにある川って、少し戻った所しかないよな」


 先に進めば水場があるかもしれないが、全く地理が分からないのに勘だけで進んだら痛い目に遭うのは目に見えている。仮にあってもそこの水が飲めるとは限らない。

 だから、確実にある場所に戻ってでも水は確保しなければならない。しばらく何も食べなくても多少無理は利くが、水ばかりは飲まないとそう長く持たない


「仕方無い」


 水筒の蓋を閉めて近場で水辺があるところを思い出しながら弾帯に提げ、テッパチを被って顎紐を締めてから89式小銃を手にして腕にスリングを通して背負い、元来た道へと戻る。




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