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第四十二話 慣れたくないものだ、この状況にな




「……」


 男ことリードは愛用の斧を手にしていたが、未知なる恐怖に身体を震わせていた。



 その日は多くの収穫があって、潜伏先の廃鉱で仲間達と騒いでいた。 


 商隊を襲っているはずの連中が戻ってこなかったが、この時はまだ帰りが遅くなっているのだろうとしか思っていなかった。


 だが、突如として大きな音が洞窟に響き渡った。


 そしてそこからは仲間達の断末魔と共に聞いたことの無い音が次々と起こった。


 いや、正確に言えば似たような音を前にも聞いた事がある。


 その時は彼の父親を捕らえた冒険者を殺しに村を襲撃し、父親の仇を取った。だがそこで大きな音が何度もして仲間が数人殺された。


 その時の音と似ていたのだ。



 リードは逃げようとしていたが、場所が洞窟の奥であり、逃げようにも抜け道がなかった。


 それに仲間が戦っているのに頭の自分が逃げるわけにはいかなかった。


 だから彼は覚悟を決めて、奥で侵入者を迎え撃つ事にした。



 そして近くで大きな音がして仲間の断末魔がして、リードは斧の柄を持つ手の力を入れる。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 エレナに山賊を任せて俺は奥へと進むと、山賊二人が俺の行く手を阻むも、俺は慌てずFN FNCを構えて引金を引き、銃声と共に放たれた銃弾は山賊の左胸と右脇腹を貫いて後ろに倒れる。


「……」


 前後左右を警戒しながらまだ弾の入っているマガジンを外してダンプポーチに放り込み、マガジンポーチからマガジンを取り出し、挿入口へと挿し込む。


(この奥か)


 俺は襲撃に備えてゆっくりと歩き、奥へと進む。


 そして曲がり角前で一旦立ち止まり、深呼吸をして勢いよく銃を構えながら入る。


「……よぉ、頭。奥で待っているとは、律儀だな」


「ふん」


 そこには斧を手にして仁王立ちする山賊の姿があった。


 しかし他の山賊と比べると、装備がしっかりとしており、頭には何かの魔物の頭骨をかぶっている。


 間違いない。こいつだ。


 俺は直感的にこいつが探していた男だと確信を得る。


「まさかここを探し当てるとはな」


「あんたの部下の一人から聞き出したからな。泣きながら命乞いをした上で、教えてくれたぜ」


「……」


 俺の挑発染みた物言いに山賊は何も言わなかった。


「でだ。あんたに聞きたい事がある」


「何だ?」


「あんたがリードで間違いないか?」


「聞いてどうする?」


 男は怪訝な表情を浮かべる。


「なぁに、人違いだったら不憫だからな。まぁ犯罪者である以上間違っても構わないがな」


「……」


「で、どうなんだ? 言わないんならこのまま仕事をさせてもらうが」


「……あぁそうだ。俺がリードだ。それでどうなるってんだ?」


「あぁそうか」


 確認は取れた。思わず口角が上がる。


 俺はリードの右肩に狙いを定めると、引金を引く。


 直後に銃声が狭い空間に響き渡り、放たれた銃弾はリード(クソ野郎)の右肩を撃ち抜く。


「がぁぁぁぁぁぁっ!?」


 激痛の余り手にしていた斧を落としてやつは後ろに倒れる。


 俺は構わず両脚に狙いを定めて引金を引き、二回の銃声と共に両脚を銃弾が貫く。

 念の為に左肩も撃っておく。


「これでもうどうする事も出来ないな」


「き、貴様!」


「おいおい。恨まれる筋合いはねぇぞ。敵を目の前にボケッと突っ立っているのが悪いんだろ」


「くっ」


 俺がそう言うと、リード(クソ野郎)は睨みつける。


 映画や漫画だと悪役が敵が前に居ながら得意げに口上述べてるけど、どこからそんな余裕があるんだろな。攻撃してくださいって言っているようなもんだぜ。


「お、俺を殺して、仇でも討とうって言うのか!?」


「あぁそうだな。お前が殺した、お前の父親の仇のゲオルクさんのな」


「あのジジイか……」


「復讐する時はな、復讐される覚悟を持ってやるんだったな」


「そ、そうか。だったらお前も覚悟しているんだな」


 リード(クソ野郎)は口角を上げて得意げに言う。


「俺を慕うやつは多い。俺が死ねば、必ず俺の仇を取るやつが現れるぞ。お前達を殺しにくるぞ!」


「あぁ、それなんだがな」


 俺は首の後ろを左手で掻きながら、自信満々に言うこいつに酷な現実を伝える。


「今頃アンタの仲間は先に逝った親父さんと仲良く杯を交わしているんじゃねぇの」


「……なに?」


 リード(クソ野郎)は怪訝な表情を浮かべる。


「アンタを探す為に、俺達はこの廃鉱を探しまくったからな。その時あんたの仲間が襲ってくるもんだから、全員相手にしていたんだ。俺と俺の仲間達とな」


「……」


「最後にアンタを守ろうとしたやつらも、今頃全員あの世に言って仲間に加わっているんじゃないか?」


 そう話していると、後ろから足音がして来る。


 俺は銃口をリード(クソ野郎)に向けたまま後ろを振り返ると、血の付いた銃剣付きのUSPを手にしたエレナが曲がり角から出てくる。


「よぉ、エレナ。終わったか?」


「……うん。終わった」


 ハイライトの無い目でエレナは頷く。


(前から思うが、時々こんな感じのエレナを見るよな)


 いつも見る元気で明るい姿から想像付かない冷静沈着な姿のエレナに戸惑いながらも、前で後ろに下がろうとしているリード(クソ野郎)を見る。


「それで、この男が?」


「あぁ。二人を殺したやつだ」


「……そう」


 エレナは背筋が凍るような冷たい声を漏らすと、ハイライトの無い目でリード(クソ野郎)を見るとゆっくりと近付く。俺は横に退いてエレナに場所を空ける。


 これはエレナの復讐だ。彼女がやらなければ意味が無い。


 俺は彼女の後ろから周囲を警戒しつつ見守る。


「っ!」


 リード(クソ野郎)はエレナが近づく後とにさっきまでの様子はどこへいったのか、痛みに耐えながら後ろに下がっている。


「お前が、お父さんと、お母さんを……」


 静かにエレナは言うが、そこから怒りが滲み出ている。近くで見ている俺でも息を呑むぐらいだ。


 彼女は右手に持つ銃剣付きUSPの銃口をリード(クソ野郎)に向ける。


「ま、待て! お、俺を見逃したら、お前が望む物を何でも持ってくるぞ!!」


 リード(クソ野郎)は往生際悪く、エレナに取引を持ちかける。


「……」


「何でもする! お前が望む物、望む事、全てを望むままに!!」


「……」


「た、頼む! 命だけは、命だけは!?」


(哀れだな)


 涙目で命乞いをするリード(クソ野郎)に俺は呆れる。


 よくもまぁこんな状況でこんな事を言えたものだな。


「……」


 エレナは無表情のまま、ため息を付く。


「そうやって命乞いをした人達を、何人も殺してきたんでしょ。いざ自分の番になって、同じようにすれば助かると思ってるの」


 静かにそう言うと、エレナは首を傾げてハイライトの無い目でリード(クソ野郎)を見る。


「それ、虫が良すぎるんじゃないの?」

 

「ヒッ……」


 静かな迫力にリード(クソ野郎)は思わず声を漏らす。


「それにさっき、何でもするって言ったよね?」


「そ、そうだ」


「そう。それじゃぁ――――」


 と、エレナはUSPの撃鉄(ハンマー)を起こす。




「地獄に行って、先に逝った仲間と一緒に過ごしなさい」


「……え?」



 ッ!!



 と、リード(クソ野郎)が一瞬安堵の表情を浮かべた瞬間、銃声が鳴る。


 リード(クソ野郎)の額に一つの穴が開き、直後にゆっくりと後ろに倒れる。


 エレナの右手に持つ銃剣付きUSPの銃口から硝煙が漏れる。


(一切の躊躇なし、か)


 後ろから見ていた俺は内心呟いた。


 あいつは一切躊躇う様な動きを見せず、引金を引いた。


(まぁ、余計にややこしい状況にならないなら、これが一番いいがな)


 そう内心で呟いていると、エレナが振り返る。


「終わったよ、お兄ちゃん」


 いつもの声色に戻ったエレナが俺に声を掛ける。


「あぁ。そうだな」


 エレナの言葉に俺は頷く。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 いくつもの銃声が洞窟内に響き渡り、その度に山賊が倒れていく。


 ここに来て何度も見た光景だ。


 だが、そんな光景を見ても、俺は何も感じなくなっていた。


 転生する前だったら、恐らく気分を悪くして精神的に病んでいたかもしれない。


(嫌なものだな、慣れというのは……)


 俺は内心呟きながら周囲を警戒しつつ、前へと歩みを進める。


 だが、人間と言う生き物は慣れる生き物だ。どんなに苛酷な環境下に置かれても、人間を含む生き物は最初は不慣れでも、やがては慣れる。


 だが、なるべくならこういうものに、慣れたく無いものだ。



「……」


 隣ではぐったりとした様子のシキが沈黙している。


「初めての対人戦はどうだった?」


「……その、何て言ったら良いか、よく分かりません」


 するとシキは血の臭いにむせて口に手を当てる。


「今はまだ良い。だが、いずれは慣れないとな。今後似たような戦闘を行わなければならないからな」


「……」



「グ、フ……」


 すると仰向けに倒れて血を吐いている山賊の姿が視界に入る。


 右胸辺りを撃たれているが、辛うじて肝臓は撃ち抜かれていないようだ。肝臓をやられていればものの数秒で大量出血によって死に至る。

 しかし、状態から見て肺をやられているのは明らかだ。


 今から治療しても、助からない。


「……」


 俺はHK416A5の銃口を山賊に向け、静かに引金を引く。


 サプレッサーにより抑えられた銃声が放たれ、飛び出た銃弾は山賊の頭を撃ち抜き、命を刈り取る。


「っ!?」


 それを見たシキは目を見開く。


「恭祐さん……何で……」


「助けようとは思わんことだ。あれではどの道助からん」


「だからって!」


「それとも、苦しませてから死なせたかったのか」


「っ!」


 シキは視線を落とし、黙り込む。


「俺だって、殺したくて殺しているんじゃないんだ」


「……」


「苦しませるぐらいなら、いっそ楽にした方がいいだろう」


「……」




 すると洞窟の奥から物音がして俺達は一斉に銃口を音がした方へ向ける。


「待て待て! 俺達だ!」


 洞窟の奥から士郎の声がすると、岩陰から志郎とエレナの二人が出てきた。士郎は左手に何かを持って引き摺っていたが。


「士郎。無事だったか」


「あぁ。この通りさ」


「そうか」


 俺は安堵の息を吐き、士郎が左手に持っている物を見て、士郎を見る。


「それが?」


「あぁ。山賊共の頭だ」


 士郎は死体の足を手放して振り返る。


「ユフィさん」


「なんだ?」


「こういう賞金首って、死体をそのまま自警団とか組合に提出すればいいのか?」


「あ、あぁ。後は本人と確認が取れれば、良いが」


「そうか」



「お兄ちゃん。これならいいんじゃない?」


 と、エレナがその辺にあったボロ布を持ってくる。


 あれで死体を包むつもりか。


「あぁ。それがちょうどいいな」


 士郎がそう言うと、エレナは地面にボロ布を広げて二人は山賊の頭の死体の両腕両脚を持って持ち上げ、ボロ布の上に置いて死体を包む。


「んじゃ、行くか」


「あぁ」


 士郎はボロ布に包まれた死体を肩に担ぐと、出口へと向かう。


 俺達も周囲を警戒しつつ、その後についていく。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 廃鉱を出た俺達は車を置いている場所に戻る前に、少し離れた場所に立ち寄った。



「よぉ、おっさん」


 俺はある木の根元に顔を向けながらそこにいる人物に声を掛ける。


「だ、旦那。よくご無事で」


 木の根元には、あの時尋問(拷問)したおっさんの姿があり、俺達の姿を見るなり安堵の表情を浮かべる。


「どうやら言いつけは守っていたみたいだな」


「あ、当たり前だ! こんな物を置かれたら、逃げようにも逃げれないじゃないか!」


 おっさんは涙目で俺に訴えかける。そりゃそうだろうな。


 俺はおっさんの周りを見ると、おっさんの身体に巻かれたワイヤーと繋がっているクレイモア地雷が正面左右におっさんに向けられて設置されている。


 もしおっさんが立ち上がれば、ワイヤーが繋がれているクレイモア地雷の安全ピンを引っ張って引き抜き、爆破させる仕組みになっている。


 おっさんから情報を聞き出したはいいが、もしそれが嘘だって言う場合もある。かと言って現場に連れて行ったって足手纏いになるのは目に見えている。

 木に縛り付けたって、山賊だから抜け出す術を持っている可能性も否定できなかった。


 だから逃げられない様に細工をしたわけだ。一応おっさんには十分に警告していた。『不用意に動けば死ぬぞ』ってな。


「まぁいい。それじゃ、最後の質問だ」


 俺は抱えている死体をおっさんの前に置き、顔に掛かっている布を下げて死体の顔を見せる。


「こいつがお前の頭か?」


「ほ、本当に頭を殺したのか!?」


 おっさんはその死体の顔を見て、驚愕の表情を浮かべる。


「あぁ。どうやら、おっさんの情報どおりだったわけだ。約束通り、逃がしてやるよ」


 俺はメニュー画面を開くと、設置しているクレイモア地雷を解除すると、設置していたクレイモア地雷の姿が消える。


 クレイモア地雷が消えたのを確認してから、俺はM9銃剣を腰のベルトに提げている鞘から抜き取り、おっさんの両手首をしばっている結束バンドを切る。


「これで懲りたら、もう悪事はやめるんだな」


「もう懲り懲りだ! もう山賊から足を洗ってやるんだ!」


 おっさんはそう言うと立ち上がり、涙目になる。


 俺はため息を付きながらM9銃剣を鞘に戻す。


「どこにでも行け。俺達の気が変る前にな」


 そう言うと、おっさんはその場から走って離れていく。


「いいのか? 見逃したりして。下手すると報復しに来るんじゃないか?」


「俺達の恐ろしさは身に染みているはずだ。それで来るのなら、ただの馬鹿だが、まぁその時はその時で、迎え撃つだけだ」


 恭祐は呆れたようにそう言うが、一応考えがあっておっさんを解放した。


 商隊襲撃時に俺達の力を見せ付けて、尋問の時も容赦なく、そして廃鉱に隠れている山賊共を全滅させて頭の遺体を持って戻ってきたのだ。


 これで報復を考えようとは思わないだろう。


「それじゃぁ、帰るか」


「あぁ」


 恭祐達は頷くと、近くに止めている高機動車改の元へと向かう。





 ――――――――――――――――――――――――――――――――





「……」


 その頃、山賊達が居た廃鉱のある山の上に、双眼鏡を持って覗き込む者が居た。


 その先には、恭祐達が高機動車改に乗り込もうとしていた。


(まさか、獲物を先に取られるとは)


 その者は双眼鏡を下ろして、ため息を付く。


 その者の格好は闇夜に溶け込むように全身真っ黒であり、黒いバラクラバ帽を被っているので表情は確認しづらいが、唯一露出している箇所に灰色髪と赤い瞳であるのが確認できる。


 背中には『AK-74M』と呼ばれるアサルトライフルの姿があり、その外見からかなりカスタマイズされている。


 AK-74MとはAK-74の近代化型であり、木製だったハンドガードやグリップ、銃床が黒いプラスチック製に変更されている。固定式だった銃床もAKS-74の様な折り畳み式に変更されており、これによって各種兵士が携行する小銃を文字通り統一する事が出来た。


 このAK-74Mをベースにして、改良されたのが『AK-100』シリーズであり、西側標準の5.56×45mm NATO弾仕様やAK-47の7.62×39mm弾仕様が作られた。


 このAK-74Mだが、その外見からアップグレードキットを組み込んで改造したものであり、伸縮折り畳み式の銃床にレシーバカバーやハンドガードの上下左右にピカティニー・レールが追加されている。


「……」


 するとその者はその場に座り込み、バラクラバ帽を取って通信機を手にする。


「目標は先客に取られた。撤収だ」


 通信機に向かってそう告げると、通信機を手放して再度ため息を付く。 


 バラクラバを取った事で、その者の顔が見えるようになった。


 灰色の髪はショートヘアーにして、その顔つきは、少女であった。


「ヤポンスキーか……」


 少女はボソッと呟くと、バラクラバを被り直して立ち上がり、その場を立ち去る。






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