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第四十話 廃坑での戦闘





 その後シキは73式小型トラックを走らせてスレイプニルに戻り、自警団に少女を預けた後、街に戻っていたフィリア達と合流後再び戻ってきた。




「あれが山賊が潜んでいる廃鉱か」


「あぁ」


 山の中腹にある岩場にポッカリと開いた横穴を遠くの岩陰から覗くユフィが呟くと、士郎が短く返す。


 フィリア達と合流し、事情を説明した俺達は山賊の生き残りから尋問で聞き出した廃鉱付近まで可能な限り車で接近した後、徒歩で静かに接近した。


 ちなみにその山賊だが、逃げられないようにちょっとした細工を施して置いている。


「確かに見張りが居ますね。ここで間違いなさそうです」


 MINIMI MK3を持つリーンベルは廃鉱の入り口付近に二人の山賊を確認して小さく声を漏らす。


 その上、廃鉱にも関わらず薄っすらと光がいくつもある入り口から見えている。これじゃここに居ますよっていうのを言っているようなものじゃないか。


「手発通り、行くぞ」


「えぇ」


「あぁ」


「おうよ」


『はい』


 みんなの返事を聞き、俺達は行動を起こした。



 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ―フィリアside―



「……」


 キョウスケを先頭に私とリーンベル、シキは音を立てないように岩陰に隠れながら廃鉱の入り口に接近し、別方向からはシロウとエレナ、ユフィ、セフィラが向かっている。


「……」


 キョウスケの後ろを付いて行く中、私はここまでの一件を思い出していた。



 今朝私達はキョウスケとシロウ、シキ、エレナの四人と分かれて依頼を受けて、スレイプニルを発った。


 ベリルやゴブリンといった魔物の討伐だったけど、依頼は問題なく遂行した。


 その後依頼主に依頼遂行の完了報告をして街に戻ったんだけど、そこでシキが一人で戻って来ていた。


 彼に理由を聞くと、どうやらキョウスケ達が依頼先から帰っている途中で商隊を襲っていた山賊を見つけ、排除したそうだ。その際に商隊の生き残りの少女をシキが街まで運んで自警団に保護してもらったそうなの。

 そして事情を聞いた私達はすぐにシキの案内でキョウスケ達と合流した。


 キョウスケはその山賊の一掃を提案して、私達もその案を承諾した。


 無抵抗の人達を標的にして、その上皆殺しにするなんて、許せるものじゃないわ。 


 それに、その山賊のリーダーはシロウとエレナにとって仇みたいだから、断る理由は無かった。



 岩と岩の陰を伝って廃鉱の位置口付近まで近付くと、私達は一番近い岩の陰で止まる。


「……」


 キョウスケは岩の陰から廃鉱の入り口付近を見ている。


 私はその間に手にしている銃を見る。


 前まで使っていた89式小銃じゃなくて、今使っているのは、確か『HK416A5』って名前だったかしら? 89式小銃に代わる新しく使う銃のいくつかある候補の一つだったわね。


 89式小銃は命中精度が良かったけど、セレクターが使いづらかったのよね。どうしてあんな作りになったのかしら。それに3点バースト機構もあんまり使わないし。


 このHK416A5はセレクターの切り替えがしやすく、ストックも伸縮できるから体格に合わせて調節ができる。ボルトリリースレバーも89式小銃と比べると押しやすくなっているから、89式小銃と比べて使いやすくなっているわね。といっても、射撃精度と射程距離が劣っているのが惜しいのよね。

 まぁ、その点はキョウスケがバレルの交換をして精度を上げているから、射程と共に大分マシになっているけど。


 今の所これとSCAR-Lが有力候補になっているわね。あれもあれで悪くなかったわね。


 今回セフィラやシロウ、リーンベル以外はこのHK416A5を使っており、エレナは銃身を切り詰めたHK416Cを使っているわ。


 基本私達が使うのは16.5インチのアサルトライフルサイズだけど、ユフィとシキは射撃精度を重視して銃身の長い20インチのフルサイズモデルを使っているわね。


 私が持っているやつには、レシーバー上部にホロサイトとブースター、ハンドガード下部にフォアグリップ等の以前と同じカスタムパーツを付けている。それと今回はサプレッサーを付けている。


「……」


 するとキョウスケが振り返り、ハンドサインで指示をくれた。内容は『見張りを始末した後、侵入』だ。

 まぁちょうど他の見張りがいる入り口からは見えない位置だし、サプレッサーで銃声を抑えられているから、始末しても他の見張りに気付かれにくいだろう。


 キョウスケは向かい側の岩に隠れているシロウ達にも同じハンドサインで伝える。


(殆ど見えないのに、シロウは見えているのね。本当に転生者って不思議ね)


 明かりがあると言ってもここからだと全く無いに等しく、ここから向こうは暗くて殆ど見えない。

 しかしそれでもかすかに見えるシロウは小さく手を振っていた。


 私は内心で関心していると、キョウスケがHK416A5を構えて引金を引くと、空気が抜けたような音がして、直後に入り口付近の見張りの一人が倒れる。と同時にもう片方の見張りも倒れる。


 どうやら同じタイミングだったようね。


 キョウスケはハンドサインで後ろに居る私達に指示を出して前進する。


 私達はキョウスケの後についていき、向こうでもシロウ達が岩陰から出てきて私達と合流し、廃鉱の中へと侵入する。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ―土方side―



 反対側にいた志郎達と合流後、入り口から侵入した廃鉱の坑道は意外と明るく、歩く分には苦労しなかった。


 俺を先頭に前後を警戒しながら歩いていく中、大きく開けた場所に出る。


「……」


 俺は大きな岩の陰に立ち止まって後ろのメンバーに向かってハンドサインで『止まれ』と指示を出して俺達は止まる。


「……」


 その後岩陰から向こうを覗き込む。



 そこでは山賊達が酒が入った木製のコップや骨付き肉を持って騒いでおり、まさにお祭り状態だ。


 その近くには略奪品と思われる品々が山積みにされており、恐らくこれを奪った祝いだろう。


 あの山賊から聞き出した情報通りだな。


「……」


 俺は後ろを振り向くと、志郎とエレナ、ユフィ、セフィラを指差して次に高台の方を指差し、チェストリグに提げている閃光発音筒(スタングレネード)を指差した後握り拳を作って広げた。

 次に右手を銃の形を作って撃った動作の様に上下に動かす。


 内容は『四人はあそこの高台に登り、スタングレネードを使った後射撃開始』だ。


 志郎達は頷くと、山賊たちに気付かれないように岩の陰と陰を渡りながら大きく迂回して高台を目指す。


 次に俺は残ったフィリア、シキ、リーンベルに向き直ると、フィリアに指差してチェストリグに提げている閃光発音筒(スタングレネード)を指差し、志郎達に見せたハンドサインを見せてフィリア達は頷く。


 俺はHK416A5を手放してチェストリグに提げている閃光発音筒(スタングレネード)を手にして、フィリアも閃光発音筒(スタングレネード)を手にしてお互い頷き合い、安全ピンを抜く。


 俺は視線を高台に向けると、志郎達は高台に到着しており、俺達を見ると配置完了とサムズアップする。


 それを確認した後、フィリアに合図を出して同時に閃光発音筒(スタングレネード)を放り投げると、同時に安全レバーが外れ二つの閃光発音筒(スタングレネード)宙を舞う。


 俺達はすぐに耳を塞いで口を開ける。



 直後に100万カンデラ以上の閃光に加え、170デジベルの爆音が広場に発せられる。


 光が収まった直後、高台に陣取っている志郎達が射撃を開始する。


 俺達も岩陰から出てそれぞれ銃火器を構え、射撃を開始する。


 HK416A5のハンドガード下部のレールに取り付けたM203に左手を添えてホロサイトに地面に転がって悶え苦しんでいる山賊の姿を捉え、引金を引く。

 サプレッサーで抑制された銃声と共に5.56mmの弾丸が放たれ、一人の山賊の右胸下辺りを貫く。


 フィリアもハンドガード下部のレールに取り付けたフォアグリップを握り締めて引き金を連続して引いていき、放たれる弾丸は次々と山賊の左胸か右胸下、頭を貫く。


 閃光発音筒(スタングレネード)の音を聞いて、奥にいた山賊たちが次々と広場に集まってくる。


 リーンベルと高台を陣取るセフィラはそれぞれMINIMI MK3とM240Gを向けて引金を引き、異なる銃声と共に5.56mmと7.62mmの弾丸が雨霰の如く山賊たちに襲い掛かり、次々と身体を撃ち貫く。


 セフィラの近くではユフィがHK416A5を構えてスコープを覗き込み、山賊に狙いを定めて引金を引き、銃声と共に放たれた弾丸は山賊の頭を貫く。


「左側面から敵増援!」


「俺がやる!」


 俺はM203のセーフティーを外して左手でマガジンをグリップのように握り、山賊たちが次々と出てくる坑道の入り口にM203の銃口を向けて引金を引く。


 ボンッ! と共に放たれた榴弾が弧を描いて坑道の入り口から出てくる山賊たちの中へと着弾し、爆発を起こして破片が飛び散り、山賊たちを殺傷する。


「……」


 すぐにM203の銃身ロックを外して前へとスライドさせ、空薬莢を排出するとポーチから榴弾を取り出して銃身に挿し込み、元の位置に戻す。


 次にマガジンリリースボタンを押してまだ弾が入っているマガジンを外して腰に提げているダンプポーチに放り込み、マガジンポーチからマガジンを取り出して挿し込みながら、シキの方を見る。


「……」


 シキはHK416A5を構えてスコープを覗き込み、引金を引く。しかしその表情は苦痛に染まっている。


 狙われた山賊は腕や脚を撃ち抜かれてその場に倒れて悶え苦しむ。


(無理も無いか)


 HK416A5を構えながら、俺は内心シキの事を察する。


 彼にとって今回が初めての対人戦だ。まだ躊躇いがあるのだろう。


 引金を引く度に、彼の呼吸は乱れて顔色も良くない。


「フィリア!」


「任せて!」


 フィリアは俺の意図を読んでくれたのか、すぐに援護してくれた。


「シキ」


 俺は撃ちながらシキの元へと向かい、声を掛ける。


「きょ、恭祐さん」


 シキは銃を下ろして岩陰に隠れ、乱れた呼吸を整えながら俺を見る。


「無理をするな。お前は援護に徹していればいい」


「で、でも」


「無理をして、壊れてしまったら元も子もない」


「……」


 このまま無理にすれば、シキの心に大きな傷を残すことになるだろう。それこそ、PTSDとなってしまう。

 いや、もうなりかけているかもしれない。


 まぁ、そういう俺もかつてはそうだったんだが、すぐに受け入れた。そんな俺はきっと異常なんだろうな。


「兎に角、無理はするな」


「……は、はい」


 力ない返事を聞きながら、俺は岩陰から出て山賊に銃口を向けて引金を引いていく。





 ―沖田side―



「……」


 俺はブッシュマスター ACRを構えつつ、山賊の増援が来ないか警戒する。


 地面には山賊たちの死体が転がっており、まだ息のあるやつは呻き声を漏らして激痛に苦しんでいる。


 この広場に立っている山賊の姿は無く、増援の気配はない。いや、警戒してまだ奥に潜んでいるのだろう。


 すると恭祐が口笛を吹き、俺たちは高台から降りて合流する。


「このまま山賊の頭目の捜索に入る。メンバーは変わらず。各員、無理をするな」


『了解!』


 恭祐の指示を聞き俺を含めた全員が返事を返す。


 俺はメニュー画面を開いてブッシュマスター ACRを収納し、代わりに『AA-12』と呼ばれるフルオートショットガンなる銃火器を召喚する。


 いくつかある散弾の種類にあるバックショットの中で、ダブルオーバックの散弾が詰まったドラムマガジンをレールに沿って挿し込むと、レシーバー上部のコッキングハンドルを引いて初弾を薬室に送り込む。


「……」


 俺はエレナと顔を合わせると、頷き合って坑道の奥へと進む。




 待ってろ、リード。お前だけは絶対に逃がさんぞ!




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