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第三十九話 復讐する意味




 生存者の捜索を恭祐に任せて俺とエレナは生き残った山賊の元へと向かう。



「おい、おっさん」


 俺はドスの効いた声を出すと、地面に倒れている中年の男性の胸倉を掴んで睨み付ける。


「お前に聞きたい事があるんだ。質問に答えてもらうぞ」


「お、お前に言う事なんかねぇぞ!」


 山賊は士郎を睨みつけながらそう言うが。


「そうかい。なら」



 パァンッ!!



「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 男は叫びを上げて悶えるが、俺はそのまま男を地面に押し付ける。その脚には穴が開いて血が流れ出ていた。


 その先にはエレナがUSPを向けて男の脚を撃っていた。


「エレナ」


「うん」


 エレナは左手を撃ち込んだ箇所に翳すと、青い光を放って傷を癒す。


「質問の内容以外の答えは要らないんだよ。ちゃんと答えないと何度も痛い目に遭うんだぞ」


 俺が左手を上に上げると、エレナは先ほど撃って傷を治した箇所にUSPを向けて引金を引き、銃声と共に放たれた弾丸は狂い無く先ほど撃ち抜いた箇所に命中して撃ち抜く。

 直後山賊は叫んで悶え苦しむ。エレナはすぐに撃ち抜いた箇所に手を翳して青い光を放って傷を癒す。


 こいつが何時までも情報を吐かないなら、これを繰り返すまでだ。


 我ながら鬼畜なやり方だと思う。が、同時に効果的だろう。


「わ、分かった。分かったからやめてくれ!」


 その効果は覿面で、さっきの威勢は何処へやら。男は涙目になりながらあっさりと降参する。


「じゃぁ質問だ。リードって言う山賊を知っているか?」


「な、何で頭の名前を」


「……は?」


 俺はレッグホルスターよりUSPを取り出し、男の眉間に突きつける。


「ひぃ!?」


「質問を質問で返すな」


「わ、悪かった! あんたの言うリードって言う男は俺達の山賊一味の頭だ!」


「ほぉ」


 こいつは良い事を聞いた。


「お前達はさっき何をしていたんだ」


「か、頭にここを通る商隊を襲って金品を奪えって言われたんだ!」


「ふーん」


 やっぱりどこの世界も賊は賊らしいことしかしねぇな。


「で、その頭はどこにいる?」


「そんなの言ったら俺が『パァンッ!!』わ、分かったって!! ここから北にある廃鉱だ。そこを今は根城にしている!!」


 俺がUSPの銃口を上に向けて引金を引いて銃声を立てると、男はすぐに吐いた。


「本当か?」


「ほ、本当だ!」


「嘘じゃないよな?」


「お、お前さんなんかに嘘なんか付いたら後がこえぇぞ!!」


 いい年下おっさんが涙目で叫ぶ姿に俺は哀れみを感じた。いや、俺がしているんだがな。


 その後俺は銃を突きつけて色々と聞き出した。



(あいつ、あんな性格だったっけ?)


 遠くから尋問の様な拷問、じゃなくて拷問の様な尋問をしている士郎の姿に俺は若干引いている。


 まぁあぁいう輩のやつから情報を得るには効果的だろうが。


「変わったな。あいつ」


 以前から知る姿からは想像つかないような今の士郎の姿に俺は呟いた。まぁその点は俺も同じか。


「……」


 俺はため息に近い深い息を吐くと、周囲を見渡す。


 あれから少女以外の生存者を探したのだが、結局彼女以外の生存者はいなかった。


「かわいそうに」


 俺は呟きながら少女の傍にしゃがみ込み、M14を置いて容態を見る。


 さすがにあのままにして置けなかったので、少女に迷彩服3型を着せている。とってもやりづらかったが。


 見た感じ顔色は少し青いが、呼吸は安定しているし、脈も正常だったので、問題は無い。


 だが、左頬に刻まれた大きな傷が、とても痛々しかった。このまま放っておくと細菌が傷口から侵入して化膿する恐れがある。


 俺は応急救急キットを出して傷の治療を施す。



 するとエンジン音が耳に入り、応急処置が終わったところで俺が顔を上げると73式小型トラックがやってくる。


 運転席に座っているシキはエンジンを切って降りると、周囲を見渡して顔を青ざめる。


「きょ、恭祐さん。車を持ってきました」


「ありがとう」


 戸惑いの表情を浮かべるシキに返事を返して俺は少女を抱えて73式小型トラックの後部座席に寝かせる。


「その子は?」


「山賊に襲われた商隊の唯一の生き残りだ」


「……」


 シキは何も言わず周囲を見渡すと、顔色を悪くして右手で鼻と口を押さえて吐き気を抑える。


 グロテスクな光景に加え、獣人の嗅覚の鋭さにはここの臭いはキツイみたいだ。




 しばらくして士郎とエレナの二人が俺達の元へとやってくる。


「待たせたな」


「それで、何か吐いたのか?」


「あぁ。あいつらの根城と頭の情報をな」


「なるほど」


 どうやら予想以上の収穫があったみたいだな。


「それに、あいつらの頭は、どうやら俺とエレナが倒すべきやつみたいだ」


「なに?」


「それってどういうことなんですか?」


 シキは首を傾げて士郎に問い掛ける。


「この山賊の頭はリードと言う名前の山賊で、俺とエレナが居た村を襲ったやつだ」


「っ!」


「エレナさんの」


「あぁ」


「……」


 二人は険しい表情を浮かべて返事を返す。



「士郎」


「恭祐。止めないでくれ。俺達は」


「いや、俺は止めるつもりは無いぞ」


「?」


「きょ、恭祐さん?」


 俺が意外な言葉を掛けたのに驚いてか、士郎とシキが声を漏らす。


「仇討ちがしたいんだろ」


「あ、あぁ」


「なら、俺が止める理由は無い」


「恭祐……」


「復讐をするかどうかを決めるのは関わった者達だけだ。関わりの無い者が決める事じゃない」


「……」


 よくアニメや漫画、ドラマだと復讐は意味が無いとか、死んだ者はそれを望んでいないとか、そんな事を言う輩が居るが、ハッキリ言ってその考えは全く理解できないな。


 復讐は意味が無いと言うこと事態間違っている。そもそもなぜ意味が無いと言い切れる? 確かに復讐をしたところで失ったものは戻ってこない。

 だが、復讐は一種のケジメだ。気持ちを整理する為のな。俺はそう思っている。


 死んだ者はそれを望んでいない? それを言うやつはお前は死者の声が聞こえる霊能力者か何かか? それに自分を殺したやつを憎まないとは到底思えないな。


 俺は復讐をすること事態を肯定するわけじゃないが、否定もしない。なぜなら、決めるのは関わりのある者だからだ。関係の無いやつが決める事じゃない。


「俺は……」


「……」


「俺は……エレナの両親の、村の人達の仇を討ちたい。だから、恭祐。力を貸してくれないか?」


 士郎は真剣な表情を浮かべて、頼み込む。


「私からもお願いします、団長!」


 エレナも深々と頭を下げる。



「あぁ。分かった」


 俺は迷う事無く、首を縦に頷いた。


「良いのか?」


「他でもないお前からの頼みだからな」


「……」


「けじめをつけたいんだろ?」


「……あぁ」


 士郎は強く頷いた。




「……」


 その様子をシキは黙って見ていた。


「シキ。お前はスレイプニルに戻って待機だ」


 これから行うのはどんな理由を述べようとも、大量殺人だ。俺や士郎はいいだろうが、全く耐性の無いシキには荷が重過ぎる。だから彼には街で待機してもらうしかない。


「……」


 シキは何も言わず、黙ったままだ。




「僕も、行きます」


 しばらくしてシキは口を開いた。


「だが」


「分かっています。これから、何を行うかは」


「だったら……」


「だからこそ、です」


「……?」


「お願いします。僕も連れて行ってください」


「……」


(シキ。お前は……)


 俺はしばらく考えたが、シキの決意の篭った瞳に、俺は何も言えなかった。



「分かった。だが、無理はするなよ」


「はい」


 これ以上は平行線が続くと思って、俺の方が折れることにした。


「それじゃぁ、あの子をスレイプニルの自警団に保護してもらうついでにフィリア達を呼んで来てくれ。今頃依頼を終えて街に戻って来ているはずだ」


「分かりました」


 シキは頷くと、すぐに73式小型トラックに向かう。


「俺はあいつからもっと情報を聞き出す」


「分かった」


 士郎はエレナを連れて山賊の元へと向かう。その際山賊が青ざめたので、さすがに同情した。


「……」


 俺は腕を組み、深くため息を吐いた。







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