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第三十七話 ランク上げの難しさ




 灰色の雲が空を覆い、薄暗い森林の中。


 その中に出来ている道を73式小型トラックが走っていた。



「今回は楽に終わったな」


「まぁ、相手がゴブリンやコボルト程度じゃ、すぐに終わるだろうよ」


「大口径の銃で遠距離から一方的に撃てばすぐですよ」


「私は全然活躍出来て無いんだけど」


 運転席にて車を運転している俺の隣の助手席に座る士郎は背もたれにもたれかかって灰色の雲に覆われた空を見上げ、後ろの席に居るシキはG3/SG1を観ながら呟き、エレナは不満げに呟く。


「しかし、なんでわざわざ古い方のジープを出したんだ?」


 俺達が乗っている73式小型トラックは現在陸上自衛隊で使われているパジェロ型ではなく、古い方のジープ型だ。後部座席の中央にある銃架には12.7mm重機関銃M2が搭載されている。


「好きだからに決まってんだろ?」


「いや、お前さぁ」


 俺の返した言葉に助手席に座る士郎は苦笑いを浮かべる。


 後ろの席に座るシキとエレナも士郎同様苦笑いを浮かべていた。


 今日も組合から出された依頼を受けて、今回はフィリア達と分かれて依頼を受ける事にした。


 俺と士郎、シキ、エレナの四人は森林に出没するコボルトやゴブリン、オークといった魔物の駆除の依頼を受けて、依頼主が入る村へ向かい、その周辺の森林で魔物の駆除を行った。もちろん依頼内容にあった数と合わせて規定に沿った数だけ駆除している。

 その後依頼主に駆除報告を行い、スレイプニルへと戻っている途中だ。


「そういえば、三人のランクはどうなった?」


「俺は今回の依頼でストーンに上がりそうだな」


「私もストーンですね」


「僕はアイアンです。恭祐さんは?」


「俺はまだブロンズだ。フィリア達もまだアイアンだろうな」


 それぞれ首に提げているタグを見せ合う。


 ちなみに俺はブロンズ、士郎とエレナがウッド、シキはアイアンだ。


「うーん。ランク上げって以来をこなしていけばすぐに上がるもんだと思ったが、意外と時間が掛かるんだな」


「まぁ、こなしている依頼が駆除程度のものばかりじゃなぁ」


 俺はため息を付く。


 ここ最近ランクを上げる為に依頼を毎日受けていたが、やはり依頼の難易度でランクを上げる為のポイントの量が異なっているようで、俺達がこれまで受けてきた依頼は難易度の低いものだったらしく、中々上がらずにいた。


「やはりランクを上げるのに適しているのは大型の魔物の討伐、もしくは賞金首を捕らえるか、でしょうかね」


 シキが例えを口にする。


「だが、その辺りの依頼になるとランクが関係してくるからな。今の俺達のランクじゃそれらの依頼は受けられないだろうな」


 冒険者にランクがあるのは実力を表す為であり、実力に合わない依頼を受けれないようにする為だ。実際過去にその制度が無かった時代では駆け出しの冒険者が難しい依頼を受けて死亡する事故が多発していたそうだ。

 と言っても、ランク相応の実力を持った冒険者ばかりかと言うと、そうではない場合もあるが。


「一応高ランク者が同伴なら受けれなくは無いですが」


「保護者同伴みたいなものか?」


「ま、まぁ例えとしては、間違ってないですが」


 士郎の例え方にシキは苦笑いを浮かべる。


 シキの言う通り、高ランクの冒険者が同伴すると言う条件なら低ランクの冒険者でも難易度の高い依頼を受けることが出来る。まぁ当然難易度の高さによっては高ランクの冒険者の同伴数も多くなってくるが。


「俺達以外の冒険者は正直言って信用できない。特にランクが高いやつほどな」


「そうなのか?」


「あぁ。一度俺の武器目当てで依頼を共に受けた冒険者のパーティーが居たんだよ」


「やっぱり居るんですね。そういう輩が」


 と、シキは少し嫌悪感のある声を漏らす。


「最初は特に怪しい所は無かったんだが、食事の時にやたら料理を勧めてくるから、警戒したんだよ」


「それで、どうしたんだ?」


「後から分かったが、どうやら食事に睡眠薬を仕込んでいたみたいでな。俺が眠った所を襲うつもりだったようだ。まぁ、スキルのお陰で俺には効かなかったがな」


 俺には身体精神異常無効のスキルがある。少なくとも今のレベルなら並大抵の睡眠薬程度じゃ効かない。


「その言い方からオチが見えたが、一応聞くけどどうなったんだ?」


「俺は寝たフリをして待ち構えてな。案の定冒険者達が睡眠薬で眠っていると思って俺に襲い掛かったんだ。まぁ、CQCで返り討ちにしたがな」


「それはまぁ」


「ご愁傷様」と士郎は呟く。


「それの冒険者達はどうしたんですか?」


「当然拘束して町に戻った後組合に報告してな。御用となったよ。そんで報酬金を貰ったよ」


「まぁそうなるな」


「で、連中はどうやら同じ手口を使って新人冒険者を襲っては装備やアイテムを奪って、口封じに魔物に襲わせたらしい」


「なるほど。冒険者である以上、事故死として装えば、不自然じゃないか」


 冒険者はいかなる場合でも組合側の不手際が無い限り自己責任だ。依頼先で魔物に食い殺されたとしても、それは珍しいことではない。

 まぁ当然不自然な点がある場合は組合が調査団と騎士団を動員して調べるが。


「はぁ。僕も下手すればそんな連中に標的にされたかもしれないんですね」


 シキは深くため息を付く。


 まぁシキの場合はそれ以外の理由で標的にされていたかもしれんが。


「となると、残りは賞金首か」


「まぁ、そう簡単に出てくるものじゃありませんし、何より首に賞金が掛けられている以上、それなりの実力を伴っているでしょうし」


「うーむ」


 世の中やっぱり思い通りに進まないな。





 しばらく森の中を進んだ中、休憩のために俺達は道の脇に車を停車させていた。


「ところで、恭祐」


「何だ?」


 水筒に入っている水を飲んだ士郎がスコープを載せてバイポットを付けたM14の各所を点検している俺に声を掛ける。


「お前あれ以来どのくらいレベルが上がっているんだ?」


「あぁ、あれから大分上がっているが、特に変化は無いな」


 俺はメニュー画面を開いて、自分のステータスを見る。


 現在の俺のレベルは38まで上がっており、身体能力もかなり向上している。


 しかし身体能力が上がること以外に変わった事は無く、スキルの追加や何かのジャンルの武器兵器がアンロックされるようなことは無かった。


(何か条件でもあるのか?)


 俺は首を傾げて考えるが、それで答えが出るなら苦労しない、か。


「そういう士郎はどうなんだ?」


「俺もレベルは上がっているが、トレーニングモードが追加された以外は特に変わってないな」


 士郎は『PSL』と呼ばれるルーマニア製のマークスマンライフルを手にしながら答える。


 ちなみにこのPSLだが、旧ソ連のSVD ドラグノフとよく似ている外見をしているが、ハンドガードの形状や弾倉の位置、フラッシュサプレッサー等、細部を観るとかなり異なる銃である。

 内部機構もSVDと異なってガスピストンとボルトキャリアーが一体化したロングストロークピストン式のガス圧作動方式を採用している(SVDはガスピストンとボルトキャリアーをそれぞれ別部品としているショートストロークピストン式を採用している)


 ここまで異なっているのにこれらを同じ銃だというやつはただのアホである。



「お前もトレーニングモードが使えるようになったのか」


「あぁ。別にお前が居なくても使えるって事だな」


「それもそうだな」


 これで俺が不在でも他のメンバーに訓練を施すことができる。



「それにしても、恭祐さんと士郎さんの今の体質って便利ですね」


「そうよね。私にはよく分からないけど」


 それまでG3/SG1やUSPに不具合が無いか見ていたシキとエレナが口を開く。


「まぁ、銃を自由に出せるって言うのは便利だな」


「それに戦えば戦うほど強くなれる」


「どこの戦闘民族ですか」


「ホント、お兄ちゃんと団長の身体って不思議だねぇ」


「うーむ」


 俺は静かに唸る。


 そもそも言うと、なぜ転生者にこれだけの能力を持たせて異世界に?


(恐らく、いや、十中八九転生者は他にも居るんだろうな)


 当然俺達だけしかこの異世界に居るとは思えない。他にもいるんだろうな。


 そしてその転生者達が果たしてまともかどうか。


(どうも嫌な予感がする)


 俺達がただこの世界に転生させられたようには思えない。


 何か目的があるような気がする。



「っ!」


 するとシキの耳がピンと立ち、G3/SG-1を手にして立ち上がって周囲を見渡す。


「どうした。シキ?」


「今、女性の悲鳴がしました」


「なに?」


「どっちからだ?」


 すると士郎は手にしているPSLにマガジンの前端を引っ掛けながら挿し込んでコッキングハンドルを引く。隣でエレナがドラムマガジンを装着している『HK416C』を手にしてチャージングハンドルを引く。


「こっちです!」


 シキはG3/SG1を右肩に背負うと、森の中へと入る。


 俺はM14を手にして士郎達と共にシキの後に付いて行く。





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