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第三十六話 小銃の優劣は使いやすさなのか……

今回は雑談回みたいなものです。





 あの後オークの捜索をしたが、逃がしたオーク数体とゴブリンの群れと遭遇しただけで、他にオークの姿は無かった。どうやら群れはあれだけしか居なかったようだ。


 オークから討伐の証となる部位を回収した後、牧場に戻って管理者に報告後スレイプニルへと戻った。


 戻った後すぐに冒険者組合に向かい、オークの討伐報告と、回収したオークの耳や牙を提出して依頼を完遂した。


 後日組合から派遣される調査団の調査で報告どおりであるのを確認した後に報酬金が支払われる。


 受付のタグを受け取った後夕食を取って、泊まっている宿に戻った。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 そしてその日の夜。



 寝る前の日課となっている恭祐のトレーニングモードによる射撃訓練。



 射撃場の様な仮想空間で俺達は射撃訓練を行っていた。しかし今回は少し違っていた。




「……」


 俺は両手に持って保持している拳銃のフロントサイトとリアサイトを重ねて的に狙いを定めると、引金を引く。


 直後に撃鉄が下りて弾の雷管を叩き、USPよりも大きな銃声と反動と共に弾丸が放たれ、的に大きな穴を空ける。


 すぐに撃鉄を右手の親指で起こして反動でずれた狙いを定め直して再度引金を引き、大きな反動と共に銃声が鳴り響き、放たれた弾丸が的に六つ目の穴を空ける。


「やっぱりマグナムの反動は強いな」


「だろうな。まぁ、こっちの方が大きいんだがな」


 俺は手にしている拳銃こと『S&W M29』の6インチパフォーマンス・センターモデルのシリンダーを左側スイングアウトさせて後ろに傾け、.44マグナム弾の空薬莢を排出する。


 隣で士郎は手にしている『オートマグⅤ』の空になったマガジンを落としてホールドオープンしたスライドのロックを外す。


 そりゃ.50AE弾なら反動は強いだろうよ。


「しかし、今回の戦闘で分かったが、やはり大きな魔物には大口径の弾を使う銃が有効だったな」


「まぁ、ある程度予想は出来たがな」


 まぁこれについては以前から考えていた事だが、やはり口径が小さい弾丸では身体の大きい、もしくは表皮の固い魔物に対して威力が不足していることだ。現に今回オークに対して5.56mmの弾丸は急所こそ当たれば仕留められるが、それ以外の箇所ではダメージは少ないように見えた。

 場合によっては大口径の弾丸を使用する銃火器の使用も念頭に入れないといけないな。


「と言っても、場所によっては小口径の弾でも仕留められるが」


「そんな必中を求められてもなぁ」


「それはいくらなんでも無理ですよ」


 近くでは『トーラス・レイジングブル』を持つシキがシリンダーを左側にスイングアウトさせて後ろに傾け、454カスール弾の空薬莢を排出する。


「まぁ、現実的に考えてもそれは無理だろうな。まぁ、どれを使うかは、考えないとな」


「うーむ」


「そうですね」



「で、どれを使うかで思ったが」


「ん?」


 オートマグⅤを収納した士郎は『ブッシュマスターACR』を召喚しながら俺に問い掛ける。


「結局パーティーで使う小銃は89式で統一するつもりか?」


「俺はそのつもりだが?」


「うーん」


「何だよ」


 何処となく嫌そうな雰囲気を出す士郎に俺はムッとする。


「いや、89式は良い銃だ。別に良いんだが、やっぱり使いづらくないか」


「……」


「確かに、レールが無いし、セレクターがあんな配置と形では、使いづらいですよね」


「ぐっ」


 それを言われるとぐうの字も出なかった。


 89式小銃は性能こそ高水準に達するほど高いが、やはり設計が古いのに加え、セレクターが独特な配置と形をしているとあって、使いづらい小銃に数えられるだろう。

 今でこそピカティニー・レールを追加するなどして近代化改修しているが、それでも焼け石に水程度のものだ。


「別に89式に拘らなくていいなら、別の小銃でいいんじゃないか?」


「別のやつ、かぁ」


 俺は頭の後ろを掻く。別に考えてなかったわけじゃないが、うーん……。


「例えば、『SCAR』とかな」


「SCARか」


 腕を組んで静かに唸る。


 SCARとはベルギーのFNハースタル社で開発されたアサルトライフルだ。この小銃は5.56×45mm NATO弾を使用するモデルLや7.62×51mm NATO弾を使用するモデルHがあり、それぞれ銃身の長さが異なるモデルもある。

 M4と異なって作動方式がストーナー式からショートストロークピストン式になっている為、命中精度は低下しているものも、ボルトキャリアが汚れることがなくなっている。

 その他にも89式小銃のようなガス調節弁を持っており、いざと言う時の作動不良に備えている。

 陸自でも次期国産小銃開発の参考としてこのモデルLとモデルHの二種類と思われる小銃を納入していると言う情報がある。


「あれは大口径モデルのSCAR-Hもあるし、ある程度部品の共有化も出来るぞ。その上AKのロシアンショートの弾薬とマガジンが使えるモジュールもあるしな」


「それはそうだが、うーん」


 俺としては89式を使い所だが……。


 と言っても、弾薬を共有化したとしても、銃をバラバラに使うのは後々困るだろうな。


(それに、銃身の長さを変えられるのはメンバーの要望を叶えられるが)


 ちなみに先の戦闘で89式短小銃を使ったエレナだったが、銃自体の性能は良いと言っていたが、セレクターに関しては酷評だった。


(まぁ89式以外で良さげなのは、HK416辺りか)


 ここでM4やM16を選択しなかったのは、やはり動作方式の構造上の作動不良の起こしにくさだ。


 まぁ前にも言ったが、M4やM16のストーナー式はちゃんとメンテナンスをすれば故障を起こすことは無い。しかし構造上汚れやすいのはどうしようもない。

 その分ショートストロークピストンはボルトにガスが吹き付けられないので汚れにくい分メンテナンスは楽な方、と思う。


 それにHK416はAK並に劣悪な環境でも動作するほど頑丈に出来ているのも特徴的だろう。


「他にはHK416やXM8ぐらいだな」


「HK416はともかく、XM8は……」


「そうですよねぇ」


「言わなくても二人の言いたいことは分かるぞ」


 士郎は苦笑いを浮かべる。


 XM8とはH&K社が開発したアサルトライフルだ。これまで培ったノウハウを基に次世代小銃として開発され、その性能はこれまでの小銃を上回る性能を有した。

 特徴的なのが『モジュラー・ウェポン・システム』と呼ばれるもので、各パーツごとにモジュラー化しており、コンパクトカービン、アサルトライフル、分隊支援火器といったバリエーションに専用の工具無しで換装できる。


 アメリカ軍はこのXM8をM4やHK416、SCARと共に厳しい試験を行って、このXM8はどの小銃よりも良好な結果を出して、M4A1に代わる主力小銃として採用を決定した。

 しかしその後年を跨がずにその決定を急に白紙に戻したのだ。


 理由は今も曖昧で分かっていないが、ネット上では三つの理由が割とありえそうな理由として大きく挙げられる。


 一つは軍が使いたがらなかったと言われている。


 XM8はこれまでの銃火器と比べるとプラスチックを多用し、外見に近未来感が出ており、一般的な銃火器と比べると結構新鮮さがあった。しかしそれが仇となったのかどうかは分からないが、軍人からすれば『玩具みたいな外見』と言って使いたがらなかった、と言われている。

 まぁそうでなくても採用している小銃を一新するとなると、当然調達費用に加えて訓練費、消耗品の補填費が掛かる為、一部で採用を反対したと言われている。


 二つ目はコルト社の陰謀があった。


 仮にもXM8が採用されれば、それまでM16やM4を軍に卸してきたコルト社が黙っているはずが無かった。そこで強力な政治ロビーを展開して採用を撤回させた、と言われている。

 まぁそのコルト社もその後破産したのだが……。


 三つ目は生産工場側に問題があった。


 これはピカティニー造兵廠と呼ばれる企業が正式採用の決定前に国内に生産ラインの設置を決めるなど力を入れていたらしく、その上あたかも採用が決まったかのような持ち上げ方をしていたらしく、それが軍や政府に反感を勝って採用に大きく影響した、と言われている。


 当然これらの説はネット上で予想されたものばかりで、真実は今だ定かになっていない。


 ちなみにXM8はその後PMSCsや他国の軍、法執行機関等に売り込みを掛けたが、ドイツの武器輸出法の改正により、販売や輸出が制限されてしまい、現在は製造されていないという。


 しかしそんなXM8にも欠陥があり、根本的な機構はG36のものを使っているので、その短所も引き継いでおり、その上プラスチック製の外装は紫外線の影響で劣化しやすいと言った問題点を抱えていた。

 そして何よりマガジンがG36系のものであり、M16やM4のSTANAGマガジンではなかったのも、ある意味一つの欠点ともいえるだろう。



 まぁ結論的に言うと、XM8は性能こそ良かったが、色んな意味で運が無かった迷銃であったということだ。



「まぁ、アサルトライフルについては後々みんなで決めようぜ」


「そうだな」


「はい」


 まぁともかく、この話題は一旦棚上げだな。まぁ今の所SCARかHK416が有力かもな。

 でも士郎が出しているブッシュマスターもありかもしれんな。


「それと、スナイパーライフルはどうするんだ? まさかMSG90でいいってわけじゃないよな?」


「別に決まっているわけじゃないぞ。ただ単に性能の良いセミオート式のスナイパーライフルが無かっただけで、使っているだけだ」


「そうなのか」


「でも、MSG90なら僕のG3とマガジンを共有化が出来るので、別にいいのでは?」


「そりゃシキはいいだろうが、操作に一手間が掛かるやつはいざって時に困るんじゃないか?」


「まぁ、それはそうですが」


「……」


 士郎の言う通り、MSG90と言うよりG3系統の銃火器に言える事だが、作動方式にローラーロッキングによるディレードブローバック方式を用いている。

 この機構は反動を抑制するので、連射をしても高い命中精度を保つことができる。


 しかし構造上の関係で一部を除いてホールドオープン機構を持たないので、コッキングハンドルを一番後ろまで引いてボルトを回してレール後端上の溝に引っ掛けて、その後マガジンを交換をしてボルトハンドルを上から叩いて溝から外してボルトを前進させると言う手間が掛かる。

 しかもこの機構は薬室内に弾を残した状態でマガジンを交換する、所謂タクティカルリロードを行うとボルトやその周辺に負担が掛かってパーツが損傷する恐れがある。


 戦場でこの一手間による隙は危ういだろう。


 その上、複雑な構造をしているので重量が増えやすいと言う欠点もあり、前身であるPSG1は軍用に向いていない重量だった。


「まぁボルトアクションのスナイパーライフルは別の時で決めるとして、セミオート式のスナイパーライフルだが、『KIVAARI』がいいんじゃないか?」


「KIVAARI?」


「あぁ」


 すると士郎はブッシュマスターACRを台に置いてメニュー画面を開いてそれを探して選択すると、台に一丁のスナイパーライフルが現れる。


「こいつは確か、.338ラプアマグナム弾を使用するセミオートスナイパーライフルじゃないか」


「あぁ。こいつはいいんじゃないか? フラッシュハイダーのお陰で反動も結構抑えられているみたいだしな」


「……」


 俺は台の上に現れたスナイパーライフルを眺める。


 KIVAARIとはアメリカのDRDタクティカル社で開発されたスナイパーライフルで、狙撃に適した.338ラプアマグナム弾を使用するセミオートマチック式スナイパーライフルだ。


 このスナイパーライフルの特徴としては『クイック・チェンジ・バレル・システム』と呼ばれる僅か数秒で組み立て、分解を可能としており、持ち運ぶ為の従来のロングケースを必要とせずコンパクトに収納が可能となっている。


「まぁ、悪くないな。だが、ユフィに使ってもらって意見を聞くしかないが」


「だな」


 士郎はKIVAARIを収納すると、レッグホルスターに納めているUSPを取り出す。


「それにしても、結局セカンダリウェポンはUSPにするのか?」


「まぁ特に他に無いんならUSPタクティカルで統一するつもりだ」


「そうか。まぁ、性能は十分だしな」


 士郎はそう言うとUSPをレッグホルスターに戻す。




 その後近くで小銃や狙撃銃、機関銃を撃っていたフィリア達に小銃や拳銃、狙撃銃の意見を聞きまわったりして、今後の事を考えるのであった。





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