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第二話 初めての戦闘



「はぁ……」


 森林の中の獣道の草を掻き分けながら俺はため息を付き、周りを見渡す。


(自然の多い異世界なのかねぇ)


 まぁ別にそれはいいんだけど、さぁ……


「人はおろか生き物にすら会えないって、どうなん?」


 誰かに向けたわけではないが、そう言いたくなる状況だ。


 あれから三時間近く歩き続けて途中で森に入っているわけだが、生物らしき影が見当たらなかった。


(まさかと思うけど、人間はおろか生き物に会う事無く終わるって事は無いよな?)


 それだけは冗談抜きでやめて欲しい


 説明で多種族が暮らしているとあったけど、最後は誰にも会わずにボッチによる孤独死とか、シャレにならない。


「あぁ、誰でもいいから出て来ないかなぁ」


 そう呟きながら大きな葉っぱを押し退ける。



「ん?」


 葉っぱを押し退けた先には、一軒のログハウス的な小屋が視界に入る。


「噂をすれば何とやらってやつか」


 茂みから出て戦闘服に付いた葉っぱや蜘蛛の巣を払って小屋に近付き、扉をノックする。


「すみません。誰か居ますか?」


 声を掛けるも返事は無く、再度数回ノックするも返事は返ってこない。


「留守、か?」


 一瞬留守かと思ったが、周囲の状態から違和感を覚える。


 俺は静かに窓の方へと歩いて中を覗くも、中には誰も居らず、妙に荒れた様子があった。


「誰も居ない、と言うより住んでいないのか」


 よく小屋を観察すると、長い間誰も住んでいない事を表すかのように苔や草があちこちから生えている。


(道を聞いて街に辿り着けたらいいなって思ってたのに……)


 内心ガッカリしながら小屋を離れ、森の中にある道を歩いていく。




 小屋の傍で白いナニカがあった事も知らずに。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――




 それから更に一時間以上歩いた所で休憩の為に俺は石に腰掛け、ホルスターよりUSPを取り出してあちこち弄る。


「しっかし、この森どこまであるんだ?」


 ため息を付き、マガジンをグリップに挿し込み呟きながら周りを見渡す。


(何か、マジで誰にも会えないような気がしてきた)


「うーん」と唸りながら内心呟く。



「悩んでも仕方無い、か」


 深くため息を付いて立ち上がり、手にしているUSPの安全装置を外す。


「さて、どんなものかねぇ」


 グリップを両手で持ってしっかりと保持し、近くにある木に銃口を向ける。


「……」


 深呼吸をして気持ちを整え、トリガーに指を掛けてゆっくりと引く。



 ――ッ!!



 銃口からマズルフラッシュが瞬き、銃声と共に弾が放たれる。同時に起こる反動で銃身が跳ね上がるが何とか抑え込む。

 放たれた弾は木の幹に命中して表面が弾ける。


(意外と反動があるな)


 と言っても実銃は撃った事が無いのでどうこう言えるわけじゃないんだが。


 体勢を整えて、連続でトリガーを引いて弾を放つ度に反動が起きるも俺はそれを抑えつつ射撃を続けて、弾が無くなってスライドが一番後ろまで下がって固定される。


 マガジンキャッチャーを押して空になったマガジンを排出し、ハンドガン用のマガジンポーチからマガジンを取り出してグリップに挿し込み、スライドを引いてロックを外し、スライドを戻すと再度射撃を行う。


 

 それからマガジン3本分を消費するまで射撃を続けて、最後のマガジンを取り出してグリップに挿し込んでスライドロックを外して元の位置に戻す。


「大体こんなもんかねぇ」


 拳銃を撃つ時の感覚をイメージしつつ思い出しながら安全装置を付けて右太股に装着しているレッグホルスターに戻し、両手を組んで腕を真っ直ぐに前へと伸ばす。


 右肩を何回か回した後、背負っている89式小銃を取り出し、右側のセレクターを(安全)から(連射)(三連射)を越して(単射)へと向ける。


「さてと……」


 ドットサイトの前後のレンズの蓋を開けて右肩に床尾板(バットプレート)を当てて構え、ドットサイトを覗いて狙いを定める。


「……」


 銃身下部のM203を左手でしっかりと保持し、ドットサイトを覗き姿勢を少し前の方に傾けて用心鉄(トリガーガード)に掛けている指をトリガーに掛け、ゆっくりと引く。



 ――ッ!!



「っ!」


 撃った瞬間マズルフラッシュが瞬き銃声が辺りに響き渡り、弾は木の幹に着弾して表面を抉る。

 そして9mm弾よりも強い反動が床尾板(バットプレート)を通して伝わる。


「くぅ……!い、意外と反動が強い!」


 小口径弾の5.56mmとあってそれほど反動は無いだろうと思っていたが、想像していたよりも強い反動で右肩が地味に痛み俺は歯を食いしばる。


 俺はその後ドットサイトを何度も調整しては反動に慣れる為に射撃を続ける。


 そして弾切れになってボルトが後退したままになり、空になったマガジンをマガジンキャッチャーを押して外し、マガジンポーチに入っているマガジンを左手で取り出して挿し込み、止まっているボルトのロックを外して射撃を再開する。


 それからはマガジン4つ分の射撃を行って射撃と反動に慣れ、ドットサイトの調整も少しずつ良くなって狙った場所に弾が命中し始める。




「ふぅ……」


 俺は一息つき、空になったマガジンを外して新しいマガジンを挿し込んで安全装置を掛け、銃床を右手に乗せて肩に担ぐ。


(大体は分かったが、やっぱり反動が強いな)


 若干痛む右肩を擦りながらさっきまでの射撃の様子を思い出す。


 最初と比べればそれなりに使いこなせている方と思うが、それでもまだまだだろうな。


「まぁ、最初はそういうもんだろうな」


 例え電動ガンやガスガン、モデルガン等で使い方を知っていても、所詮それは模造品で遊んでいるだけだ。本物とは月とスッポンの差がある。

 いくら神様から技術を最初から与えられているといっても、最初から銃を使いこなせるとは思っていない。


 呟きながら89式小銃を一瞥し、メニュー画面を開いて消耗した弾薬とマガジンをそれぞれのマガジンポーチに補充すると、空になっていたポーチに膨らみが戻る。


 こんな感じで補充されるのか


 そう思いつつハンドガン用のマガジンポーチを確認するとUSPのマガジンも消費した分が補充されているのを確認し、89式小銃を右肩に背負おうとスリングに腕を通す。


 

「っ!」


 俺は一瞬背筋に冷たい感覚が過ぎって、思わず前へと走りさっきまで的にしていた木の陰に駆け込む。


 するとその直後に木の幹に何かが突き刺さる。


「……っ」


 肩に背負おうとした89式小銃を両手に持ち、息を呑んで木の陰から向こう側を見る。


 銃撃でいくつも銃痕が残された木の幹には何かが突き刺さっており、よく見たら矢羽らしきものが見える。


「……」


 セレクターを(単射)にしつ、突き刺さっている矢が飛んできたと思われる方向を見る。


 視線の先には林があって、そこに茶色の肌を持つ小柄の人型モンスターが茂みから数匹出てきて、弓を構えてこっちを狙っている。

 創作作品でよく見るゴブリンっぽい見た目だ。


「ゴブリン、か?」


 ボソッと呟くと弓矢を持つゴブリン達が次々と矢を放ってきて俺が隠れている木の幹に突き刺さる。


(クソッ!確かに誰か出て来ないかって言ったけど、お前達はお呼びじゃねぇよ!!)


 いつでも撃てるように用心鉄(トリガーガード)に指を掛けて内心で文句を叫ぶが、ゴブリン達はお構いなしに矢を放ってきて俺が隠れている木の幹に矢が次々と突き刺さる。


(転生して早々これかよ!)


 内心で愚痴る間にも矢は次々と木の幹に突き刺さる。


(……やるしかないか!)


 この世界に来て早速だが、俺は覚悟を決めて木の陰から出て89式小銃を構え、床尾板(バットプレート)を右肩に当ててドットサイトを覗く。


 腕に力を入れて極力銃身のブレを防ぎつつレティクルに弓矢を構えるゴブリンの頭を捉え、トリガーに指を掛ける。


 そしてゴブリンが矢を放とうとした瞬間、俺はトリガーを引く。


 マズルフラッシュと銃声と共に衝撃が右肩に伝わり、銃口から弾丸が放たれる。


 弾丸は一直線に飛ぶが、弾はゴブリンの頭より右斜め下へと飛んでギリギリ命中せずにゴブリンの頭を横切り後ろの木の幹に着弾して表面が弾ける


 聞いた事の無い銃声にゴブリンたちは動揺して動きを止めており、俺はすぐに狙いを定めてトリガーを引き、銃声と共に弾が放たれる。

 しかし弾はゴブリンの頭の側面を掠り、皮膚の表面を裂く。


「……」


 深呼吸をして気持ちを落ち着かせて突然の激痛に驚くゴブリン狙いを定めてトリガーを引き、銃声と共に弾が放たれる。


 弾は一直線に飛んでゴブリンの額に命中して弾が突き出た瞬間後頭部が弾けて中身と血がぶちまけられて、ゴブリンの命を刈り取る。


(よしっ!)


、内心で命中した事を喜びつつ、別のゴブリンに狙いを定める。


 仲間が死んで他のゴブリンは戸惑いを見せるが、その間にも俺は狙いを定めてトリガーを二回連続で引き、放たれた弾は別のゴブリンの頭と胸を撃ち抜く。


 相手が混乱している内に俺は連続して狙いを定めてはトリガーを引き、ゴブリンを頭や胸に当てて次々と仕留めていく。


 ようやく状況を理解してか、仲間を殺されて怒り心頭となったゴブリン達が雄叫びと共に林から出てこちらに向かって来る。

 しかもまだ奥に居たのか結構な数が来ている。


「奥にまだ居たのか!?」


 俺は「くそっ!」と悪態を付きながらセレクターレバーを(連射)に切り替えて銃身下部のM203を持っている左手に力を更に入れて構えると、トリガーを引く。


 次の瞬間には連続でマズルフラッシュが瞬き、雨霰の如く弾が放たれる。


 弾は向かって来るゴブリンたちの胸や頭に命中して撃ち貫き、その命を刈り取っていく。


「くっ!」


 反動で銃身が上がっていくのでトリガーから指を離し、そこから3点バーストに切り替えて3連射でゴブリンを撃ち殺していく。


 少ししてマガジン内の弾を撃ち尽くしてすぐにマガジンキャッチャーを押して空になったマガジンを外し、マガジンポーチからマガジンを取り出して挿し込み、止まっているボルトのロックを外して射撃を再開する。


 さすがにゴブリン達は自分達の身の危険を感じてか武器を捨てて逃走しようとするも、俺は逃げていくゴブリン達に狙いを定めて射撃し続けて撃ち殺していく。

 

 そして一林に入ろうとする一匹も、放たれた弾丸が後頭部から頭を貫通し、息絶えて前のめりに倒れる。



「……」


 射撃をやめると銃声が辺りに小さく木霊して、銃口から硝煙が薄く漏れ出す。


 何匹かが逃げたようだが、戻って来ても返り討ちにすればいいだけだ。


「……」


 俺はマガジンを外して新しいマガジンを挿し込み、ゆっくりと前へと進む。


 周囲に視線を向けて他のゴブリンが襲ってこないか警戒していると、頭を撃ち抜かれたり蜂の巣にされて息絶えたゴブリン達の死骸が視界に入り、ちょうど向かい風が吹いて生臭い血の臭いが鼻を突く。


「ッ……」


 あまりのスプラッターな光景と鼻を突く臭いに胃から何かが逆流しそうになるも俺は何とか耐える。


(そりゃ、銃を思う存分使えばこうなるよな)


 銃の威力を身を持って体感し、息を呑む。


 動画を見て銃の威力は知っていたはずだった。だが、見るのと実際とではまるで違っていた。


(今回だけで済む、ってわけじゃないよな)


 だったら武器や兵器を召喚できる能力を持たされるわけが無い。つまり武器が必要になる時は日常茶飯事だということだろう

 あの女性が言っていたのはこのことか


(とんでもない世界に転生させられたんだな)


 改めて自分の置かれている状況を理解して、げんなりと気持ちが落ち込む。




「っ?」


 すると林からバキバキと木が折れるような大きな音がして、俺はすぐに林の方に視線を向ける。


「なんだ?」


 89式小銃を構え、左右に視線を向けつつ林を方を警戒する。


(何かが、来る)


 音のする方向に89式小銃を向け、トリガーに指を掛ける。



「……え?」


 木々の間より出てきた存在にポカーンと口が開く。


 一言でそれを言い表すなら……さっきのゴブリンを巨大化したようなモンスターが現れた。

 ただゴブリンと違って頭には浅く湾曲している赤い角が2本生えている。そしてでかい。


「……ボスのお出まし?」


 目の前のモンスター……でかいゴブリンだからそのままビッグゴブリンとでも呼ぶか。

 俺はも思わず声を漏らすと、ビッグゴブリンは雄叫びを上げて右手に持つ鉄塊のような大剣を振り上げ、俺の方へと走り出す。




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