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第三十三話 転生者



「……」


「……」


「……」


 今僕ことシキ・クーゲルトは先ほど出会ったばかりの二人の男女と共に店に入り、昼食を取りながら話をする事になった。


 さっきこのスレイプニルに着いた僕はここの冒険者組合にて冒険者として活動する事を申告をしてから、街を散策していた。


 これからの事をどうするか考え事をしていたら、前を見ていなかったので、人とぶつかってしまった。


 僕はぶつかって人に謝りながらその人の化した手を取って立ち上がり、改めて視線を前に向けると、そこに男女二人が居て、その二人の格好に僕は驚きを隠せなかった。


 なぜなら、二人の格好が陸上自衛隊の迷彩服3型であった事と、右太股に装着しているレッグホルスターにH&K社製と思われる拳銃を収めていたからだ。


 異世界なのに、なぜ陸上自衛隊の迷彩服3型を身に纏って、拳銃を持っているのか。いや、銃に関しては僕も同じなんだけどね。


 それに、男性の方はアジア系の、いや、どこからどう見ても日本人にしか見えなかった。


 それで僕は男性の方に「日本人ですか?」と問い掛けた。


 すると男性の方は驚いて目を見開いた。


 どうやら予想が当たっていたようだ。


 で、色々と互いに事情を聞くために二人が昼食を取るという事で、僕は同行する事になったのだ。



「とりあえず、自己紹介から始めようか」


「は、はい」


「俺の名前は土方恭祐だ」


「『フィリア・ブローニグ』よ」


「僕はシキ・クーゲルトと言います。シキと呼んでください」


「分かった、シキ」


 自己紹介が終わり、土方さんはコップを手にして水を飲む。


「じゃぁシキ。質問だが、なぜ俺が日本人だと分かった? なぜ日本人の事を知っている?」


 土方さんは当然の様にそれを聞く。


「それは……僕も、同じ日本人だからです」


 僕は一瞬言うべきか悩んだが、もう既に怪しまれている以上隠す必要は無い。


「日本人?」


 僕の容姿を見て土方さんは首を傾げる。まぁ当然だろう。見た目は日本人からはかけ離れた姿なのだから。


「正確には、元日本人、と言った方がいいですね」


「元日本人、だと?」


「えぇ。確かにこの身体はこの世界の住人の者ですが、前世は日本人の高校生です」


「つまり、君は転生者なのか」


「そうなりますね」


「そうか」


 土方さんは納得したように頷く。


「輪廻転生。御伽話で聞いたことはあるけど、まさか本当に存在しているなんて」


「あぁ。こんな形での転生もあるんだな」


「土方さんは、どうなんですか?」


「恭祐で良い。まぁ俺も君と同じだな」


「ってことは、恭祐さんも転生者なんですか?」


「あぁ。と言っても、シキとは経緯が違うが」


「経緯?」


 僕はよく分からず、首を傾げる。


「俺はシキのように生まれ変わったわけじゃなく、前世で命を落としてそのままこの世界に転生した、と言う感じだな」


「そうなんですか」


 どうやら恭祐さんも転生者みたいだ。それならこの格好と拳銃も説明がつく。


(って、そういう感じの転生が良かったな)


 こんな女の子みたいな容姿となってじゃなくて。前世の姿のままで転生したかった。それなら苦労する事も無かっただろうし。


 僕は内心呟いてため息を付く。


「ところで、シキが持っているそれって、もしかして」


 すると土方さんが腰に提げているホルスターとテーブルに立て掛けている布に包まれたG3SG/1を見る。


「えぇ。恭祐さんの想像通りの代物ですよ」


 僕はG3SG/1を手にして布を取り払い、ホルスターに収めているCz40Bをテーブルの上に出す。


「G3SG/1にCz40Bか。後者はマイナーだな」


「僕もそう思います」


 恭祐さんに言われて僕は苦笑いを浮かべる。


 Cz40Bなんか普通は知られない代物だしね。


 と言うか、一目見て分かるなんて、恭祐さんは相当根の入ったミリオタなんだ。


「しかし、異世界で生まれて君が、なぜこれを?」


「それなんですが、僕もよく分からないんです」


「と、言うと?」


「僕を保護した村の人達の話だと、僕を見つけた時に一緒にあった箱があって、その箱を後に僕が開けて中にこれらがあったんです」


「保護?」


「僕が目覚めた時には、捨てられていたようなので」


 当時の状況的に正確には違うんだろうけど、結果的に捨てられていたような状況なので僕は恭祐さんにそう伝えた。


「そうか」


 悪いと思ってか、恭祐さんはバツの悪そうな表情を浮かべる。


「それで、シキさんは冒険者なの?」


 するとフィリアさんが場の空気を変えようと話題を変える。


「は、はい。冒険者になったのはつい最近で、依頼も前居た街で一度だけしただけなんです」


 僕は首に提げている紐に繋がっている木製のドッグタグを取り出す。


「そうなんですか。でも、どうしてわざわざこの街に?」


「……ちょっと、前の街で色々とありまして」


 その時の事が思い出されて、僕は思わず二人から視線を逸らす。


「察したよ。何かすまんな」


 そんな僕の様子を察してか、恭祐さんは苦笑いを浮かべる。


 まぁ多分恭祐さんが思っているような事じゃないんだけどね。




「ん?」


 すると恭祐さんは顔を上げると、フィリアさんも顔を上げる。


「ユフィ?」


 恭祐さんは立ち上がって歩き、僕は身体を回して後ろに振り返ると、店の入り口に恭祐さん達と同じ迷彩服3型を身に纏い、88式鉄帽を被った黒髪の女性が背中に銃を背負って立っていた。

 見た感じ、G3っぽい銃だけど……。


「どうしたんだ? 依頼を終えたにしては早いな」


「いや、まだ終わっていない。と言うより、向かう途中で戻ってきたんだ」


「戻ってきた?」


 女性に恭祐さんは話し掛ける。どうやら知り合いみたいだ。


 いや、格好からして恭祐さんの関係者だと言うのは大体想像できたけど。


「すぐに街の外に来て欲しいんだ」


「なんでだ?」


「目的地に向かう道中に、民間人を保護したんだ」


「民間人を? だったらわざわざ俺に言う必要は無いだろ」


「そうなんだが、ちょっと事情があってな」


「事情だって?」


「あぁ」


 何やら二人は戸惑ったような様子を見せている。



 少しして恭祐さんが戻ってくる。


「すまない。ちょっと席を外す。二人はここで待っていてくれ」


 そう言うと恭祐さんは女性と共に店を出て行った。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 俺はフィリアとシキを店に置いてユフィと共に門の外で待機しているリーンベル達の元へと向かう。


「ところで、保護した民間人はどんな特徴を持っているんだ?」


「あぁ。一人は人間の青年で、もう一人はエルフの女性だった」


「エルフだって?」


 やっぱりエルフって居るんだな。さすがファンタジー。


「ただ、その二人が持っている物なんだが」


「なんだ?」


「……その二人は、銃器を持っていたんだ」


「なに!?」


 ユフィの口から予想外の言葉を聞いて俺は驚く。


 そりゃそうだ。まさか俺達以外に銃を持っているやつがいるなんて、思ってみなかったからだ。


「二人共持っていたのは私達が知る物とは大分形は違っていた。その上、男の方はその銃器をキョウスケの様に召喚していた」


「……」


 つまり、男の方は俺と同じ、能力持ちの転生者の可能性があると言う事か。


(俺やシキ以外の転生者。まさかこうも早く現れるとは)


 俺は不安を覚えながら門を抜けると、外には高機動車改が停車しており、その周りにセフィラ達が待っていた。

 その二人に話し掛けている青年とエルフの少女が居た。


(銀髪のエルフか)


 ダークエルフなら分かるが、普通のエルフの様な肌の色をして銀髪と言うのは新鮮だった。


 と言うか、妙に軽装だな。確かにこの辺りは温暖だからちょうど良いかも知れないが、スタイルが良い分目立ってる。どこがとはあえて言わないが。


 しかしエルフの少女の両脇には拳銃を収めるホルスターがあり、背中にはAK系の銃器を背負っている。でも銃身が太いから、サイガ12か? でも細部が違うから違うか。


 男の方はAK-74系のアサルトライフルを背中に背負っている。


「ん?」


 俺は男の後ろ姿を見て、首を傾げる。


(あの男、どこか見たような)


 俺は男の後ろ姿に、物凄く見覚えがあるのだ。



「あっ、団長、ユフィ様」


 と、俺達に気付いたリーンベルが声を掛ける。


「オキタさん。団長が来ましたよ」


(ん? オキタ?)


 聞き覚えのある名字に俺は首を傾げる。


 すると二人はこちらを向いて俺とユフィを見る。




「「あっ」」


 そして俺と男はお互いの顔を見た瞬間、思わず声を漏らすと、「「アァァァァッ!?」」と互いに指差しながら叫ぶ。


『っ!?』 


 突然の叫び声にユフィ達とエルフの少女は目を見開く。


「お前、何でこんな所に居るんだ、恭祐!!」


「それはこっちの台詞だ。なんでお前がここに居るんだ、士郎!!」


 俺は目の前に居る、この世界に居る筈の無い、前世の頃の幼馴染の名前を叫んだ。




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