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第一話 異世界に降り立つ転生者




「……」


 温かい風に吹かれて、俺の意識は徐々に覚めて行く。


「う、いっつぅ……」


 ズキズキと痛む頭に手を当てながら俺は倒れている身体を起こす。


「ここは、どこだ?」


 今に至るまでの事を思い出しながらふら付きながらも立ち上がり、ぼやける視界の中周りを見渡す。


 次第に視界が鮮明になると、俺が居る場所が明らかになる。


 鮮明になった視界が捉えたのは、一面に広がる緑で、それが草原であることを理解するのに時間は掛からなかった。


「……どこやねん、ここ」


 思わず俺は声を漏らす。



「って、そういや異世界に転生させるって言っていたな」


 頭の後ろを掻きながらボソッと呟き、周囲を見渡す。


 見渡す限り草原が広がっており、遠くには薄っすらと森や林のようなものはある。


「明らかに日本、じゃないよなここ」


 かと言って海外のどこかってわけでもなさそうだ


(本当に異世界なのか)


 その証拠に空には薄っすらと月と思われる物が2つも見えていた。


「は、ハハハ……マジかよ」


 俺は再び座り込み、乾いた笑いを漏らす。


(まさかラノベや創作物にある異世界転生を自分で体験するなんてな)


 世の中って本当どう進んでいくのかわからんものだな。


「はぁ……まぁ、いくら悩んでもいくら否定しようが、これは現実……何だよな」


 しばらくして気持ちが落ち着き、ボソッと呟いた。


 出来るなら夢であって欲しいと何度も思った。だが、何度も頬を抓ってみたり頬を叩いたりしたが、普通に痛みを感じたし、眠気も覚める。それは夢ではない現実であると言う事を表していた。

「はぁ~」と深くため息を付く。


 こうなった以上、慣れるしかないか。人間って言うのは慣れる生き物だ。どんなに過酷な環境であっても、慣れてしまえば気にしなくなるのだ。一人暮らしが始まって最初は不安でも三ヶ月か半年で気にしなくなるのと同じだ。


(と言うか、俺に一体何の能力を与えたんだ?)


 そういやあの神様何の説明も無しに送り込んだよな。


 首を傾げながら「うーん」と静かに唸る。



「ん?」


 すると俺の目と鼻の先の宙に半透明の何かが出現する。


「なんだこれ?」


 ラノベで見るVRMMORPGでよくありげなメニュー画面のようなもので、一番下のにあるお知らせの欄が点滅している。


 俺は戸惑いながらも点滅している箇所に触れると、画面が切り替わる。



『どうやら、目を覚ましたようだな』


 画面にあの男性もとい女性が映し出される。


「あんたか」


『どうだ?気分は?』


「頭痛が酷いな。まぁ目を覚ました直後と比べると大分マシだが」


『そうか。まぁ、それなら良かった』


「……」


 どこも良く無いんだが、気にしない事にした。


『さて、色々と説明せずに君をこの世界に送り込んでしまったが、順に説明しよう』


 そういえば何にも説明を受けていなかったな。


『まずこの世界についてだが、東西南北に巨大な大陸を持ち、それぞれの大陸に人間を含む多種族が存在し、それなりに魔法文化が築かれた世界、と言った所だ』


 つまり、ラノベやファンタジーでよくある異世界って言う認識でいいんだな

 と言うか、説明の割にはかなり簡素な気がするが


『小難しい事を多く並べて説明されるよりマシでしょ』


 そりゃそうだな


『続いて君に与えた能力についてだ

 君には様々な武器兵器を召喚できる能力とそれぞれの武器兵器を扱う為の知識を与えている。

 身体能力は現時点の君ものから4倍に引き上げ、レベルが一定数に達するごとに数値も上がる仕様となっている

 一応君の頭にはこの世界に関する知識を必要最低限擦り込ませているから、日常生活に困らんはずだ

 それと君だけの特殊スキルを付与している』


「武器兵器の召喚だって?」


『そうだ』


 異世界とあってそれ相応の物かと思っていたけど、まさか好きなジャンルからの物だから、まさに棚から牡丹餅を得たようなものだ。


『と言っても、君の住んでいた日本の軍隊や自衛組織、警察機関、特殊機関が使用した国産や輸入もしくは鹵獲、供与された外国産の物に限られる』


「マジか」


 つまり日本産を基本に極一部の外国産の武器兵器のみかよ。地味にきついな。まぁ、不足感は無いと思うが……


『だが、その代わり武器兵器には無理矢理じゃ無い限り、ほぼ制限無しで外装及び内装に改造を施す事ができる』


「ふむ」


『そしてスキルだが、ステータス画面を開いて見てくれ』


 そう言われてステータスの項目に触れると俺自身のステータス画面が表示され、スキルの項目を見る。

       


 身体精神異常無効:一部を除いていかなる身体及び精神の異常を無効化する能力。但しものによっては若干のペナルティーが生じる可能性があります


 五感強化能力:任意のタイミングで五感の内どれか一つを強化する。レベルが上がれば上がるほど強化した際の効果も強くなる。

        但し現時点のレベルでは二箇所以上の強化は不可


 勘:様々な状況を事前に察知できる。レベルの高さ次第で勘の当たる確立と察知する早さが上がる


  捕捉:スキルはレベルが一定数上がる、もしくは特定の条件を満たす事により新たに追加、もしくは既存能力が強化されます。


  

「前二つはいいとしても、勘って何だよ」


 能力は優秀なんだが、他にマシなネーミングは無かったのかと突っ込みたくなる。


『他に良い名前を思いつけなかった』


「さいでっか」


 まぁヘンテコな名前を付けられるよりマシか


 一旦ステータス画面を閉じて次に武器装備の項目に触れる。


 そこには女性の言う通り旧日本軍から自衛隊、警察や海保等の政府組織で使用されていた武器兵器が項目ごとにズラリと並んでいるが、戦車や航空機、船舶等の一部兵器は黒文字になっている。


『一部は現時点のレベルでは召喚できないが、一定数レベルが上がれば順次解除されてその項目の武器兵器は全て使えるようになる』


「なるほど」


『それと、特定の条件で手に入るポイントがある。それを集める事でそのポイント数に応じて様々なパーツや弾薬、設備等と交換する事ができる』


「ふむ」


 つまり改造の幅を広げれると言う事か


『武器兵器は召喚自体に制限は殆ど無い。一度召喚すればいつでも出し入れが可能だが、物によっては次に召喚できるまで時間が掛かる場合があるから気をつけるように。

 あと破壊された場合は消す事はできないが、技術流出は防ぎたいからなるべく徹底的に破壊するように。まぁ破壊具合によっては放置しても構わないが』


「分かった」


『最後に一つ。特定の条件を満たしたら、一部の武器兵器が開放されて使用可能となる』


「一部の武器兵器?」


『何が使えるかは、開放できてからのお楽しみだ』


「……」


『まぁヒントを言うなら、空想の存在となった物や特殊な経緯を持って日本に入ってきた武器兵器、とだけ言っておこう』


「……」


 気にはなるが、現時点では確かめようが無いから今はこの話題は気にする必要はないな




『それでは、健闘を祈る』


 女性は最後にその一言を言って敬礼をし、画面が消える。


「健闘を祈る、か」


 なんか、凄く不安なんだが……


「しかし、まさか武器兵器を召喚できる能力が与えられるとは」


 正直信じ難いが、神が与えているとなると、嘘と言うわけじゃないよな。


 本物の武器兵器が使えるとあって、俺の中に高揚感が昂る。


「とりあえず、何か出してみるか」


 俺はその場で立ち上がり、装備画面を出す。


(やっぱり日本の警察機関や軍……自衛組織で使われたり、輸入されたものばかりか)


 決して少ないと言うわけじゃないが、バリエーションに欠けるものがあるな。まぁ、どこぞの国と違って不足感は無いけど。


(それに戦闘服や装備品もあるのか)


 服に関しては旧日本軍から自衛隊に警察機関の物まで勢ぞろいだ。


(とりあえず、何か出してみるか……)


 俺は武器の中から小銃の項目を開く。


 小銃は旧日本軍の三八式歩兵銃や九九式短小銃に、保安隊時代のM1ガーランドやM1カービン、M1903A3と言ったアメリカ製の供与武器、戦後初の国産自動小銃の64式7.62mm小銃と言った物がズラリと揃っている。


(やっぱりこいつだな)


 旧日本軍のボルトアクションライフルも良かったが、今度の機会にして今回は『89式5.56mm小銃』を選択する。


 自衛隊や海上保安庁、警察特殊部隊で正式採用されている豊和工業製の国産アサルトライフルだ。


 一応陸自の特殊作戦群が使っているとされる『M4カービン』も項目にあったが、最近のお気に入りとあってこっちの方がいい。


 その89式小銃を選択してカスタム画面を開いて項目を見る。


(内部も結構弄れるんだな)


 カスタム項目の多さに少し驚きながらも俺は無理の無いように改造を加える。


 外装面はまず本体上部と銃身下部にピカニティーレールを追加して、本体上部にドットサイト、銃身下部にM203グレネードランチャーを追加して、各パーツの強度を上げる。

 内装面には項目のあるだけを施し、故障に強くする為に各パーツの強度と耐熱性を上げ、バレルも射撃精度に耐熱性の向上を図る。


 次にサイドアームだが、何がいいかな


 内心呟きつつ拳銃の項目を開くと、旧日本軍の十四年式拳銃や自衛隊の9mm拳銃に警察機関のニューナンブM60など色々とある。


 旧日本軍なら十四年式か九四式とかがあって、どちらも性能は悪くないだろうが、現代の拳銃と比べると見劣りする箇所は多い。特に九四式拳銃は機構的に危ないから今は論外。


 選ぶなら9mm拳銃か11.4mm拳銃ことM1911A1なんだが、その考えはすぐに打ち消される。


「おっ、USPにSIG、GLOCKがあるじゃん」


 拳銃の項目には『H&K USP』や『SIG SAUER P226R』に『SIG SAUER P228』『GLOCK19』『S&W M3913』『H&K P95』と言ったM1911A1以外の外国産のハンドガンが数多くあった。


 これらは自衛隊で正式に採用されているわけじゃなく、陸自や警察、海保の特殊部隊でそれぞれ使用されている、もしくは使用した事がある拳銃だ。


 俺はその中から一番好きなUSPを選択すると、バリエーションも選択できるとあってその中から銃身を長くしたエキスパートモデルに一部タクティカルモデルのパーツに切り替えるなどの改造を施す。


 次に服装や装備品の項目を開き、服装は自衛隊の迷彩3型に88式鉄帽、半長靴3型と言った戦闘装着セットを選択して、装備を押すと俺の身体が発光し、光が収まった時には選択した武器装備が俺の身体に纏われていた。


「おぉ」


 自衛隊装備を身に纏った装備に俺は思わず声を漏らし、両腕を広げてまじまじと見てから、肩に背負っている89式小銃を手にしてマジマジと見る。


 本体上部のピカニティーレールには89式小銃用照準補助具が取り付けられ、銃身下部のピカニティーレールにはM203が取り付けられており、改造内容どおりの89式小銃であった。


 グリップを持ってマガジンポーチからマガジンを取り出し、中に5.56×45mmNATO弾が入っているのを確認してから挿入口に挿し込み、本体右側にあるコッキングハンドルを引いて薬室へと初弾を送り込み、左側に追加したセレクターを安全へと向ける。


 スリングで肩に吊るしてから右太股に付けたホルスターよりUSPを取り出し、マガジンをグリップ内に差し込んでスライドを引いて薬室へと初弾を送り込み、安全装置を掛けてホルスターに戻る。


 両腕を交互に回してから両腕を真上に上げて背伸びをしてから、深くため息を吐く。


(それにしても、楽しみなのか不安なのか、よく分からんな)


 本物の武器を手にしたという高揚感と、全く知らない異世界と言う不安から俺の中ではごちゃ混ぜになった感情が渦を巻いていた。


「まぁ、しばらくすればこの状況にも慣れるか」


 人間は慣れる生き物だ。慣れてしまえば気にしなくなるものだ。って、さっきも言ったな。


 そう呟きつつ、テッパチこと88式鉄帽の被る位置を整えて気持ちを切り替える。


「さてと。どこに行く当ても無いけど、とりあえず行きますか」


 再び深いため息を付いてから身体の調子を整えて、草原を歩き出す。




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