第二話3『地獄の逃走劇』
◇
「はぁ、はぁ、はぁ、」
『待てやぁああああ。俺まだ告白してねぇって言ってんだろうがぁぁああああ』
『天宮ぁぁあああ楽斗ぉぉおおおお』
『待ちなさいって言ってるでしょ』
言動が明らかにおかしいだろ!?
さっきまで「楽斗くんを守る」とか言っていた連中(AGLクラブ)は、今や姉さんと協力して俺を捕まえようとしている死神に変わり果てた。
いったい何があったんだよッ!?
『怖がらなくてぇもォ大丈夫だよォォおおお。皆で愛でて可愛がってぇあげるからぁああああ』
『おいでぇ~おいでぇ~』
『アハハハハハアハハアハハハハハアハハ』
ダメだ。奴らはもう助からない。特に最後の台詞を吐いた奴は重度に狂ってしまっている。精神科に行くべきだッ!
俺は階段を駆け下りて近くにあった教室へ潜り込んだ。
『どこだ天宮ぁぁぁ!!!』
『一階へ下りたんじゃないか?』
(そうだ。一階へ行ってしまえ!)
『いや、待って。それはおかしいわ。一階へ下りたなら佐藤率いる一班からの連絡があるはずよ。それが無いってことはきっと辺りに潜んでいるはずだわ』
うぉいッッッ!!?
おい!?何だ一班って!?一班ってことは二班三班もあるのか!?
って、マズイ。二階に滞在していることがバレた。このまま無防備に教室の中で突っ立っていたら危険だ。
どこかに隠れないと。
教室の中を見渡すと丁度中が空っぽになっていたロッカーを見つけた。
ここならバレないかも。
俺は急いでロッカーの中に隠れた。
ピシャーン。
静かな教室に鋭い音が響く。どうやら姉さんたちがこの教室に入ってきたらしい。
『楽斗出てきなさい!貴方は完全に包囲されているわ!』
この声は姉さんか。誰が出ていくものかッ!
『楽斗ちゃん。俺のためにも出てきてくれないか?』
この声は工藤!?出ていくわけねぇだろ!!!?
何でお前のために出ていかなきゃならねぇんだよ!身の程を考えろ!くそやろう!!!
『楽斗お願い。出てきて?』
嘘だ!!!?蓮宮だと・・・・・。
くそ、反射的に体が動こうとしている。ダメだ。今出ていったら俺は死ぬ。
俺は必死に出ていこうとする体を抑えた。
蓮宮を利用するなんて卑怯だぞ!
『居ないな』
『やっぱり一階へ下りたんじゃないか?』
『おかしいわね。まぁ、いいわ。次行きましょう!』
連中は少しの間、教室をうろついていたが、まさか俺がロッカーへ隠れているとは思わなかったのか教室を後にした。
た、助かった。
しかし、念には念を。俺は連中がまた戻ってこないかしばらくロッカーの中で様子を見て、その後ロッカーから脱出した。
さて、これからどうしよう。窮地を乗りきったとはいえ状況は進歩していない。それどころかロッカーという狭い場所に隠れていたので体が痛い。俺は思わず座り込んでしまった。
すると、どこから現れたのか、困り果てた俺の目の前にHEROはやって来た。
「僕が助けてあげるよ」
「大野!?お前・・・・・・」
金属バットを装備した大野は笑顔で座り込んでいた俺に手を差し伸べした。