第四話1『ストーカー』
◇
約束通り俺たち悲恋部は、静流の登下校を護衛することになった。
しかし、俺たちは素人のため、護衛といっても端から見れば『友達同士で楽しくお喋りしながら登下校している』と見られるだろう。
だが、今回はそれでいいのだ。 相手はストーカーであり殺し屋ではない。
『複数の人で登下校しているだけでストーカーは近寄っては来ない』
それが刃の考えであった。そして、俺たちもその考えを尊重することにした。
本当は刃の意見なんて無視したいけどね。
「...ストーカーって何考えてるのかなぁ」
蓮宮が歩きながら呟いた。
「きっと俺たちには分からないような事だよ...」
この日ストーカーは現れなかった。
◇
次の日、俺たちは朝6時に家を出て静流の家に向かった。
もちろんストーカーをするためではなく、ストーカーから静流を護衛するためだ。
『朝早く出た方が人が少なくストーカーを見つけやすい』という、刃の案が通ったのだ。
静流の家への道は昨日の下校時に案内してもらったので覚えていた。とはいえ、自宅から直で向かうと流石に迷いそうなので一度学校へ向かってから行くことにした。
...めんどくさい......が、静流の為だ。頑張ろう!
「やぁ楽斗。おはよう」
「おはよう」
学校へ着いた俺は待ち合わせをしていた蓮宮と合流した。
蓮宮とは6時10分に待ち合わせをしていた。
刃とも同じ時間に待ち合わせをしていたはずなのだが見当たらない。
「あれ?刃は?」
「まだ来てないみたいだよ。多分寝坊じゃないかな?」
俺が聞くと蓮宮は苦笑いして言った。
「あいつ、後でぶっ殺してやる」
「まぁまぁ、楽斗、落ち着いて、ね?
いつも学校へ行く時間より2時間くらい早い時間なんだから寝坊しても仕方ないと思うよ」
「いや、遅刻には罰を与えるべきだ!蓮宮は甘いんだよ!」
「う、う~ん...。ま、まぁ、それは置いといて今は静流の家に行こう、ね?」
「...分かったよ」
俺と蓮宮は約束の地(待ち合わせ場所)に来ていない刃を見捨てて(おいといて)先に進むことにした。(先に静流の家に行くことにした)
流石に朝早くに出たからか、通りに人が少なかった。
おかげで俺は蓮宮と二人きりの時間を満喫することができた。
◇
静流の家に辿り着いた俺たちは迷わずインターホンを押した。
普通に女子の家のインターホンを押すことは緊張するが蓮宮の前で情けない真似はできない。
ピンポーンッ
インターホンの音が響き渡る。
インターホンを鳴らしてから30秒くらいで制服に着替えた静流が出てきた。多分俺たちが来る時間の10分くらい前には着替え終わってたんじゃないかな?と、思うほど早かった。
「ご、ごめんね?待った?」
「全然」
静流が心配そうに聞いてきたので俺は即答した。5分ならともかく、30秒で遅いとか言う奴は居ないだろう。居たとしたら余程のせっかち者か、時間の計算ができない馬鹿の2択だ。
生憎、俺は、せっかちでも時間の計算ができない馬鹿でもないため遅いとは言わなかった。むしろ早いと言ってもいいぐらいだ。
「じゃあ行こうか」
「あれ?刃さんは?」
「ああ。刃は多分寝坊だよ」
「そ、そうですか...」
「...そうだよ」
「......」
「......」
うん。何故だろう会話が弾まない。こんなに弾まない会話は生まれて初めてだよ。
...気まずい......。
俺は目で蓮宮に助けを求め...。
蓮宮は真剣な顔で何かを考えていた。俺の視線には気づいていない。
ちくしょう!なんで俺はテレパシーが使えないんだよッ!?テレパシーさえ使えれば......。
と、空を見上げ、涙を溢した。
「あの?楽斗さん?楽斗さん?」
静流が俺の肩をユサユサと揺する。
「はっ!?」
俺の意識は一瞬にして戻された。




