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姉かわ  作者: 春波流音
第一話『ここから悲劇は始まった』
2/22

第一話2『進撃の姉』

 ハァハァ。危ないところだった。

 まさかこの俺が男から好かれていたなんて。

 

 俺は大野から告白されたあと脱兎の如くその場を立ち去った、イヤ、この場合逃げ去ったというのが正しい表現なのだろうか?


 まぁ、こんなことはどうでもいい。


 問題はこれからどうするかだ。

 てっきり【決闘】だと思っていたので荷物は教室にある。しかし、今戻れば大野と鉢合わせになる危険性がある。

 仕方ない。奥の手を使うか。


 俺は即座に携帯電話を取り出し姉さんへと電話を掛けた。


 Pi Pi Pi Pi Pi


『はい。もしもし、天宮流音ですけど。どちら様ですか?』

『俺だよ俺!』

『御生憎様ですがオレオレ詐欺は私には引っ掛かりませんよ?』

『違う!楽斗だよ!姉さん!』

『何だ楽斗か。気を使って損した』

『今ので気を使った気なのかよ!?』


 これで気を使ったとか......

 何だか姉さんが心配になってきた。特に頭が。


『今失礼なこと考えてなかった?』


 うぐっ。す、するどい。


『い、いや別に?そんなこと考えてないしー?考えるはずないしー?姉さんの頭が致命的とか微塵も考えてなんかいないよ?』


 なにか致命的なミスをした気がするが気のせいだろう


『あ"ぁ"?ま、まぁいいわ。ところで何の用?』


『あっ、忘れてた』


『特に用がないなら切るわよ?』


『ま、待って。実は教室に置いてきた俺の鞄を持ってきて欲しいんだ』


『はぁ?アンタ今どこなの?』


『屋上』


 そうなのだ。

 俺は色々なところを走り回った挙げ句、辿り着いた所は屋上だった。屋上は普段は鍵が掛けられていて入ることができないのだが1年前、偶然的に外に落ちているのを俺が見つけた。

 以来見つけた鍵は先生には返さず俺が取ひk... ゴホンッ。私用で使える部屋的な所になっている。

 また屋上は鍵が無くなる前からもあまり使われていなかったので先生達も、「まぁいっか」と言うような感じになっている。


 うちの高校は適当なのだ


『はぁ?屋上からだったらアンタの教室近いじゃん。自分で取りに行きなさいよ』


『実は教室に行けない理由があって... 』


『どんな理由よ?変な理由だったら取りに行かないからね!』


 ハァ......。


 多分ここで嘘をついてもすぐに見破られるだろう。俺は正直に話すことにした。


『実は俺... 今日クラスの大野って奴に告られたんだ』


 ガチャン、何かを落としたような音が携帯越しに聞こえる。続いてドサッ、という音も聞こえた。


『ね、姉さん!?』


『... アンタ今屋上って言ったよね?OK。今から向かうから。あっ、準備しといてね?』


『えっ!?何の?』


『紐無しバンジーの準…』

 

 ピッッッ。

 俺は即座に電話を切った。

 うん。ヤバイ。ここにいたらヤバイ。死ぬ。絶対に死ぬ。殺される。

 え?誰にって?

 姉さんにだよ!


 俺は即座に屋上のドアを開けて教室へ入り鞄を持って逃げようとした。(もちろん鍵は閉めた)

 そして気づく。自らの過ちに。


 あはははは。スゴいな。人は死の恐怖を感じると他の物事がどうでも良くなる生き物らしい。

 おかげで大野くんと鉢合わせだよ。このやろー!


 しかし、今は大野に構っている暇はない!

 即座に逃げなければ殺される。俺は何かを言いかけた大野を無視して校門へ走った。


 あと少しで門外だ!と思った瞬間、首筋に殺気を感じた。思わず右に回避すると、さっきまで居た場所には8本のカッターナイフが刺さっていた。振り返ってみると

「あら?楽斗。何処へ逃げようとしているの?」 


 やはり姉さんか!?

 姉さんが笑顔で近づいてくる。可愛らしい風景だ。

 両手にカッターナイフが無ければ。

 ヤバイ死ぬ。俺は即座に足を走らせた。


「待ちなさい!動くと痛いわよ?」


 姉さんが全力で追いかけてくる。

 ゴメン。動かなくても痛いと思う。


「嫌だ!まだ死にたくない!」


「えっ?無理かな」


 何と悲しきことかな。弟の必死の懇願が即答で否定された。

 そうしている間にも俺と姉さんの距離はグングン縮まっていく。このままではカッターナイフで処刑されるのも時間の問題だ。

 イヤ、助かる方法はある。それは大声で叫んで周りの人を呼ぶ方法だ。今は下校時刻を軽く凌駕している時間帯だが、大声で叫べば人の一人や二人は来るはずだ。あれでも姉さんは表面上は優等生。人が来れば俺への処刑も断念するはずだ。

 しかし、男の俺が女の子に襲われて叫ぶというのは男の恥だ。

 もちろんそんなことは・・・


「助けてー!」


 惨めだが命のためだ!俺は大声で悲鳴を上げ始めた。


「チッ。黙りなさい。人が来ちゃうでしょ!?皆にアンタの処刑を見せるのは私でも気が引けるわ!」


 良かった。作戦成功!


「…まぁいいわ」


 いいのかよ!?

 イヤ、マジで俺死ぬ。少しは躊躇してくれよ!!


「食らいなさい!」


 姉さんの投げたカッターナイフが俺の目の前に迫っていた。


 ヤバイ。避けきれない。

 人は死ぬ直前に走馬灯を見るって本当だったんだな。現に今俺は走馬灯を見ている。ってそんなことしてる場合か!?

 死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。お父さんお母さんさようなら。俺は先に逝きます。皆さんお元気で。

 そして俺は目を閉じた


 キィィィン


 不意に金属音が響き渡った。

 目を開くと俺に向かっていたはずのカッターナイフは地面に突き刺さっていた。

 そして気づく。目の前に居る人に。


「ヒーローは遅れてやってくるもんだからな」


 そう笑いながら告げるのは金属バットを肩に担いだ大野だった。

 

 これが少女漫画とかだったらあれだな。助けられたヒロインは突如現れたヒーローを名乗るこの男に惚れて付き合うって話かな?


 吐き気がしてきた。...オエッ。

 マジで吐きそうなんだけど…。


「アンタ誰?……もしかして楽斗に告ったって奴?」


「いかにも、僕は楽斗くんとお付き合いをさせていただいている大野秀生だ!」


「楽斗、アンタ。ホモだったの?」


 ブルブルと必死に顔を横に振るが取り合ってもらえない。そもそも何で俺が男子と付き合わなきゃいけねぇんだよ!?

 俺にメリットなさすぎるだろ!


「悪いな。義姉ねえさん。僕と楽斗くんはもう性別を超越した愛を分かち合う仲だ。だから楽斗くんを見す見すと見殺しにするわけにはいかないんだ!」


「誰が義姉さんよ!?いいわよ!そこまで言うなら相手になってやろうじゃない!」

 


 ゴゴゴと効果音が付きそうなほど二人は威圧を放っている。二人ともいかにも百戦錬磨の強者といった感じだ。きっとすごい戦いになることだろう。

 そんなことを考えながら俺は二人を無視して家に帰った。

 

 だって怖いんだもん、仕方ないよね?

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