サンタクロースはおばあちゃん
両親は俺が小さい頃に離婚した。そして俺はおばあちゃんと二人で暮らすようになるが…
俺が小さい頃、両親が離婚した。
まぁ、そんなに珍しい事じゃない。どのクラスにだってそんな子
は何人か居たものだ。
でも、ちょっとだけ違うのは、母親についた俺は母親の実家に預
けられ、祖母と二人きりで暮らしたという事だ。
母親は年に数回、俺に逢いに来たが、年を経るにつれてその回数
も少なくなってゆき、ついには姿を見せなくなった。
「おばあちゃん、お母ちゃん今度はいつ来るかなぁ?」
そんな俺の言葉に祖母は、
「お母ちゃんは忙しいんだよ。もうおばあちゃんがお母さんでいい
だろ?」
いつもは優しく何でも丁寧に教えてくれる祖母が、その時だけは
素っ気ない態度を見せた。
祖母のそんな態度に俺は何も言えず、ただ黙ってうなずいた。
今考えれば、生活は決して楽ではなかった。
祖母は亡くなった祖父の年金と自分の年金、それから近所のスー
パーにパートに出て、生活を支えていた。
パートに出るようになったのは、俺が来てからだから、俺の為に
外に働きに出るようになったのだろう。
毎年クリスマスが近くなると、俺は祖母が自慢だった。
今では珍しくも無いが、当時としては、斬新で画期的な洒落たサ
ービス。クリスマスシーズンになると、スーパーのレジの店員は、
赤い三角帽子に赤いサンタ様の上下を着てレジに立った。
店主が新しい物好きで、いち早くそんなサービスを取り入れたの
だ。
学校の帰り、友達とスーパーに寄り、
「あれ、俺のばあちゃんなんだぜ? サンタクロース! スゲーだ
ろ?」
「うん、スゴイね! かっこいい!」
「な!」
当時の子供達は単純でもあったので、俺はクリスマスシーズンに
は英雄になれたのだ。
クリスマスイヴ当日、パートから帰ってくると、お店には黙って
衣装を持ってきたであろうサンタ姿の祖母は、俺にプレゼントを手
渡してくれた。
「おばあちゃん、サンタは枕元にプレゼントを置くんだよ?」
そう言う俺に
「そうなの? まあ、そんな細かい事は言いっこなし。ほれ、開け
てみな」
「もう、おばあちゃんたら」
俺はそう言いながらも嬉しかった。
プレゼントは半額シールのついたお菓子が大半だったけれど。
それでもサンタがうちに来てくれる。そしてサンタは大好きなお
ばあちゃんなのだ。
この行事は俺が中学を卒業するまで続いた。
俺は地元を離れ、都会に出たのだ。
それから二十年がたった。俺も今ではいい大人になった。
子供も出来た。
今年のクリスマスには やっぱり祖母がサンタになるだろう。
やっと祖母を呼び寄せて、一緒に暮らし始めることが出来たのだ。
祖母はひ孫を膝の上に乗せて、覚えたばかりのサンタのまねをし
てくれるに違いない。
「やっぱりおばあちゃんはサンタクロースだよね」
そう言った俺に祖母は
「フォッ、フォッ、フォッ」
と、優しい笑顔を見せた。
おばあちゃんには、いつまでも元気でサンタクロースをやっていて欲しいです。




