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王を継ぐもの  作者: ジェイソン
王都脱出編
9/25

軍の思惑

sideダリス


動きがあったのは、聖堂教会による王都強襲の2日後だった。


『非常呼集!非常呼集!服装問わず、大広間に部隊単位で集合せよッ!繰り返す!大広間に部隊集合ッ!!』


「何ですかぁ!?」


グッスリ昼寝をしていたメリルが奇声をあげて飛び起きる。


その時にはすでにティリア、ソウ、メイロノームはダッシュで部屋を飛び出していた。


「非常呼集だ、メリル!急げ!っつうか担ぐぞ!」


「え?え?ええぇぇ!?」


目を白黒させているメリルを肩に担ぎあげて、そのままダッシュで大広間に向かう。


他の部屋や隊舎からも次々と隊員達が飛び出して大広間に全力で走っていく。


千人近くもの人間が一斉に大広間に突入してくるその様子は圧巻の一言だった。


俺は素早くティリアを見つけると、ソウにメリルを放り投げて自分はティリアの前に滑り込んだ。


素早く服装を整えて、気を付けの姿勢を保持する。


「敬礼ッ!!」


掛け声とともに千人分のザッという靴を床に叩き付ける音が響き、ビシッと敬礼が揃う。


隊員達が見守る中、登壇にメビウス将軍が現れた。


将軍が敬礼をし、直れの号令で一斉に敬礼を解く。


2mを超える筋骨隆々の体躯は、訓練生の機神くらいなら生身で倒せるんじゃないかと噂されるレベル。


「諸君、先日の聖堂教会による王都強襲を、我々軍は許すわけにはいかない」


その言葉に、メイロノームを含むかなりの人間が息を吞む。


今の発言は、リゼの言葉を嘘だと断言したも同然だった。


「今、王都は聖堂教会により制圧されている。政治が教会に掌握されている状態だ。これは許されることではない。教会が政治を行うなど、あってはならないことだ」


しかし続く言葉で、沈黙が広がった。


「よって我々は、明日の0800に王都奪還作戦を発動する。第1師団、第2師団を投入する大規模な作戦だ。王都にいる教会勢力を一掃せよ」


「「「「「ハッ!!」」」」」


下されたのは、明確な攻撃命令だった。


軍に入って5年目、俺はついに初めての実戦に投入されることになった。


「そして、我々は王女を許すわけにもいかない。王と女王を殺害したことは、許されることではない。我々は王都より脱出した、王国側旗艦、ケストレルの撃沈も同時に行う」


「ッ!?」


後ろのティリアが声を漏らさずに悲鳴を上げた。


聖堂教会への攻撃と同時に、王政府への攻撃も行う?


それではまるで、メビウス将軍がこの国を乗っ取ろうとしているようなものだ……!


「この作戦には第3師団、第4師団を投入する。5から9までの師団は、それぞれの持ち場にて待機せよ。第1師団から第4師団は0800までにそれぞれオルトス基地、カナリア基地に集合せよ」


「「「「「ハッ!!」」」」」


俺たちは反射的に声をあげたが、明らかに最初のときよりも声が小さかった。








「し、信じられませんわ!」


隊舎に戻るなり、メイロノームが叫ぶ。


「聞きました!?あの男、王位を奪取するつもりですわよ!?」


「聖堂教会と王政府のどちらも潰す。まさにそういう攻撃命令だったわね……」


この時はメイロノームをスルーすることは流石にしなかった。


隊舎に戻り、全員が頭を抱え込んで考える。


作戦開始の調整時刻のことを考えれば、あまりゆっくりもしていられない。


すぐに準備を整えてオルトス基地に行かなければいけない。


「脱走しよう」


俺はハッキリと言葉にした。


「脱走!?正気ッ!?脱走なんモガンモガ……」


「馬鹿、声がでけぇよ」


ソウがアリスの口を覆い、こちらに目くばせする。


「なぁダリス。なんで脱走するんだ?」


「それは」


「私とダリスは、王都を守るために軍に入ったからよ。王政府を守るためにね」


俺の言葉をティリアが遮って答える。


「ね?」


「いや、そうだけど俺の台詞を奪うなよ……」


「私も賛成ですわ!機神乗りは兵士である前に騎士ですわ!騎士は忠義に背かず、騎士道を歩むもの。義に反する行動は許されませんわ!」


「私は反対!脱走なんてしたら死ぬって!脱走兵に誰が差し向けられるか知ってるでしょ!?軍のシングルナンバー、9の死神だよ!?無理無理無理!」


「俺も反対だ。脱走してどこに行く?それに俺たちは軍に拾ってもらって育ててもらった身だぜ。それが仕事放り投げて逃げるなんて……そっちのほうが義に反するんじゃねぇのか?」


「私は……みなさんの決定に従います……」


メリルは首を振って、うつむいてそう答えた。


「いいのよ、メリル。反対でも」


ティリアがメリルに優しく声をかけるが、それにもメリルは首を振ってこたえる。


「いえ。年少の私ではきっと、正しい判断ができないと思います。私は、皆さんと一緒ならどこにでも行けます」


「メリル……」


メリルの忠誠心はきっと隊のみんなに向けられているんだ。


メリルの信頼を裏切らないためにも、ここは正しい決断をする必要がある。


「まずアリスの意見だけど……ぶっちゃけ、どの陣営にいても死ぬ危険はあると思うんだ。

王都には最精鋭の聖堂騎士団と聖女、聖女付のコーデリアがいる。

聖女と聖女付きはそれぞれシングルナンバーが相手するとしても、聖堂騎士団とは俺たちが戦わなくちゃいけない。さっきの画面のアイツらと」


「でも、生き残る可能性はこっちのほうが高いよ!」


「どうせ戦って死ぬんだ。どうせなら付く陣営くらいは自分で選びたいもんだぜ」


「ってことは、ここを脱出してケストレルに向かうってことか?」


「俺はそのつもりだ」


「私は王都に行くつもりでしたけど……まぁ、いいですわよ。正直聖女様が嘘をついているなんて信じられないですけれど」


なんと珍しいこともあったもので、あのメイロノームが素直に譲歩してくれた。


「ケストレルは最新鋭のステルス機能を備えている。どうやって見つける?」


「俺の『能力』、人力レーダーで見つけられるはずだ。ステルスなら全部見破れる。王政府はたぶん、オルギアス国王の故郷であるカロル地方に行くはずだ」


「なるほどな……」


ソウは俺の言葉を聞き、少しの間目をつぶって何事かブツブツつぶやいたかと思うと、よし、と頷いてガッツポーズした。


「行くか!ケストレル!」


「「「「「おう!」」」」」


「あぁ……死にたくないなぁ……」


5名の気合いの声と、1名の哀愁漂う呟きにより、俺たち第11狙撃小隊の軍からの脱走が決定した。

これからはこの後書きで、語句の紹介や設定の説明を行っていこうと思います。


軽量2脚……機動性を最優先した機神の2本足のこと。弱点としては装甲の薄さや積載量が低い(あまり武器を積めない)こと。

攪乱や削りが主な役割だが、凄腕のパイロットが使えば恐ろしい強さを誇る。

ジェイソン、メビウスが主な使用者。

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