逆転の秘策
sideジェイソン
チェインガンが吹っ飛んだのはかなり痛い。
これで24連ミサでも撃たれれば、ひょっとしたら1発くらいはもらうかもしれない。
そしてリゼのミサイルは1発でも貰えば消し炭になることは確かめるまでもない。
ブーストを細かく吹かして建物を盾にしてリゼの猛撃を凌ぐ。
上空から両手ライフル、24連ミサ、巨大魔力弾を雨の如く浴びせてくる。
幸いなのは先ほどのような1地区を丸ごと吹き飛ばす魔力砲撃が飛んでこないことくらいか。
しかしミサイルを避けきるとその先に撃ち込まれているライフルにやられ、俺の機神は着実に壊れつつあった。
アーリアにはあんな風に軽口を叩いたが、操作技術は思い切り落ちていた。
昔の俺なら……なんて言ってられない。
なんとしても御嬢様が逃げる時間を稼ぐ必要があった。
と、リゼの機体が上空でよろめいた。
先ほどの24連ミサから逃げ切ったアーリアがリゼの頭部を狙撃したのだ。
衝撃で揺れたリゼの機体は射撃が止まり、一瞬空中で静止する。
千載一遇のチャンスを見逃す俺ではなかった。
反射的に両ペダルを蹴り込み、一気に急加速して上昇する。
「行ける……ッ!!」
大鎌を構えて、リゼの機体に突っ込む。
頭部への衝撃でリゼは俺の姿を捉えることもできていないはずだ。
「喰らえええええぇぇッ!」
リゼの機体を両断する、全力の大鎌が振るわれた。
『ジェイソン……』
無線からリゼの声が聞こえてくる。
振り切った大鎌は、何も抉り取ってはいなかった。
ただ空を斬った機神は、空中で体勢を崩す。
『衰えるものなのですね』
リゼは一瞬で後退し、格納ブレードを構えていた。
同時に右手のライフルがアーリアに向けて放たれた。
逃げようとしたアーリアだったが、無理なタイミングで狙撃をしたことから回避しきれなかった。
魔力弾がアーリアの右手を撃ち抜き、スナイパーライフルが爆発する。
咄嗟に左手のライフルを構え1発撃つも、次の瞬間に飛んできた魔力弾に撃ち抜かれた。
そしてリゼは、射撃と同時にこちらに飛び込んできて格納ブレードを振るった。
「クッ……!」
それを何とか大鎌の柄で受けたが、そのために大鎌を両断されてしまった。
リゼはそのまま左のライフルを構え、こちらの頭に突き付ける。
「おいリゼ、上を見ろ!」
『!?』
俺の言葉を誘導と受け取って無視することをしなかったのは、リゼのセンスの証だろう。
引き金を引こうとしたリゼは咄嗟にブーストをかけて俺の上からどいた。
リゼが消えた次の瞬間、上から折れた大鎌が降ってくる。
俺が先ほど大鎌を両断された瞬間にそれを蹴り上げ、アーリアがそれを最後の弾で撃って反射させたのだ。
俺は落下しながらそれをキャッチして、ブーストをかけて全力でその場を離脱した。
リゼが俺の言葉を信じなければ、リゼはあの大鎌で真っ二つに両断されていただろう。
「やれると思ったんだがな……」
『しゃーないしゃーない。それよりそろそろ時間でしょ?これ時間読み間違えてたらかなり悲惨だけど』
俺はサッと腕時計の表示を見る。
俺が目標としていた時間に、ちょうど今なるところだった。
『……なるほど、逃げ切りましたか』
リゼの悔しそうな声が響く。
リゼのあの超機動は、それ相応の魔力が要求される。
恐らく、リゼにはもうほとんど魔力が残されていないはずだ。
『今日はここまでですね。撤退します』
俺の予想を裏付けるように、リゼは来た時と同じくらいの超スピードで王都から撤退して行った。
『わーお、生きてるよ私たち。ビックリ』
「俺もあのクソ火力の砲撃撃たれた瞬間、死んだなって思ったけどな」
『私たちも早く逃げよ。たぶんすぐにコーデリア辺りが飛んでくるよ。私たち瞬殺されるって』
「あぁ……そうしよう。御嬢様も待っている」
主人公補正>死亡フラグ