機神起動
sideヴィクトリア
コックピットは、私が座っても少し余裕があるくらいの大きさだ。
目の前にメインカメラからの画像を映し出す画面が、その下に火器管制に関するボタンがずらり、頭上に動力経路に関するスイッチがずらりとある。
自然に力を抜いて置いた腕にぴったり沿うようにレバーがあり、レバーの先を丁度握り込めるようになっている。
握り込んだ指がちょうどボタンを押せるように5つずつあり、両足元にはフットペダルがある。
他にもエアバックや、給水用のチューブなど色々なものがゴチャゴチャとある。
目を閉じて魔力を指先に集中させ、機体に流し込んでいく。
機体に命が吹き込まれる。
『メインシステム、戦闘モード起動』
目の前の画面に映像が映る。
『こちらジェイソン。御嬢様、聞こえますか?』
「あぁ、良く聞こえる」
ジェイソンは訓練場の外の建物から、私を見下ろしながら指示を出す。
『今から訓練場に無人機を2体投入します。御嬢様にはこれを撃破してもらいます。速やかに、なるべくダメージを受けずに撃破してください』
「了解」
頭上のダイヤルを調節し、出力を戦闘状態に上げる。
体から魔力が吸い出される感覚が強くなる。
しかしまだまだ魔力に余裕はあった。
『それでは投入します。作戦開始』
ジェイソンの言葉と共に、入口から機神が2機現れる。
建物にいる訓練場の職員が魔法で操作している無人機だ。
無人機の1機がいきなり6連ミサを発射してきた。
さらに右手に構えたライフルから実弾を乱射してくる。
無人機は実弾オンリーだ。
私はレバーを引きながら中指を引き込み、同時に右のフットペダルを踏み込む。
足裏から魔力を噴射して右に急加速で横滑りする。
同時に左の人差し指を押し込み、左手武装の魔力弾を発射する。
この魔力弾はロックオンした相手を追尾するという特性があり、相手の攻撃をよけながらでもロックオンさえしていれば直撃が見込める。
左手の指を引き続けながら、画面右のレーダーをサッと見る。
射撃しなかったほうの無人機はブーストを吹かして私の機神の左を取っていた。
『注意、ロックオン』
機体から注意を促す音声が響き、自分の機体がロックオンされたことを知る。
すぐにロックオンを振り切らなければ、すぐに弾が飛んでくる。
両足のペダルを一気に踏み込み、急加速。
上手くペダルを踏む強さを調節して、私が先ほど魔力弾を撃った無人機に接近する。
無人機が左手のブレードを構える。
右のフットペダルを思い切り蹴り込みながら、左のフットペダルを押し込んだ。
すると機神は右方向に90度クルッと旋回しつつ、左に回り込んだ。
つまり、無人機にとっては右側に。
右手の小指を握り込むと、腕に格納されていたブレードが飛び出す。
そのまま一閃、腕を振り切ると無人機の頭が吹き飛んだ。
ダメ押しとばかりにさらに回り込みながら、魔力弾を数発撃って風穴を開けてやる。
もう1機の無人機は、ちょうど今破壊した無人機の向こう側にいた。
『ロックオンされました』
警告音が鳴り響き、私は両手の人差し指を引き込んだ。
右の実弾マシンガン、左の魔力弾ライフルが次々と弾を放ち、無人機を襲う。
マシンガンで誘導し、本命の魔力誘導弾で直撃狙い。
それが見事に的中し、無人機は両腕を撃ち抜かれてその場で戦闘不能となった。
チュートリアルの敵がどう見てもチュートリアルのレベルじゃない