表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/36

「ヘイ! Mr,サンシャイン!」by悪魔

「おい、ミスタ・サンシャイン。約束が違うだろ。

 俺とミスタ・ブルーミングの取り分がどうして一緒なんだ」

 めんどくさい奴だ。俺は、そいつの闘牛みたいに怒り狂った目に辟易している。

 いっそ殺しちまうか、こいつが大統領を殺しちまったように。

「そう怒るなよ。ミスタ・ブルーミングは良くやってくれたじゃねえか」

「ああ、あいつは良くやったよ。おかげでこっちは形無しだ」

 駄犬め。素直にしていれば長生きできたものを。

 これ以上、一言でも突っかかってくるようならば、俺はこいつを殺してしまおうと思った。

「はっきり言おう。ミスタ・ブルーアイ。君は今まで良くやってくれたが

 今の君に大きな仕事を任せることはできない。お払い箱なんだ」

「なんだと」

 ブルーアイの瞳が真っ赤に燃え上がる。

 だが、俺は少しもたじろがない。殺そうと思えばいつだって殺せるのだ。

 スキルだけをとって比べれば、俺の方が数段上だった。

「謝るなら今が最後のチャンスだ。ミスタ・サンシャイン

 その腐った目でも俺が誰だか分かるだろ。殺し屋ランク一位のミスタ・ブルーアイだぜ

 それを忘れてもらっちゃ困……」

 言い切らないうちに、そいつの心臓は弾けとんだ。

 バレルの銃口からは小さく煙が燻っている。

 ミスタ・サンシャイン。それは引退した史上最強の殺し屋の名前だ。


「ねえ、あんたの若い頃の冒険談を聞かせてよ。ワクワクするやつをさ」

 ミス・クレッシェンドはカラリカラリトグラスの中の氷塊を揺らして、俺の肩に寄り添った。

 酔っ払ったとき、妙に可愛らしく見えるのがこの女の欠点だ。

「どれもこれも染みったれた人殺しの話だ」

「そりゃあ、あんた人殺しだからよ。でも、どうして辞めたんだい

 五年前に引退した時だってまだ35歳だったんでしょ。まだ現役だったのに」

 今だって現役の人殺しさ。今さっきだって飼い犬を一匹始末してきたんだ。

「子供の頃、俺は絵描きになるのが夢だったんだ」

「へえ、意外ね」

 言いつつ、ミス・クレッシェンドは新しく酒を注ぎなおしていた。

 こいつ、聞いているのか。まあ、訊いていなくても良い。今夜は感傷に浸りたい気分だ。

「だが、筆一本で生きていくのは厳しい。俺は筆をとりながらでも働ける口はないかと方々を回った。

 そんな仕事あるわけない。そう結論付けようとしたときだったな。この稼業をしったのは」

「金にはなるし、実働時間はそれほどないものね」

「そうだな。俺も最初はこれなら上手いことやれると思い上がっていた

 だが、実際はそんな楽な仕事じゃあない。気を抜けば命をとられる職だ」

「もしかして、絵を描きたくなったから引退したの?」

 まさか。彼女が生真面目に言うので、俺は思わず噴出した。

 本当に絵を描きたいのなら、裏方も辞めているさ。

 今だって、命を危険に晒しているのは同じだ。

「なんで笑うのよ」

 ミス・クレッシェンドは怒った振りをして、私の肩を軽く叩いた。

「すまない。だが、それは違うんだ。俺は、自分の中にあったインク、

 つまり絵を描きたいという衝動が枯れはてていたことに気付いちまたのさ。

 殺傷者数ばかりが気になって、それ以外の全てを糞のように扱っていた。

 そんな自分が空しくなって表舞台を降りた」

「ふうん。それであんたは何がしたいのさ。ミスタ・サンシャイン」

「さあね。自分のことなんて、どこ吹く風さ」

 明日生きているのかも分からない、こんな立場だ。

 未来のことなんか考えている余裕なんかない。

 俺の希望は、今日を生き延びて明日の朝日を拝むことだけだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ