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人に好かれる
嫌われたくない。だけど全員に好かれるなんて無理だ。だから、嫌われる道を選んだ。
どこかの賢い人は言った。
『全員に好かれることは不可能だが、全員に嫌われることも不可能』
嫌われることを恐れ、自分を「いい人」に見せかけていた自分は、この言葉を聞いて目をさました。
そうだ、好かれようと思うから辛いんだ。
嫌われようとすれば、楽になれるではないか。どうせ一度は諦めたこの世界。どうなろうと知らない。
それからは、人に嫌われるようなことばかりをした。
悪口、陰口、毒舌。
気がつけば、自分はある一部の熱狂的な支持者により、祭り上げられていた。
人の前に立ち、自分は歓声と怒号を浴びている。
嫌われてはいるが、好かれてもいる。不思議な光景だった。
自分の好き勝手に政治を押し進めたら、国のトップになっていた。
独裁者として、これから大国に戦を仕掛ける号令をかける。
これで正しかったのか。
嫌われ者の自分が人に好かれ、浮かれた。何が正義か、何が大義か、わからなくなっていた。
了