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あなたの真実

おかかえ科学者に、人の本質を見抜けるメガネを作ってもらった女は、運命の人に出会えるのか。

 私はなかなかの美人でお金持ち。結婚適齢期……を若干過ぎてしまい、結婚をアセる三十二才。でも、美しさにはさらなる研きがかかる年頃。女社長として、テレビにもとりあげられた。

 しかし、私はどうにも男運が悪い。みーんな金目当て。この人は違う、と思っても、やっぱり金のニオイには敏感なんです。

 そこで、私のおかかえの科学者に、素敵なものを作ってもらいました。

 『人の心が顔になるメガネ』

 つまり、心が綺麗な人は顔が美しく、そうでない人は醜く見えるってわけ。これで素敵な男性を見付けるわ!

 試しに、今までのダメ男に会ってみた。やっぱり酷いもの。死神がいたらこんな顔かしら、っていう位。ちなみに、私も鏡で自分の顔を見てみたけれど、なかなか似合っていたわ。黒縁がちょっと似合わないけれど。……変に写らなくてよかった。いつもとさして変わらない。

 一応、性格の悪い自覚はあるけれど、自分自身は変わらないのだろうか?

 不思議に思いつつ、私はそのメガネを持ち歩くことにした。

 そして数ヶ月。あるパーティで素敵な男性が!

 なんて端正な顔立ち……。

「君、視力悪いの?」

「いえ、伊達メガネで」

 もっと、デザインにも凝ればよかった。私はうつむく。

 私達はなんと、結婚を前提にお付きあいすることになった。心の美しさは保証済みで、とても優しく金にがめつくない。まさに理想。

 でも、メガネを外して、この人の本当の顔を見たい欲求にかられる。もしタイプの顔じゃなかったらどうしよう。けれど、これから外さないわけにはいけない日もあるわけで、だったら早いうちに見てしまった方がいいかもしれない。

 どんな顔でも、この人を愛そう。覚悟を決めて、私はメガネを外して彼に会いに行った。初デートです。

 待ち合わせは人がごったがえす休日の駅前。先に見つけられないように、私は変装した。金色のウイッグに、ツバの大きな帽子。ティアドロップ型のサングラス。完璧、外国人に見える。

 しかし、街の中、見慣れたあの顔はない。あまりの人混みに眩暈がする。もうあの人とは会えないのだろうか。待ち合わせ時間を十分過ぎた。見付からない。

 私がしばらく辺りを見回していると、交差点の向こうから走ってくる男の人がいた。冴えない人。顔だけなら絶対に好きにならないタイプ。でもわかる。彼だ。直感でそう思った。私はその彼の側に歩いていった。

 縁があるなら顔がわからなくても大丈夫。私は緊張しながらその背中をぽんと叩いた。



  了


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