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月が綺麗ですね

読書感想文のやり直しに付き合うものの、夏目漱石の「月が綺麗ですね」について疑問を呈する謙太郎。

その真相とは。

「月が綺麗ですね、なんて言ったところで、意味なんか通じないよな」

 謙太郎の補習は、夏目漱石の「こころ」の読書感想文だった。

 国語教師から、やり直しをくらった。感想文を三行ですますなど、本好きとして許しがたい。ちゃんとした感想文を提出してもらうためにこうして付き合ってあげているのに、関係ないことで手を止める。

「よく知ってるね、感想文すら書けないくせに」

「ネットを見たから、ついでに」

 ネットにはびこる感想文の『模範回答』という名の文章をパクる気だったのか。

 勝ち誇った顔で言われても、盗人猛々しいというか。謙太郎は、ちゃんと勉強すればクラスで一番頭がいいと思う。なかなかやる気にならないところが問題だ。

「それだって逸話だから、実際に言ったかはわからないらしい」

「さすが、詳しいね。月が綺麗ですね、なんて言われても、そうですねとしか返せない。自分が好きって気持ちが伝わるかなぁ」

「いいから、感想文書いてよ。あとちょっとだから」

 イライラを抑えながら、謙太郎の前に置かれた原稿用紙をトントン叩く。

「やっぱり伝わらないよ、こんなまどろっこしい言い方」

 謙太郎はこちらをじっと見ると、潤ませた目で口を開く。

「三回目。月が綺麗ですね」

 わたしに言っているのだとわかるころには、謙太郎は感想文を仕上げていた。



  了

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