占いはお好きですか?
占いの看板。
何時になったら理想の人に出会えるんだろうか?
フラフラと駅の地下のビルの占いの看板に吸い込まれたようについ……
重い扉を開け中に入ると、奥から「どうぞ」という声が聞こえた。
大丈夫かな?
少し不安になったが、勇気を出して入っていく。
黒いカーテンを開け中に入ると、水晶の前に黒いドレスを着たおネエさんがいた。
おネエさんの年齢は不詳。
爪も黒いマニキュアを塗って、黒いベールを被っている。
いかにも占い師。
部屋は机を一つとお客さん用の椅子が二つ置いてあり、それでいっぱいだった。
狭い。
そして暗い。
薄暗い。
占い師はその狭い部屋の中で手を水晶の上に翳す。
きゃー不気味!!
「今日は何を占いましょうか?」
思ったより、優しい声だった。
「……恋愛運を……占って下さい」
ビクビクしながら言ってみた。
「そこへ座って」
あまりの不気味さに座ることすら忘れていた。
わたしは言われるまま、椅子に座った。
これが思ったより心地いい。
さっきまでの不安な気持ちが薄れていく……
何だか眠くなってきたァ。
「この水晶をよぉく見ていてね……」
その声も遠ざかっていく。
それは未来?
結婚している?
だって子供の手を引いているもの。
……でも、一人で育てているのね。
働いて、子育てして必死で生きている。
あー子供が病気している。
何やってんだろ、わたし。
早く保育園にお迎えにいかなきゃいけないのに、仕事抜け出せないでいるよ。
やっと、仕事抜け出して病院へ連れてったら、肺炎になってるって。
今度は大きな病院へタクシーで連れていって、入院。
……手遅れ?
そんな……嘘でしょ?
……?
今度は山の中、真っ赤な彼岸花?
どこからともなく聞こえる声?
さっきの占い師の声……
足元の花があなたの花。
ほら、踏んじゃうとあなたの寿命が無くなるわよ。
でも、その花はもうすぐ枯れるのよ。
そこは水が無いから、カラカラに渇いているから。
水辺に植え替えたら、また元気になるかも。
わたしはその声に突き動かされるように、水辺を捜す。
遠く離れたところに水はある。
今度はスコップ……
都合良く、スコップが足元にあった。
彼岸花の根元は球根だから、傷付けないように気をつけて掘る。
泥まみれの手でそぉっと球根を土の中から掘り起こす。
そして水辺を見る。
枯れないように花を折らないように、大事にして植え替えようと。
早足で水辺へ向かう。
え?
さっきまであった水辺、何処?
無い!!
占いってそういうことなの。
先を知ってどうするの?
先を知れば、結婚する?
先を知れば、あの花のように枯れることだってある。
運命は変わるもの。
立ち向かっていきなさい。
知らぬが仏。
いつのまにか、駅前に立っていた。
でも、やっぱり人生の先は知りたいです。