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4−4 鍋屋ゴンザレス食い倒れ

ファル「はー……お腹すいたね……」


リン「えっ、また!?」


タクマ「よし、次は……飯だ! 飯! 鍋だ!」


リュウジ「異世界にも爆買いってあるんだな……」


グラム「さぁ、満腹になる前に運ぶぞ、誰がこの荷物を!」


ヴェルザ「芸術の代償は、筋肉痛なのよ!」


大荷物を抱えた一行は、満足げな笑顔とともに、セラフィード中央の大食堂へ向かった。

——そして、伝説の《鍋屋ゴンザレス》にたどり着く。


大荷物を肩に担ぎ、あらゆる袋をぶら下げた一行は、セラフィード中央街の裏通りにある、年季の入った暖簾を見上げた。


暖簾にはこう書いてある——。


《鍋処 ゴンザレス —— 旅人よ、鍋で語れ》


「……なんか、めっちゃイイ店感ある」


「むしろ今すぐ語りたいよ、鍋で」


ドゥーガがギシギシと大鍋を指差し、ヴェルザがため息混じりに「美食と芸術は隣り合う」と呟く。ファルは店先の鍋看板のスープの絵に釘付けである。


こうして——タクマ、リュウジ、リン、テルキ、グラム、セレノ、ヴェルザ、ドゥーガ、そしてファル。

転生した者とゲーム世界の英雄たちは、鍋の湯気に誘われるように扉をくぐった。


ゴンザレスの店内は天井が高く、梁には魔法鍋が吊るされ、常に温度が一定に保たれている。内装は石造りと木材の融合、古びた調度品が「旅の途中の一時」を優しく受け止めてくれる。


「さて、何鍋にしようか」


タクマがメニューをめくると、そこには

・紅焔の辛鍋

・聖樹のミルク鍋

・大地の八種根菜鍋

・深海モンスター出汁の塩鍋


など、文字からして美味そうな鍋がズラリ。


「全部ください!!」

とファルが先陣を切った。


即座に店員が「かしこまりましたァ!」と叫び、厨房の鍋が一斉に唸りを上げる。


その様子を見ながら、鍋が配膳されるまでの間、自然と全員が口を開いた。


「セラフィード、なんだかんだで楽しかったですね」リンが笑いながら言った。


「服買って、アイテム爆買いして……ヴェルザさんのボンテージ、見たかったっス」


「アレはアートとしての挑戦よ、今度ね」


「いったいいつ着る気なんだろう……」とテルキが呟きながら、届いた『聖樹のミルク鍋』に野菜を入れる。


「俺は……今、RPGを『プレイしてる側』じゃなくて、RPGの中に居るんだって、改めて思ったよ」リュウジがぽつりと呟くと、セレノが「理の中に入るというのは、こういうことか」と相槌を打った。


「転生して初めて、『物語の重み』ってものを感じたよな」

タクマが酒を酌みながら呟くと、グラムが「重みがあるから、語れるんだよ。人生も、鍋もな」と言って、ぐいと一口飲んだ。


「さすが名言製造機」


「グラム語録、あとでまとめておこう」


——そして、食べ終えたその時。


店の奥で魔導ランプが鳴った。


〈ピンポーン レムナント再出発 15分前です〉


「うおおおお! 忘れてたー!」


全員で大急ぎ、食器を置き、荷物を担ぎ、走り出す。


「お土産持った!?」


「魔導券(切符)どこ!?」


「服忘れたー!」


「誰かファル見た!?」


「ファルなら僕のバッグで寝てまーす!」


大騒ぎの末、ギリギリで魔導列車レムナントに滑り込む。


ホームにはもう誰もいない。新しい乗客も乗り込んだようだ。


けれど、温かい食事と笑い声が、いまも街のどこかに残っている気がした。

レムナントの蒸気がひとつ、夜空へと立ち上る。


セラフィードの魔導ランプが、最後に彼らの背中を、静かに見送っていた。

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