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4−2 セラフィード街歩き~後編

——『迷える三賢人』、セラフィードを往く。


「ふむ……衣装、ね」


《魔導列車レムナント》から降り立った三人の姿は、ひときわ目を引いていた。なにせこの三人——。


筋骨隆々、身の丈二メートルを超す剣豪グラム。


月と星の導きを語る叡智の魔術士セレノ。


異国風ドレスに身を包んだ、芸術と召喚の才媛ヴェルザ。


この三人が揃って歩けば、どこから見ても「本物の英雄パーティ」にしか見えない。セラフィードの市民たちが、道を開け、ひそひそと憧れの目を送る。


「さすがに目立ってるな……」


グラムが背中の大剣ストームブリンガーを撫でながら、照れ臭そうに笑った。


「目立つのは当然でしょう。伝説のパーティが私たちなのですから」


ヴェルザはふわりとスカートを揺らしながら、さっそくウィンドウショッピングに目を輝かせていた。


「さあ、行きますよ。今日は新しい衣装を手に入れるのです。ジョブに合わせて、粋に、華やかに——そう、時に背徳的に!」


「背徳的……?」

グラムが眉をひそめた。


「どこに行こうとしてるんだ……?」



◆ 第一の店:戦士用専門店【インペリアル・スチール】

「……やっぱり、こういう場所は落ち着くな」

分厚い鎧、革製のグリーヴ、魔導金属で鍛えた盾と籠手がずらりと並ぶ、筋肉が喜びそうな空間。

まるで軍隊と騎士団の魂がごちゃ混ぜになって爆発したかのような店内で、グラムは上機嫌に試着を始めていた。


「おっ、これはどうだ?」

彼が着たのは漆黒のプレートメイル。胸元には雷鳴をかたどった紋章。


「なんというか、こう……雷神っぽくないか?」


「ええ、見た目は極めて神話的ですわね。ですが……」


ヴェルザが顎に手を当てて小首をかしげる。

「筋肉の主張が、服を越えてますのよ、グラム様。もはや服が『着せられている側』」


「……褒めてるのか、それは?」



◆ 第二の店:魔術士専用【アストラル・ヴェイル】

「ここの布地は良い……魔力の伝導率が極めて高い」

セレノは、まるで星座のような淡青色のローブを手に取り、光にかざしていた。布の上には、夜空を模した銀糸の刺繍が施され、まさに“着る天文台”。


「うむ、これなら詠唱の練度が保てる。呪文の干渉も起きにくい」


「またマニアックなところを突いて……」

ヴェルザが苦笑する横で、グラムは黒いベレー帽をかぶせられていた。


「これ、どうだ? お前たちも魔法っぽい帽子かぶってるしな。俺もたまには」


「似合わないこともありませんが……魔術士というより、『農夫の秋支度』ですわね」


「帰ろうかな」



■ 第三の店:召喚士専門店【アムブロシア・スタジオ】

ここから、混沌が加速する。


「お待たせしましたー!お三方、それぞれのジョブに合わせてコーディネートいたしました!」


出てきた店員が差し出したのは——。


セレノ用:白銀の長衣に浮遊する星のオーナメント


グラム用:重厚なビーストレザーでできた肩当てとケープ


ヴェルザ用:黒と紅のボンテージ風の革ドレス


「……」

「……」

「……」


「……これを、私に?」とセレノ。


「戦場で光りすぎて、魔法撃つ前に撃たれそうだ」とグラム。


そして、

「ふふ……よいでしょう」

ヴェルザが受け取ったのは、背中が大きく開いた妖艶なドレス。腰にはベルト型スチームペンホルダー、背中のラインには小さな魔導召喚サークルが浮かぶ。


「芸術とは、恥を超えて真理に至るもの!」


「真理ってなんだよ!?」


セレノとグラムの叫びもむなしく、ヴェルザはそのまま試着室から——。


「さあ、貴方たちの召喚士☆ヴェルザ、降臨よ♪」


キラキラと光るスチームの中、脚線美を煌めかせながら出てきた。


店内、拍手喝采。


「似合いすぎるんだよ……!」とグラムが目を覆う横で、


「ふむ……召喚獣も赤面するレベルだな……」とセレノ。


「いいか、絶対にこのボンテージ姿でアイテムショップには入るなよ!? まともな買い物にならんからな!」


「えー? 似合ってるってさっき言ってくれたわよ?」


「えっ、店員だよ! 俺じゃない!」


「まぁまぁ。衣装選びも『戦』のうち。あとはアイテム調達ですな」

セレノの呟きに、グラムとヴェルザも頷いた。


そして、彼らはゆっくりと繁華街の中心——《アルケミィ通り》へと歩を進めるのだった。

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