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3-4 地下ターミナルへ

星脈塔の深部、星脈網のコアは暴走し、都市全体を混沌へと陥れていた。


その原因は、《魔将六傑》の一人、禁忌ラミグレイン。

巨大な脳髄にクラゲのような無数の触手を垂らし、塔の上空で蠢いていた。


触手が一斉に襲いかかる。


グラムの前に神経鞭が地面を裂きながら飛来し、彼の体を拘束する。

その瞬間、言葉ではない“声”が脳内に響く。


「きみの かこ、すきだよ。なつかしい におい」


グラムは歯を食いしばりながら叫ぶ。

「精神攻撃型だ! 皆、気をしっかり持てい!」


テルキにも触手が迫る。身を翻しながら叫ぶ。

「な、気持ち悪ぅ!」


ラミグレインの『声』が続く。

「それ、なにを なおす つもり なの?」


テルキが言いかけたとき。


——ズドン。


音すら伴わずに、テルキの体が宙を飛び、鉄柱に叩きつけられた。

「テルキ!」


呼吸は……かすかにある。だが、意識は昏く閉ざされていた。

「『戦闘不能』……!? テルキが!?」


リンが目を見開く。

「こんなの、普通じゃない!」


リュウジが急いで詠唱を開始する。

「マジックロッド:リザレクト・プロトコル!」


テルキの身体に光が集まり、意識を取り戻す。

「っ……ぐ、グラフィック……バグって……ません……?」


「生きてりゃバグっててもいい!」


タクマは驚愕しながら叫ぶ。

「こんな攻撃はプログラムされてないはず、いったいどこから改変がかかっているんだ!?」


リンとヴェルザも触手に絡まれる。

リンは不快感を露わにし、ヴェルザは怒りを込めて叫ぶ。


「嫌なこと言うねぇ、もう」


「他人の過去を覗き込むな!お前が消えろ!」


ファムは怯えながら叫ぶ。

「あー、もうヤダ、ヤダ〜、このボスちょっとおかしい〜!リュウジ、セレノどうやってこの脳味噌クラゲ倒すの!?」


リュウジとセレノは次の作戦を用意していた。


「みんな、いまからこの塔の床を6F分、全フロアを一度にパージする。地下フロアまで一気に落下するから、うまくラミグレインを叩きつけてくれ!」


一同は驚きながらも応える。

「お……おう!」


セレノが魔力を込めて詠唱する。


「いまこそ命ず。星脈塔よ、階層浄化を始動せよ——《パージ・オブ・フロア》!」


機械式の床のボルトが壁面との接続を解除し、6Fから1Fまでが崩れ去る。


タクマ、グラム、リン、ヴェルザ、テルキ、ファルが触手に絡まれながら、バランスを取りながら落下していく。


ラミグレインは空中から地下面に叩き付けられる。

地下1F——そこは魔道レールの車両基地《星界ターミナル》だった。


ラミグレインが呻くように“声”を発する。


「きみたち だけは、ちがった のに」


「……たおす、ため に、こわれる なんて、わらえるよね」


「さいご、だけ は……ほんとう の こえ で いわせて」


リュウジは叫ぶ。

「うるせぇ、発車オーライだ!」


セレノが魔力の出力を最大限に上げ、《魔導列車レムナント》が猛スピードで走って来る。

鉄仮面のような先頭車両がラミグレインを轢き潰す。


ラミグレインは呻き声と共に崩れ落ちた。虚ろな瞳が宙を彷徨い、やがて静かに閉じる。


「……ぼくは、 ただし かった はず……」


光の粒子に還りながら、ラミグレインはそう呟いた。残ったのは歪んだ思念の断片だけだった。


塔と都市は救われ、セレノも本来の役割を取り戻す。

ラミグレインが残していったドロップアイテム《真理の欠片:∞(インフィニティ)》を入手した。


これにより、天文都市オルディネの星の運行と魔導レールの運行は半永久的に維持できるようになった。



テルキが呟く。

「その……だいぶボス戦、変わってるっスよね」


リュウジが応える。

「あのボスがそもそも喋ってくる精神攻撃みたいなのは設計にないし、普通に倒したら、魔導レールが再開するシナリオだったよな……俺が車掌やるとは思わなかった」


タクマが考え込む。

「誰かが誰かの代わりに転生しているだけじゃなくて、見たことない攻撃をするのは何かの『仕掛け』なのか、それとも単なる『バグ』なのか……?」


リュウジが力強く宣言する。

「バグならひとつずつ直せば必ず元の『エンブレIII』に戻せるはずだ。プログラマーに組めないものはねぇ!」


タクマが笑いながら言う。

「じゃあ、まず家庭サービスしないとな、車掌さん!」


リュウジが頷く。

「分かったよ!」


魔導列車レムナントは、タクマたちを乗せ、魔導レールの発着場・星界ターミナルを出発。西の隣国ガイラム帝国を目指す。


——振り返るとオルディネの暗雲は消え去っていた。

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