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不思議をひらく金の鍵

プラモデルという名のガム

プラモデルという名のガム


『プラモデル』この言葉に異常なこだわりがあり忘れられない思い出がある。

小学校2年生のときのことだ、友達が5人集まった時何がきっかけか忘れたが、ガムを買った1個10円のガムだ。みんな10円のおこづかいをもらってカムを一つずつ買った。カムの包みにプ・ラ・モ・デ・ルの文字がひとつ書いてある。このプ・ラ・モ・デ・ルそれぞれを1枚ずつ5枚集めると本物の「プラモデル」がもらえるという当たりつきのガムだ。


 5人が一つずつ買ったガム、最初に誰かがガムの包みを開けた、「おれプだ」そして次に「おれはモだ」というふうに一人ずつあけていった。私のガムの文字は「ル」だった。私の名前の一時だったからよく覚えている。「プ・ラ・モ・ル」あとデがでれば全部そろう。最後に残ったTくんが「デ」でろ!と大きな声で言うと本当にデが出た。

 

 5人の力で全部を当てたとなるとこれは喜びもひとしおで最高に盛り上がった。特に最後のTくん最後の文字を引き当て、いかにも自分の手柄のように誇らしげだった。さてそろったのはいいがこれを応募して「プラモデル」をもらうのは誰か?それが問題になってくる。みんなで当てたのだからみんなで遊ぼう!それについては5人異議なしだ。じゃあ誰が応募する?公平にじゃんけんにしよう!そう決めて5人でじゃんけんをした。


     じゃんけんポン!!あいこでしょ!!私が勝った!!



 すごくうれしかった。前からこのプラモデルガムの存在を知っていてほしいと思っていたからだ。

「じゃあ、ぼくが持って帰るね。」

私がこのプ・ラ・モ・デ・ル書いた紙5枚をもらおうとすると、一人が口を挟んだ。

「ちょっとまてよ・・・」

「おまえにプラモデルを組み立てられるか心配だよ・・・」

「そうだな・・・せっかくのプラモデルが組み立てられないんじゃ仕方がない。」

私は反論した「そんなことないってちゃんとくみたてられるって。」

「そうだお兄ちゃんのいるSくんにお願いしようよ、お兄ちゃんがいるから心配ない。」

「・・・じゃんけんで勝ったのだから・・」という私の主張は退けられた。私が不満そうな顔をしていると「5人でとったのだからみんなで遊ぶものだろ。」

そう誰かが言った。5人で遊ぶ・・・そういわれると逆らえない。


 結局5枚のプ・ラ・モ・デ・ルはSくんがもらい、ガムのメーカーに送ると数日後にプラモデルは届いたそうだ。しかしそれから5人で遊ぶという提案はいつの間にか忘れられてしまった。このプラモデルの話はもう2度と話題にすらでなかった。それよりか5人が同時に一緒に遊ぶ機会すらない。結局たまたまその時だけ集まっただけの5人なのだ。


しかし私はそのプラモデルをあきらめることができなかった。どうしても手に入れたい。そう思ったとき小学校2年生の計算で、5枚そろえるのはそんなに大変なことではないと感じた。今回のように5個で当たることは難しいことだけど、10個も買えば5枚そろうのではないか・・・1個10円のガムだ。親にねたっていつも買ってもらえる金額、そんなむずかしいことはない。


 それからの私は何かと言えば、ガムを買ってとプラモデルガムをねだった。こういうときに妹の存在はありがたかった。私は妹の分も買ってあげると親切をよそうおい、妹に頼んでガムの包みをもらった。妹はプラモデルなど何の興味も示さないから何の躊躇もなく紙包みをくれる。


 5個買えば揃う可能性もあるのだが、それは難しいことはこどもでも分かる。しかし10個買ってもプ・ラ・モ・デ・ルの5文字はそろわなかった。おかしいな??あと1枚、あと1枚でいいのだ。プ・ラ・モ・デの4文字は揃っている。


そうか・・・そういうことか・・・これは運が悪いのではなくてお菓子の会社がたくさんガムを買わせるための策略であることに気がついた。考えてみたら1個10円のガムを10個買ったら100円、100円で500円位するプラモデルが簡単に当たるはずはないのだ。


 からくりは言うまでもない・・・。プ・ラ・モ・デ・ルのうちのプ・ラ・モ・デの4つは均等に入っているから簡単に揃うのだ100円も出せば2枚ずつ簡単に揃ってしまう。しかし最後の「ル」これがなかなかでないようになっている。そのために200円かけても500円かけてもそろわない。


さて・・・もう一度最初のくだりに戻ってみる。

 5人が一つずつ買ったガム、最初に誰かがガムの包みを開けた、「おれプだ」そして次に「おれはモだ」というふうに一人ずつあけていった。私のガムの文字は「ル」だった。私の名前の一時だったからよく覚えている。「プ・ラ・モ・ル」あとデがでれば全部そろう。最後に残ったTくんが「デ」でろ!と大きな声で言うと本当にデが出た。


5枚揃ったのは5人の力だと感動したが実はそうではなかった。簡単に言えば「ル」の文字を引き当てた私があたりを引き当て、あとの4人は別にいくらでも手に入るはずれ券を引き当てたようなものだった。だから私は「ル」だけを持ち帰り他の4枚を自分で揃えれば10個も買えば確実に5枚揃えることができたのだった。


小学校2年生の私はそのことに気づいたとき、くやしくってしかたがなかった「ル」というラッキーカードを引き、ジャンケンにも勝ってこれだけ強運だったのに、しかもこのプラモデルに対しての執着心は誰よりもあったのに、それをさわることさえできなかったのだ。


 それから1年位してからだろうか・・・たまたまS君の家に遊びに行ったとき壊れた、あの我々のいや私の戦利品であるプラモデルがおもちゃ箱に入っていた。タイヤが取れかかったスポーツカーはどうしてもほしかったあのかっこよさのかけらはなにもなかった。スポーツカーのプラモデル・・・何でこんなものが欲しかったのだろう。おもちゃ屋さんにもっとかっこいいものが売っているのに・・・


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