↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/280

第七話 チキンライス生春巻きだっぺよ!

おっさん家族は、気がついていない。


この天まで届く塔【神の爪楊枝】は


天界に棲む神々の…食事のカス。


歯間から溢《こぼ》れたような、


この世の極上の料理がこびりついた…


極旨《ごくうま》グルメタワーであることを。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


酒と肉で満足したおっさんは、

もう歩く気力など、どこにもない。


——が、寝床《プレハブ》を展開できるスペースも見当たらず、

仕方なく、食虫植物の部屋を高圧洗浄機で丸ごと洗い流し、寝場所を確保する。


トゥエラは、腹を出して大往生。

テティスは、光悦の表情のまま、ぼんやりと遠くを見つめている。


おっさんは焼酎を飲み干し、

次はウイスキーにカラーチェンジ。

まったりと、深くなる夜に身を預けた——。


まだ夕方だったが——


風呂《ユニットバス》も、仮設トイレ《水洗洋式便器》も問題なく使えた。


高所墜落災害用のエアーマットを膨らませば、もうおやすみモードである。


テレビも、ネットもない異世界。


だが、娘たちの寝顔を見ながら酒を呑んでいれば、

——時間など、気にならない。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


翌朝。

熟成肉をワインだれで軽く煮込んだ、牛丼で朝食を済ませる。


まだほんのり眠そうな娘たちを引き連れ、

おっさんは、再び階段に脚をかけた。


今日もぐるぐると、

階段を登る。


昨夜、風呂場で気がついたのだが、


樹海での冬眠中に蓄えた…


10キロの米くらいの腹は


出金されていた。


うっっっっすらと…だが

割れている様にもみえる腹筋。


そんな些細なことに希望を見出したおっさん一行は、

ようやく…


【100f】


の扉の前に辿り着く。


「さて…晩飯はなんだっぺねぇ」


ドアの前に立つと、前回との違いに気がつく。

手前に開けるドアであった。


なにか槍でも飛んでくると危ない、

と思いノブにロープを結び、後ろに下がって引き開ける。


チャプ…チャプ…


入り口は水で満たされている。

謎のパワー故か、溢れてはこない。

まぁまぁ大きい内部に、目を凝らすと…


「魚かよ」


ちょっとしたクルーザーほどの、

全身が銀色に光る巨大な魚影。

それが水中を、機敏に、うねるように泳いでいた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


しならく観察すると下っ腹が、

ボゴォッ…と

膨らんでいる。

どう見ても鮭。


紅く染まった腹と、

シャクレ出たあご。


「うーん」


まいどお馴染みの水中ポンプか…

もしくは電撃か?


と漁の仕方に頭を捻っていると。


「おとう………様」


後ろから控えめに声をかけてくる、


テティスがいた。


「どしたん?」


と聞くと、


「私にやらせてください」


と言う。


それは構わないが、

あの腹を見ろ。

あそこは旨いからズタズタにするのはちょっと…


と咎めると、


「満腹の時に編み出しました。

【空間魔法】を使います。」


という。


おっさんの頭に????が浮かぶ。


テティスは右手を、水の膜に触れるか触れないかの距離に。


力を込め始め…


左手で、紅くなりつつある鼻を隠す。


「漏…れ…」


挿絵(By みてみん)


プルプルと震えながら、

魔力を込めているようだ。


「対価が…必要なようです…」


テティスが言う。


対価?

なんだそりゃとおっさんは悩む。

魔法を使う対価…

魔力…

力…

力=金?


チーンと閃き、


おっさんはフレコンに一杯の黄金を取り出す。

三毛のとこで貰ったやつだ。


するとテティスは、

「充分です…」と、右手を振るわせ…


「はぁぁぁぁぁ!」


眩しく発光した。 と思うと、


ずぅぅぅん…


俺の目の前に…


テラテラと紅く蠢く、塊が現れた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


目の眩む光が収まると…


鮭は金ピカになっていた。


あれだ…


土産物屋で売っている、

木彫りの熊に食われてるヤツだ。


しばらく見ていると、部屋の水が抜けて行き…


金の鮭はどこかへ消えてしまった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


おっさんは目の前に落ちた筋子にそっと手を伸ばし…薄皮の中のイクラ…


ではない。


よく見ると、その紅い粒粒は、

熱々の、ふっくらと炊かれたチキンライスであった。


「そんなことあるんか?」


手掴みで皮ごと毟って一口…


「生春巻き…?」


大皿にくるくると巻きつけた筋子を並べ、

食べづらいので串を刺す。


「おーい食ってみろ、旨いぞ!チキンライス生春巻きだっぺよ!」


漏れずにホッとしたテティスと無邪気なトゥエラが寄ってきて、


「おいっしいぃぃぃぃぃぃぃ!」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。