表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/280

第十一話 だから道が太かったわけか

娘達に盛り付けてやり、

…気がつくと囲まれていた。

一様にボロ着を羽織り痩せこけた年寄り。

若そうな人も居るには居るが、皆小汚く区別もつかない。


だが、全員の目が…鍋を睨み殺している。

雰囲気としてあえて言うなら、

街中に突然現れたゲリラライブ(郷ひろみ)に集まる群衆だ。


折りたたみの机と椅子をジャンジャン召喚し並べ、

ラーメンを盛り付け配ってやる。


あまりの濃厚さに鼻血をたらしながら貪り啜る人々。


挿絵(By みてみん)


【ラーメンフェス in 異世界】


想定外に集まった群衆に戸惑いながらも、

おっさんはスープを拵え、麺を茹で続けた。


油煙にまみれ、汗と加齢臭を背負い込み、

気がつけば何百食盛ったかもわからない。


――そして。


ふと顔を上げると、辺りは屍の山だった。


生きてはいる。

ただ、誰も彼も──

満腹で倒れ伏し、動けなくなっているだけだった。


おっさんも、疲れ果てた。


システムキッチンを片付け、

工場扇を止め、

ボロボロの身体を引きずるようにシャワーへ向かう。


異臭まみれの全身をゴシゴシ洗い、

ようやく人間らしい匂いに戻ったところで──


布団にダイブ。


軽めにしか食ってないのに、

胃が……胃がもたれてやがる。


ポーチから胃薬を取り出し、

冷えた焼酎《ミニ五郎》で無理やり流し込む。


「うぅ……胃に……効け……」


ぼそっと呟き、

おっさんは、そのまま目を閉じた。


翌朝。


どっちに移動するか思案していると──

村長を名乗る老人が、龍車を訪ねてきた。


「昨夜は、村の者たちが世話になりましたじゃ……」


ぺこりと頭を下げる村長。

よく見ると──アブラが効いたのか、肌がテカテカしている。


「いえいえ、ついでだったんで。気にしないでください」


俺は、乾いた笑いで応じた。


……いや。

夕食の支度の“ついで”で、

ラーメンフェスを開くやつがこの世にいるだろうか──?


心の中で、そっと自分にツッコんだ。


お茶を出し、椅子をすすめると──

村長はなにやら語り始めた。


昔はこの村も、そこそこ栄えていたらしい。


山には立派な鉱山があり、

そこから魔石が算出されていた──とか。


だが、モンスターが巣食うようになってしまい、

鉱山には近づけなくなった──とか。


要点をまとめれば、そんな話だった。


……まぁ、とにかく、

やたら長い話だった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


「その鉱山ってやつ、見に行ってもいいか?」


そう聞くと、

村長は「ああ、好きにすればええ」とだけ言い、

腰を曲げたまま帰っていった。


俺は、ぼそりと呟いた。


「……だから道が太かったわけか」


村から山へ向かう道は、

かつては整備されていたのだろう。


龍車が、余裕ですれ違えるほどの幅があり──

真っすぐに、山脈へと伸びていた。


魔石(調味料)──と聞いて、興味が湧いた。


化け物の体についてる魔石は、どれも味が良かった。

たまに、使い道のわからないヤツもあったが──

大体は、スーパーで普通に買ってた調味料に近かった。


じゃあ、鉱山の魔石は?

岩肌が、そのまま魔石だったりしたら──


「……食えるんかねぇ……」


ぽつりと呟きながら、

俺は、未知の食材への期待で胸を膨らませた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ