第九話 港町まで歩いて行け
その夜は大騒ぎだった。
バーベキューコンロを何台も構え、
焼肉も寿司も振る舞った。
よく話してみれば悪い奴らでもなかった。
何度か行商の馬車を襲ってしまい、金品を盗んだが、人を殺したことはないらしい。
娘達も混じり、酒も好きなだけ飲ませ、大きめのブルーシートを敷いて、
みんなで雑魚寝した。
あちこちでいびきが響き、イグアナもトカゲ枕にされながら寝ていた。
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明けて翌日。
まず蛮族たちを──風呂に入らせた。
ユニットバスを四台、召喚し、無理やり押し込む。
ぎゃあぎゃあと騒ぐ声をよそに、
湯気とともに、どんどんキレイになっていく荒くれども。
身綺麗になった蛮族たち──20人くらい。
ずらりと並んだ彼らを前に、おっさんは腕を組んだ。
「いいか、こっからは──お前らの人生を、“ちゃんと”生きてもらう。」
親指くらいの太さの鉄筋を出し、1メートルくらいずつに切る。
人数がいるので、せっせと作る。
切った鉄筋の端部に、家で薪にしていた「何日でも燃える木端」を取り付けた。
まずは、火を着けずに素振り練習からだ。
作業服も支給した。
あいつらが着ていたのは、リアルすぎるライオンキングだったので……
ショーでは、ちょっとマズい。
「まずは基本の回し方だ。振り回すな。撫でるように扱え。炎はな、暴力じゃない、演出だ。」
おっさんの熱血指導が始まった──。
幾日もかかったが、
だいたい仕上がった。
上手い奴らを10人、前列に配置。
後ろには10人の黒子。
班長がなかなか凄くて──
直立した肩に、男を二人乗せたり。
まぁ、組体操みたいなもんだ。
その状態で、火のついた鉄筋をぐるんぐるん回す。
──大迫力である。
「そろそろいいな」
俺は班長を呼びつけ、こう告げた。
「港町まで歩いて行け。」
トラブルになると困るので、
陸軍大佐宛に手紙を書き、
彼らにはギルドカードを預けた。




