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第六話 姫様とイチャつくような話

港町に到着した。


すごい人だ。


そこらじゅうに屋台が乱立し、海鮮の焼けたいい匂いが漂ってくる。

もっと寂れていたはずだった街並みは、酒場も宿屋も綺麗で大きくなっていて、そこに旅行者?らしき人々がひしめいていた。


「観光地かよ」


護衛(娘達)を引き連れ冒険者ギルドへ。

笑顔の可愛い受付嬢も元気そうに事務仕事をしていた。

依頼掲示板の上の目立つ所に、モヤモヤと虹色の煙が発生する俺のギルドカードが飾られていた。

いらんから預けといたんだったっけ?


ややげっそりした空軍大佐ギルドマスターに歓迎され、

樹海の冬の話をしてやったが、雪など見たこともないらしく信じてもらえなかった。


ラッキーアイランドは大好評だそうで、日々入りきれない程の観光客が押し寄せ、管理も運営も大変で、嬉しい悲鳴をあげているとかなんとか…


久しぶりに会いに行った海竜は、嬉しそうに咆哮をあげ、首がまとわりついてきた。

高圧洗浄機で垢を落としてやったり、

酒場に行って呑んだくれたり、

種類も増えて進化した海鮮丼を食ったり…


まぁぼちぼち過ごした。


この街の年寄りに話を聞いたが、ドワーフなんて種族は聞いたこともないそうだ。


だが、遥か遠いが王様の居る立派な都があるそうで、そうゆうとこまで行けば古代の歴史などにも触れれる可能性はある。

らしい。


「王様のいる都…ねぇ」


俺はぼんやり呟く。


『王都』と呼ぶらしい。


ファンタジーだな。俺もさんざん読んだぞ。

王都で大暴れして、なんか知らんが勇者認定されて、

気がつきゃ姫様とイチャつくような話。


──だが、目の前には。


口にイクラをひっつけたまま、ぽけーっとしてる娘たちが二人。


「……無理だな。」


おっさんはそっとグラスを持ち上げ、ちびちびと飲む。

世界を救うような器じゃない。

俺は、たぶん、ずっとこんなふうに。


イクラべちょの娘たちを連れて、

ぼちぼち、のんびり、生きていくんだろう。


──それでも、

「王都」とか「古代の歴史」とか、そんなロマンの香りは、


ちょっとだけ、心をくすぐった。


「行くだけ、行ってみるか。」


ため息混じりに、呟く。


それが、また──

新しい旅のはじまりだった。




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