第十六話 あとは、俺が手を動かすだけだ。
ほっぺを床に落とした満腹少女達に、
なんか臭いよと、おっぺされたので仕方なく風呂へ。
数日ぶりにさっぱりしたおっさん。
ソファーに帰り、レジンテーブル越しに暖炉設置予定の壁を眺める。
肉寿司は一つも余ってはいなかった。
チーたらをもきゅもきゅしながら、ハイボールを嗜む。
数日は仕事なんぞしないと心に誓う。
前世でも、一棟いくらで仕事を請け負う、
手間請け大工だったのだ。
一つの仕事が終われば、しばらくは自堕落に過ごす。
殺し屋のようなおっさんだった。
もう、頭の中ではだいたい暖炉は組み上がっている。
あのデカい石——まるで牛の解体図のように、部位ごとに綺麗に割れたやつだ。
積む前には、当然やることがある。
バリを落としたり、当たり面を軽くならしたり。
角をちょっと面取りして、据えやすくする。
でも。
積めばいいだけなのだ。
“段取り八分”ってやつだな。
それにしても、あの石たち…
見事に組めそうな形で割れてるのが、ちょっと怖いくらいだ。
こんな感じだ。
今回は、図面も要らない。
観ただけで、置くべき場所がわかったのだ。
石たちが、まるでそこに置かれるのを待っていたみたいに。
──あとは、俺が手を動かすだけだ。
だが……おっさんは動かない。
色のあるハイボールから、
透明な焼酎にギアを変え、
どこまでも……
どこまでも深く……
酔ってゆく。
「ぐぅ」
静かな樹海の夜に、寝息だけが溶けていった。




