第五話 おっさんは食わないけど、たぶんうまいよ
パタパタ滴る雨音で目が覚めた。
「今日も一日とs(ry)」
思った通りの雨の朝だった。
現場事務所に宿泊し正解だった。
昨日の仕事終わりに空を見上げ、「こりゃー明日は無理かな」という職人の勘的天気予報
(的中率5%)が的中した。
「外じゃ火…起こせんし…」
娘達が喜びそうな朝飯でも作るか。
ダルダルパジャマよりはマシだろうと、綺麗な作業服に着替え、(おっさん私服なんてジャージくらいしか持ってない)
ホットプレートを用意しネタを捏ねる。
巨大蝙蝠の粉末魔石と怨念のゴーストの破砕魔石
を塩で清め、
砂糖を供え…
攪拌機で輪廻転生する。
鶏卵に来世を祈り、
牛乳で真っ白な明日へ…
霊媒師のようなテンションで焼き上げたホットケーキに、
希望の蜂蜜を…ドバドバ。
「おっさんは食わないけど、たぶんうまいよ」
娘達が喜ぶので、バターも乗せてやった。
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「今日は少し寒いな?お前達大丈夫か。」
と尋ねるが、
「なにがー?」 「んdきぃs?」
寒いとかわからん存在のようだった。
「じゃなんで腹減るんだよ…」
こんな日はおとなしく、内装の仕上げや、かっちょいい階段でも設計するか…
などと思っていたが、
思い至る。
「あー…屋根の仕上げ材…」
樹海の材木はアホみたいに頑丈なので、十分保つのだろうが、
「やっぱ3匹の子豚の家じゃないんだし、瓦くらい葺きたいよなぁ。」
妄想は膨らむ
「…あーそうそう、ああゆう粘土。」
俺は、記憶を辿る…(昨日なに食ったっけ…)
「あれだよな」
屋根瓦に最適な材料が思い浮かぶ。
むか〜しむかし…
ではなく、転生直後のあの樹海。
必死で水場を探していた時に歩いた沼地。
あの時はそんな余裕もなく見過ごしたが…かなり良質な粘土であった。
あめあめふれふれ…である。
はしゃぐ娘二人をお供に、俺は家を出た。
…出たところで地上ではないので、(GL+500M)
空気圧昇降機である。
〈ぷしゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?〉
夜間警備員用の、LEDがギラギラ光るレインコートを着せた娘達は、まるでミッキーとでも結婚するかのようなはしゃぎっぷりで
赤く点滅する棒を振り回しながら…
土砂降りの樹海を歩く。
降りたはいいが、ここは樹海だ。
辺りは霧が立ち込め…右も左もわからない。
が…
わかることもある。
「あっちだっぺ。」
うっかりでた方言言葉
転生直後と同じように、
勘と、傾斜と植生を見極め…
割と10分くらいで着いた。




