第十四話 ラッキーアイランドが開園した
おっさんは泣いていた。
あまりにも可哀想すぎてしゃくりと涙が止まらない。
トゥエラ翻訳機が本気を出した結果色々なことがわかった。
『私の本当の名は、海守の巫女:テティスといいます。
ある時…先代が消滅したのち、
自動的にあの神殿に召喚されました。
物心ついた時から数百年…
それも漠然とですが、
ずっとあの場に居ました。
そこにいる事だけが巫女の役割のようで、
一歩も神殿から出ることはできませんでした。
深く暗い海底で、来る日も来る日も…
…祈りも捧げず、ただ座って、ただ時を過ごしていました。
けれど、いつからか思考は鈍く、言葉も忘れ、心は灰のように乾いていきました』
──テティスは、ぽつりぽつりと、異世界語で語り続けていた。
トゥエラはナイフを磨きながら、同時に俺へと訳してくれる。
その目も、どこか潤んでいた。
『唯一の話し相手は、あの巨大な海竜だけでした。
彼もまた、神殿とともにそこに在り続け、何も語らず、ただ佇んでいました』
俺は海を見ていた。
静かな水面の向こうに、今も桟橋に繋がれている巨大な白き竜の姿。
彼の背中には、俺たちが作ったテーマパークと焼却施設。
その中心には、ピカピカに生まれ変わった神殿が載っている。
まさか、そんな場所だったなんて──
「……なんで、もっと早く誰かが気づいてやれなかったんだよ……」
おっさん、大号泣である。
テティスは続ける。
『ある日、海竜様のお力で1日だけ人里に転移することが出来ました。
そして…貴方がいました。
ありがとうございました』
どわぁぁぁぁ……っ。
やっぱり泣く。これは泣くやつだ。
──
そいで、テティスはまた…神殿に戻るのか?
真っ赤な目を冷やしタオルで拭きながら俺は尋ねた。
『いえ?別に』
いやだって巫女の役割のくだり…
『海底だったので出れなかっただけですので、ラッキー君も今のスタイル気に入っているようですし。』
「じゃあ…一緒にくるか?」
俺はちょっと照れながら手を出す。
テティスはにっこりと微笑み握り返す。
第二章 かn(ry…… グチャり。
「いやまだだ」
俺は現場を途中で手放すことだけは、
死んでも嫌な人間だ(死んだが)
このなんの施設もないテーマパークを、
どうにかしたかった。
正直、この港町は寂れていた。
まず、
食うということに何の喜びも持たない住人達は、
わりと顔が死んでいた。
ここ以外の人里を俺は知らないので、
どうなのかわからないが、
人間が生きるってことはこんな顔ではないはずだ。
悲しい時も、悔しい時もあるだろうが、
最高の笑顔のやつもいるはずだった。
そう、昨夜の馬鹿騒ぎのように
笑うことに慣れてない人々はすごくヘンテコな顔だったが、
感情を爆発し喜んでいた。
俺はこれを維持したい。
そこで…
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やかましい喧騒が響く。
見渡す限りの人、人、人
丸太デッキをさらに拡張し、使い道の無くなった焼却炉を再運用し出来上がったスパリゾート。
燃やす燃料は、海竜の汗だ。
全員が水着で一緒に楽しめる、
温水プール&露天風呂施設
海竜の気分次第で、
超絶叫コースにも早変わりするウォータースライダー。
新鮮な魚介を、
釣ったそばから食べられるバーベキュー場
宿泊も出来る休憩施設
全てが備わった一大テーマパーク
ラッキーアイランドが開園した。
そして港町の人々にはスタッフとして運営してもらい、収益は全部街に使ってくれと言っておいた。
なんなら、オリハルコン冒険者の俺の財産も全部撒いてきた。
森では金いらんし…
そして俺たちは…港町を去った。
第二章 完
ここまで読んで頂きありがとうございます
第三章もがんばりまーす




