第七話 ドラコロコッテリラーメン
ここからは…大人の時間だ。
温めの酒と炙ったイカで…
「ぺっ」
噛みきれないイカを海にはきだし、辺りをぼんやり見ていると…
海面がざわついた。
大きなうねりと波飛沫を浴びながら観察していると…
ザッパアアァァァァァァ…
なにかが海面に浮かび上がってきた。
「いやでっけえなぁ…」
原発の緊急工事のときいつも世話になったクレーン車。
「750トンだっけ?」
地上からビルの屋上までゆうゆう届く圧倒的な迫力。
タイヤ一つが俺の身長の倍はあったっけ。
それのシルエットにもまさるような…
海竜が現れた。
「お前出たら、ほぼ当たるよな」
そうでもない時もあったか?などと
激アツ予告要員のドラゴンを眺める。
「あぁ〜それな」
こちらを睨みつける真っ白な首長ドラゴン。
月が隠れるほどのサイズだ。
そいつの海上に出た背中のほうを見ると…
たしかに建物があった。
「ギョオウアァァァァァァァァァァ!!!!」
咆哮を放つ。
いやうるせーから…子供達が寝ているところでしょうが!!
無駄なクラクションは控えろと、
残土運搬現場の運転手達にも徹底させていたというのに…
ともあれ、
わざわざ海上に現れて、
俺のそばまで来てうるさく喚いたわけだ。
何某かの困りごとはあるのだろう。
あの背中の壮大な建築物が邪魔なのか、ちがう理由なのか。
いまいち要領はつかめないが…
「現場調査しなきゃなにもはじまらんよな」
一反ほどあるこのデッキから、ドラゴンの背中に移動するためには…
「おーーーーーーーーーーーーいお前!!!
背中のボロいやつ直してやるからさーーー!
そのままの状態で海に潜水とかしないでいれるかーーーーーーーーー?」
言葉が通じるとも思えないが、
怒りと、諦めと、恨みと悲しみと…苦痛と…
そんなような感情をドラゴンのでかい貌から感じ取った俺は、
徹底的にドラゴンの体にレーザー距離計を当てまくった。
「誤差は一分以内。」
おそらく上空からみれば、ひょうたんの様な形をしている。
と思われる上半身。
そこにピッタリと収まるように…
ドラゴンの皮膚に傷はつけないように…
丸太とコンパネで組んだデッキをひかり合わせる。
そして空が白み…海の向こうに朝日が現れる頃…
イッシーをぐるっと囲む海上デッキ。
海の上のテーマパークが完成した。
――
寝不足と加齢は寿命を縮める。
俺はその場で倒れ込みイビキをあげて寝た。
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ツンツンとつつかれるこそばゆさに目を開けると…
少女二人が覗き込んでいた。
太陽はだいぶ高い。
首と腰をボキボキ鳴らしながら起き上がる。
「めしか?」
残り少ない森の恵や、
ドラコロコッテリラーメン、ドラタン山盛り丼を用意してやり、娘達に食わせ、
足場を組み、ドラゴンの顔の高さにエサ台を作り振る舞ってやる。
最初は俺を食おうとしていたようだが、
焼けた肉や果物などを供えてやるとガツガツ食っていた。




