第六話 リーーーーーチ!
立派な貿易港に辿り着き、顔見知りの漁師に小舟を貸してもらう。
3人で乗り込み、
船尾に充電式船外機を取り付ける。
モーターが唸り声を上げ、船は進みだす。
青い顔で船縁にしがみつき、アコム嬢が俯いている。
そんなに神殿が心配なのだろうか?
「ヴォエェェロロロロロロロロ…」
船は跳ねる。充電式モーターと侮るなかれ。
あちこちに聳える岩礁をモンキーターンで滑り躱し、沖へ沖へと爆走する。
「エレレレレレ…」
ずっとオキアミを撒き続ける自動サビキマシーンのようなダークエルフを横目に…
「神殿どこにあんだよ」
案内もいない大海原を水切り石のように跳ね続ける。
なぜか船首に立ち、一人タイタニック──ならぬ女神像?のようなポーズで、トゥエラがイカジャーキーをくっちゃくっちゃ噛んでいる。
どうせ噛みきれないので、濃いめの味付けをして生臭さを飛ばし、ずっと噛んでいられるツマミに調理した。
高性能魚群探知機もとりつけ、液晶を見ながら進むが、海底に特別な変化はなく、たまに魚の群れが通るくらいだ。
「リーーーーーチ!」ってかぁ?
太陽が中天を過ぎて疲労感と空腹を覚える。
「なぁ神殿って本当にあるのか?」
「エレ」
頷くダークエルフ。
「魚探の広角モードで相当な範囲の海底を調べたが、建物っぽいのはないぞ?」
「えれ…」
一旦休憩にするか。
俺は樹海で伐採したが使い道のなかった丸太を、残材保管用のフレコンバックからニョキニョキと出し、海上に放る。
数百本出すと、まぁまぁの広さになったので、丸太どうしを仮にかすがいで止め、いつものように根太を打ちつける。
「海の上って水平だからレーザーもなく仕事できていいな」
コンパネまで敷き終わると田んぼ一枚分?くらいの海上デッキが完成した。
小屋まで建てる時間でもないので、現場見学会用の日除けテントを設営し(紅白の垂れ幕のやつ)
メシと寝床の準備に入る。
「潮に流されちゃうと困るなぁ」
ふと見るといい感じのアンカーがあったので、トゥエラの背中から剥ぎ取り、ロープを結びつけ海に沈める。
生ではとても食えないここらの魚介類だが…
樹海の魔物達の魔石などを使い生臭さを消す努力のおかげか、
さほど旨くもないが吐くほどでもない、微妙な海鮮バーベキューと、あいなった。
トゥエラとゲロコムを呼び、メシにする。
悲しそうに海底を見つめるドワ子が可愛かった。




