第四十九話
「なんであーしだけガチャ運悪いワケ!?
トゥーとパーちんがURであーしSRばっかとか?
マジありえないんですケド!?あ゛〜だっる……」
何とも驚いた事に、目の前の変t……国王オルテメが、この国で一番の宝石職人、『最硬の磨男』なんだと言う。
そして、最も優れた海女『最深の海女』と称えられる美女が、筆頭王妃らしい。
おっさんは、宝石以外の部分は大体の造形を終えていて、あとはひたすら磨いて鏡のように仕上げれば……という段階であった。
そして宝石なのだが──
トゥエラとパステルが、やってくれたのだ。
初日の採掘漁──海底に降りて、ひたすらジャッキとピックアップツールで、アコヤ的な貝から宝珠を頂戴する作業なのだが……
どうにもアレは、ガチャ要素が強いらしく、
Nというランクから始まる、水晶、ガーネット、真珠などから、Rのルビー、サファイア…と続き、SRと呼ばれるエメラルドやアレキサンドライト。
それから、まず滅多にお目にかかれないというURに至っては、ブラックダイヤモンドだとかパライバトルマリンなど、聞いたこともない名前の石も登場するらしいのだが…
そんな中でも、実装されていないのでは?と噂される、
お伽話レベルの宝石を二人が発見してしまったのだ。
漆黒の暁星
常闇の月光
そういう名のついた超希少…所ではない、国王ですら見たこともないと慄く宝石を採掘漁で水揚げしてしまったのだ。
それを一目見たオルテメは──
「お、俺は…… SEEING 奇跡を!!THIS 輝きに……
BLADEだなんて……!
IT’Sーーーオ・コ・ガ・マ・シーーー!!!」
などと言って、そのまま使えと言われた。
しかし、指輪に取り付けるには大きすぎるべした…
と首を捻っていると、セーブルが──
「親方、我々は戦闘職です。もし出来るのであれば、
指輪よりも首に掛けれる物などの方が、破損のリスクも
軽減されるのでは…」
と、言ってきた。
そりゃ、そうだった。
考えれば分かることで、あんな残像が幾つも残るような速さで激しく動いて、槍を振る人間に、指輪はない話だった。
「んではよ、ちっとばっか改造してよ、
鎖さも拵えてよ、ネックレスにしちまうべーか」
そういう話になった。
おっさんはその場で、カラフルな酒の並んだテーブルで──
もっと言えば、国王や貴族、大富豪の商会主などが興味深そうに周りを囲む中……
指輪の形をした金属を、大胆に曲げ、捻り、加工してゆき、それぞれの石を嵌め込んだ。
「チェーンは……ブーカに頼むっぺね、
老眼鏡かけても霞むわ……歳なんだっぱい…」
そうやって出来上がった二つのネックレス。
セーブル用は漆黒の暁星とかいう、槍先のような黒石の中に、何処までも深い宇宙のような輝きが美しい、黒いネックレス。
シェリーのは、常闇の月光。蒼い銀河に月が浮かぶ幻想的な金鎖のネックレス。
カチリと石がハマり、布の上に飾ってみると──大歓声が起こった。
「「美しい! 神々しい! 奇跡の石! ブラボー!」」
指輪の交換みたいな、地球流に拘る必要もないので、そのまま二人に装着させてみる。
渋いイケメン騎士のセーブルと、どこか妖艶な美女シェリー。
二人が並ぶと本当に絵になる。
「これは……私の影魔法が、
一段階濃さを増したような…途轍もない効果です……」
セーブルは、手のひらから自分の槍の先をニュッと出したり閉まったりしている。
「あぁぁ…素晴らしいです!私の暗黒が……
冥闇へと昇華し……セーブルが…入ってきます」
何だかわからないが、魔力とやらを含んだ石が装飾品となる事で、特別な効果が生まれるらしく、二人とも喜んでいる。
「あとは──リリのと…自分の…それからみんなのけ」
ぶっちゃけ、おっさんは指輪なぞいらんのだが…
リリとお揃いの石を取り付けて、彼女が喜んでくれるならば、着けねばなるまい。
ふと見ると、微細な青い石を何個も目の前に置き、不貞腐れてカクテルを煽っているテティスがいた。
クリクリと指先で石を弄んでは、弾いている。
青くて綺麗なのだが、宝石と言うには少々歪で、割れたガラスの破片のような形をしている。
「あーしだってさー、水中結界維持しながら?
アイツらより数は少ないけどケッコー開けたし?
なのにこんなのばっかとか……」
珍しく、いつも勝気なテティスが少しだけ気落ちしているように見える。
おっさんはなんとなく10個ほど散らばった石を眺めて、
「コレはみんなおんなじ石なのけ?」
と聞くと……
「さー?色は似てるっぽいケド?」
老眼鏡の度を強めに取り替えて、じーっと観ていて…ピンときたおっさん。──ピンと来たなら……
ピンセットを両手に持って破片を並べてゆき、
かなり難しいパズルのようで、試行錯誤するが、
徐々に形となってゆき……最後の破片をピタリと落とすと──
破片が発光して、まるで元々そうだったかのように──一つの宝石と成った。
「ランクがあるなら、合成からの昇格もあっぺよね」
まるで、当たり前のような顔で、蒼く輝き、テティスに似合いそうな石を指で摘み上げ──
「ほれ、コレはおめさのだ」
と彼女の手のひらに乗せてやる。
「こ…これは…蒼環宝珠…!?AS IF ABYSS!!
蒼き海にDROWNINGだYOobzbzbz……」
オルテメがまた何か言っているが、華麗にスルーして、テティスの頭をポンポンと撫でてやる。
「こ、これが…あーしの?──ふーん……
まぁまぁ綺麗だし?別にいーケド!?」
元気とツン味も戻ってくれたので、安心できた。
横柄さのないテティスなど、山椒のないウナギだ。
オルテメと喋るのは疲れるので【作者が】、近くにいた大臣っぽい人に聞いてみる。
後日、八角堂の前でセーブル夫婦の披露宴をやりたいと伝えて、見物人や参拝者は来そうかを聞いてみると──
「セーブル殿とシェリーさんの功績は、我が国民全てが感謝しています。
子供達の遺骨は、国葬で送り出しますし、きっと天国に届きます。」
恐らく、宴の予定を公表すれば、大挙して押し寄せるはずです。との事──
まぁあの社はそんなに大勢は入れないが、窪地を埋めた土地は広い。
丁度いいから、スープカレーブリトーも無料配布しまくって、みんなに周知させればいいし、輸出業もさらに活気づくであろう。
「あとはアレだっぺ、手水舎」
「ち…ちよ?ですか?」
恥ずかしっ子ちゃんの女神様が言っていた、「器を用意しろ」
あれはきっと、おっさんが窪地を埋めてしまったから、泉が作れない。
だから代わりの水場を作れという意味なのではないか?
とおっさんは思ったのだ。




